京都国立近代美術館所蔵『世紀末ウィーンのグラフィック デザインそして生活の刷新に向けて』@ 目黒区美術館


『キャバレー〈フレーダーマウス〉上演本』 第1号(表紙・装丁:カール・オットー・チェシュカ)1907年 京都国立近代美術館所蔵

 

京都国立近代美術館所蔵
世紀末ウィーンのグラフィック デザインそして生活の刷新に向けて
2019年4月13日(土)-6月9日(日)
目黒区美術館
http://mmat.jp/
開館時間:10:00-18:00 入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、4/29、5/6は開館)、4/30、5/7
企画:池田祐子(国立西洋美術館主任研究員)

 

目黒区美術館では、京都国立近代美術館が所蔵する約300件にのぼる膨大なグラフィック作品のコレクションを中心とした展覧会『世紀末ウィーンのグラフィック デザインそして生活の刷新に向けて』を開催する。

「世紀末ウィーンのグラフィック」に関する充実したコレクションを有する京都国立近代美術館。同館は2006年に京都出身でヨーゼフ・ホフマンの事務所に在籍した建築家、上野伊三郎とウィーン工房での活動経験を持つリチ(フェリーツェ・リックス)夫妻の作品、資料の寄贈を受け、2009年に『上野伊三郎+リチ コレクション展 ウィーンから京都へ、建築から工芸へ』を開催(同企画は目黒区美術館に巡回)。2006年から2011年にかけて、神戸出身の版画家の川西英が竹久夢二を中心とした同時代の版画家やグラフィック・アーティストとの交流で育んだコレクションを購入。2015年には、本展企画者でもある池田祐子が2009年の展覧会後に新たに寄贈されたリチ関連の作品群を同館の「キュレトリアル・スタディズ」において紹介している。同2015年、これまでの「世紀末ウィーンのグラフィック」関連のコレクションとの有機的関連性を重視し、京都国立近代美術館は株式会社キャビン創業者の平明暘が蒐集した世紀末ウィーンのグラフィックに関する優れた作品群を一括購入。本企画『世紀末ウィーンのグラフィック デザインそして生活の刷新に向けて』は、同コレクションの全貌を紹介する展覧会として、目黒区美術館での開催に先立ち、2019年1月から2月にかけて京都国立近代美術館で開催された。

 


:グスタフ・クリムト「ウィーン分離派の蔵書票」1900年頃 京都国立近代美術館所蔵 :ベルトルト・レフラー(編)『ディ・フレッヒェ(平面)-装飾デザイン集(新シリーズ) 第Ⅱ巻』1910/11年 京都国立近代美術館所蔵


ルートヴィヒ・ハインリヒ・ユンクニッケル「三羽の青い鸚鵡」(連作「シェーンブルンの動物たち」より)1909年頃 京都国立近代美術館所蔵

 

本展は、「時代にはその芸術を、芸術にはその自由を」というモットーを掲げて結成されたウィーン分離派による展覧会のカタログと機関誌『ヴェル・サクルム(聖なる春)』の紹介にはじまる。同章には分離派の中心人物グスタフ・クリムト、その後継者のエゴン・シーレとオスカー・ココシュカのドローイングも出品。続く章では、当時、デザイナー輩出の場となったウィーン工芸学校や活動の場としてのウィーン工房に注目。カラー印刷技術や写真製版技術の発展を背景に、数多く刊行された図案集を紹介するとともに、同時期の建築家たちの新たな取り組みとして、オットー・ヴァーグナー、ヨーゼフ・ホフマン、アドルフ・ロースの作品を考察する。第3章では、視覚情報の複製や記録といった役割など、写真の発明によってその存在意義を脅かされることとなった版画が、当時西欧で流行した日本の多色木版画を積極的に参照しながら、芸術としての版画の可能性を模索した新たな試みを、木版画やリトグラフなどを通じて紹介する。最終章では、ポスターやカレンダー、蔵書票といった日常生活に関わるグラフィックの新たなデザイン、そしてグラフィックの刷新を担った人々がてがけた書籍の装丁や挿画の魅力を紹介。全4章を通じて、印刷技術の発展や雑誌メディアの隆盛を背景にめざましく発展し、新しい芸術の動向を人々に伝え、社会に浸透させる上でも重要な役割を担ったグラフィックの数々を紹介する。

 

関連イベント
講演会①「世紀末ウィーンとグラフィック-総合芸術に見る民主化の試み」
講師:池田祐子(国立西洋美術館主任研究員、本展企画者)
2019年4月20日(土)14:00-15:30
定員:70名(先着順)、無料(要本展観覧券※当日有効のもの)

講演会②「世紀末ウィーンと社会と文化」
講師:山之内克子(神戸市外国語大学教授[オーストリア、ウィーン文化史])
2019年5月12日(日)14:00-15:30
定員:70名(先着順)、無料(要本展観覧券※当日有効のもの)

大人のための美術カフェ〈特別編〉
「様式のない時代は可能か-世紀末ウィーンの建築から考える」
講師:本橋仁(京都国立近代美術館特定研究員)
2019年5月26日(日)14:00-15:30
定員:70名(先着順)、無料(要本展観覧券※当日有効のもの)

 


フランツ・フォン・ツューロウ「月刊帳 1915年3月版」1915年 京都国立近代美術館所蔵


フェルディナント・アンドリ「ライ麦おばさん」(アウグスト・コピッシュ『精選詩集』「ゲルラハ青少年叢書第13巻」のための挿絵)1903年頃 京都国立近代美術館所蔵

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