米田知子『アルベール・カミュとの対話』@ シュウゴアーツ


Tomoko Yoneda Entwined – Trees in the middle of a former trench at the Battle of the Marne (2017) Chromogenic print, copyright the artist, courtesy of ShugoArts

 

米田知子『アルベール・カミュとの対話』
2019年4月13日(土)-5月25日(土)
シュウゴアーツ
http://shugoarts.com/
開廊時間:11:00-19:00
休廊日:日、月、祝
オープニングパーティー:4月13日(土)18:00-

 

シュウゴアーツでは、写真における「記録」という性質を用いて、目に見えるものだけでなく、ある人物や場所が持つ記憶や歴史を浮かび上がらせる作品で知られる米田知子の個展『アルベール・カミュとの対話』を開催する。

米田知子(1965年兵庫県生まれ)は、対象への入念な調査を基に、歴史上の人物の記憶、あるいは歴史的な記憶が強く残る場所を訪れ写真にとどめることによってその真実に迫っていくという手法で、客観的なアプローチにもかかわらず、詩的な感性に満ちた写真作品を中心に発表している。89年にイリノイ大学シカゴ校芸術学部写真学科を卒業後に渡英し、91年にロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートの修士課程を修了。2007年に第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ企画展に参加し、2013年には東京都写真美術館で個展『暗なきところで逢えれば』を開催。近年もあいちトリエンナーレ2013や第10回光州ビエンナーレ(2014)、『ふぞろいなハーモニー』(広島市現代美術館、2015)などで作品を発表するなど、国内外の数多くの展覧会に参加。現在はロンドンを拠点に活動している。

本展では、『異邦人』や『ペスト』など20世紀を代表する小説を著したアルベール・カミュの軌跡を辿ったシリーズ「アルベール・カミュとの対話」(2017-18)を発表する。同シリーズは、2018年春にパリ日本文化会館の個展で発表し、第12回上海ビエンナーレ(2018-19)での展示を経て、東京での初披露となる。暴⼒に満ちた不条理な世界で我々はどうあるべきかという主題を著作のなかで繰り返し追求したカミュの著作や時代背景、生き方を再考することの重大さを感じた米田は、彼の⾜跡を辿るべくアルジェリアとフランスに向かい、第⼀次世界⼤戦下の1914年に本国フランスで戦死したカミュの⽗を起点に、アルジェやティパサ、マルセイユ、パリなどを訪れ、カミュが⾒た世界に⾃らの眼差しを重ね合わせた。米田は本展覧会のために同シリーズを再構成した作品群、フィンランドを代表する現代音楽家トミ・ライサネンのサウンドインスタレーションを組み込んだ映像作品を発表する。また、アマナサルトの協力を得て実現したプラチナプリント作品『友への手紙』(2017-18)も併せて発表する。会期初日には、パリ日本文化会館での個展の際に、同地での展示のキュレーションと調査協力に尽力した美術評論家の岡部あおみを招き、米田との対談を開催する。

 


Tomoko Yoneda Dialogue with… (2018) Single Channel video installation (HD, colour, sound) , 6 min.7sec, Music and sound installation by Tomi Räisänen, copyright the artist, courtesy of ShugoArts

 

 アルベール・カミュ(1913−1960)は、仏領アルジェリアに⽣まれ、20世紀の激動の時代の狭間に⽣きた。彼は著作を通じて、⼈間が遭遇する不条理の宿命を直視し、真の反抗や正義の意味、⼈間の共存とは何かを問い続けた。⼈間は平等の光と⾃然の恩恵を受け、⾃由を享受すべく存在し、暴⼒と権威を排除した⽣の尊厳を訴え、また苦悩する。
 私はカミュが息づき、創造と葛藤の地となった⼆つの故郷‒‒‒‒アルジェリアとフランスを訪ね、⼈々との対話を通じて、先の時代の出来事と今再び世界を包み込む世界の⿊い影を作品で応答し、普遍的な輝く愛を問い、⼈間‒‒‒‒その”存在”のことを考える糧にできればと思った。
 制作のきっかけにはカミュの『犠牲者でもなく執⾏⼈でもなく』というエッセイがある。これは戦後まもなく1946年にカミュが編集⻑を務める仏レジスタンス紙『コンバ』に数⽇間に渡り掲載された。原爆投下に象徴された科学進歩による⼈間の⽣の否定と(地球規模の)未来(へ)の破壊、⽬的達成にはいかなる⼿段をも正当化させるイデオロギーと暴⼒への批判‒‒‒‒「直接的にも間接的にも‒‒‒‒あなたは殺されたいですか、または、殺⼈者になりたいですか」もしいずれかの回答に”否”であるのならば、命を剥奪し沈黙を強いる世界に疑問を持ち”否”と⾔えるべきだとカミュは訴える。カミュが⽣きた時代、また時代を経て繰り返されてきた暴⼒と戦いは、われわれをより豊かな、平和の時代と導いてきたのであろうか。⼈類のこの果てしない課題は現在の混沌した世界状況の中、カミュの作品と⽣き⽅を軸に「⼈間の存在と愛」の根本的意味を考えることの重⼤さを感じ、作品を通じて、幅広く皆さんと対話が出来ればと思う。
米田知子

 

オープニングトーク
米田知子 × 岡部あゆみ(美術評論家、パリ日本文化会館展示部門アーティスティック・ディレクター)
2019年4月13日(土)16:00-
会場:シュウゴアーツ
要予約(event@shugoarts.com)※定員に達し次第応募締切

 

ART iT Interview
米田知子「感光される時間の層」(2012年2月)

 


Tomoko Yoneda A statue in a pond and sky seen through palm trees. Botanical Garden of Hamma, Algiers, Algeria (2017), Set of ten platinum and palladium prints with box, copyright the artist, courtesy of ShugoArts

 

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