ローザ・バルバ @ 現代美術センターCCA北九州 CCAギャラリー


ローザ・バルバ、展示風景『ローザ・バルバ』現代美術センターCCA北九州 CCAギャラリー、2019年

 

ローザ・バルバ
2019年6月29日(土)-9月6日(金)
現代美術センターCCA北九州 CCAギャラリー
http://cca-kitakyushu.org/
開廊時間:10:00-17:00(土曜は12:00-17:00)
休廊日:日、祝、休
オープニング・レセプション:6月29日(土)14:00-16:00

 

現代美術センターCCA北九州では、映画の装置やフィルムの物質性を活かしたインスタレーションをはじめ、映像作品やサイトスペシフィックな作品、パフォーマンスなど、さまざまな手法で彫刻の概念を拡張する表現を展開しているローザ・バルバの個展を開催する。なお、ベルリンを拠点に活動するバルバは今年、瀬戸内国際芸術祭2019に参加し、小豆島で作品を発表している。

ローザ・バルバ(1972年シチリア島アグリジェント生まれ)は、これまでに3度のヴェネツィア・ビエンナーレ(2015、2009、2007)や第32回サンパウロ・ビエンナーレ(2016)への参加をはじめ、数々の国際展、企画展、映像祭で作品を発表している。2000年前後より精力的な発表が続くが、近年もMoMA PS1のサンデー・セッションでのライブ(2016)、CAPCボルドー現代美術館(2016-17)、ウィーンのゼツェッション(2017)、ミラノのピレリ・ハンガービコッカ(2017)、国立ソフィア王妃芸術センター(2017)、サン・セバスチャンのタバカレラ(2018)、クンストハレ・ブレーメン(2018-19)など多数の個展を開催している。なお、昨年はスウェーデンのルンド大学にて博士号を取得している。

国内初個展となるCCAのプロジェクトは、「地球の中心から外へ」、「経験的な効果」、「Enigmatic Whisper(不思議なささやき)」の3点を出品し、バルバの代表的な映像作品を体験する貴重な機会となる。「地球の中心から外へ」(2007)は、消滅の危機にさらされた島を舞台にしたフィクションを軸に展開する映像作品。それぞれが生き残り、社会を存続させるためには、住民が一致団結して行動を起こさなければならない、という設定の下で物語は進んでいくが、島が年間1メートルずつ移動しているという状況は、どこか現実味を帯びた設定でもある。作中の研究者や専門家による報告が、超現実的な雰囲気を醸し出し、当初は美しいドキュメンタリーと見間違えてしまうような映像が、次第により抽象的になり、人々が苦悩する姿や弱さを露呈していく奇妙な映像へと変化していく。「地球の中心から外へ」と同じく、「経験的な効果」(2010)も現実と非現実があいまいに表現されるというバルバの映像作品の特徴を踏まえた作品のひとつ。同作の舞台となるのは、南イタリアのヴェスヴィオ山のある地域で、主人公は1944年のヴェスヴィオ山の最後の噴火を生き延び、直接その被害が及ぶエリア「赤の地域」の住人。2009年の夏に撮影された同作には、信じられない程の緊張と隣り合わせながらも、無力で穏やかでもある生活を送る社会が描かれている。前者2作が、自然災害や疎外感、生き残る意味について思い知ることになる、自然と人間の力の間にある複雑な関係について探求している一方で、「Enigmatic Whisper (不思議なささやき)」(2017)は、アレキサンダー・カルダー(1898-1976)を対象に据えた映像作品。アメリカ合衆国コネチカット州ロクスベリーのカルダーのスタジオを16mmフィルムで撮影したこの作品は、カルダーが使ったままの形で残されている道具や素材のイメージを通して見える、映像的な肖像画であり、自然な、外に向けられたコンテキストを映し出す。幾度も繰り返される突然の場面変更と、背景に流れるドラムとトランペットの音、そしてカルダーの動きのある作品によって、独自のリズムを備えた映像作品となっている。

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