米田知子個展「残響―打ち寄せる波」@ シュウゴアーツ


米田知子《70年目の8月6日・広島》2015年 copyright the artist, courtesy of ShugoArts

 

米田知子個展「残響―打ち寄せる波」
2022年6月4日(土)– 7月9日(土)
シュウゴアーツ
https://shugoarts.com/
開廊時間:12:00–18:00
休廊日:日、月、祝
展覧会URL:https://shugoarts.com/news/46229/

 

シュウゴアーツでは、土地やものに宿る歴史的真実に迫り、詩的な感性をたたえた情景の背後に幾層にも重なる記憶を呼び起こす写真作品を発表してきた米田知子の個展『残響―打ち寄せる波』を開催する。

米田知子(1965年兵庫県生まれ)は、世界各地を舞台に、日常的には静穏な時間が流れる、かつての歴史的事象の現場、戦争や災害の記憶を宿す場所、人、ものを対象に制作を続ける。綿密なリサーチをもとに歴史を検証し、構成的な写真表現に移し替えることでモティーフが内包するストーリーを再構築する米田の作品は、鑑賞者に新たな認知を促すものとして高い評価を受けている。主にロンドンを拠点に活動してきた米田は、『記憶と不確実さの彼方』(2003年、資生堂ギャラリー)、『震災から10年』(2005年、芦屋市立美術博物館)、『終わりは始まり』(2008年、原美術館)などで個展を開催。2014年には『暗なきところで逢えれば』(東京都写真美術館、2013/姫路市立美術館、2014)により、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ企画展(2007)、あいちトリエンナーレ2013、第10回光州ビエンナーレ(2014)、『ふぞろいなハーモニー』(広島市現代美術館、2015/關渡美術館、台北、2016)、第12回上海ビエンナーレ(2018-19)など、国内外の数多くの展覧会に参加してきた。昨年はマドリッドのマフレ財団で、初期のシリーズから最新のシリーズまで、17シリーズ100点以上の写真で構成した回顧展を開催した。

 


米田知子《窓 I、ソビエト国境警備所、ソルベ半島、サーレマー島、エストニア》2004年 copyright the artist, courtesy of ShugoArts

 

本展では、2000年代初頭から2020年までの間にフランス、ベルギー、ボスニア、サハリン、朝鮮半島の非武装地帯で撮影した作品を中心に発表する。21世紀においてもなお尽きることのない世界の紛争、その記憶の残る土地土地をレンズを通して観察しつづけた米田の視点からたどる構成となる。

 

日本は帝国主義の下、列強諸国と肩を並べ、無数の命を犠牲にし、暴力と戦争へと突き進んでいった時代があった。そして1945年、原子爆弾が投下された世界初の国となり、敗戦を迎えることとなる。
歴史において”戦争”は終焉することなく、繰り返され、暴力の余波は絶え間無く打ち寄せる。私の幼少時代は、イデオロギー、社会・経済体制の異なる東西陣営が対立する冷戦の真っ只中であった。そして、1989年ベルリンの壁崩壊からソ連解体の1991年には、旧衛星諸国の多くは独立を果たす一方、新しい境界線が引かれる次の紛争へと推し進められていく。

欧州では民主化を遂げた国の連帯が広がり、多くの犠牲者を出した20世紀の先の大戦に終止符を打つのよう、ある種幸福を享受したように感じられていたが、絶え間無く続く紛争、テロリズム、過激派の暴走、次に待ち受ける荒波へ、危機の瀬戸際に立たされていたのであった。ロシアのウクライナ軍事侵攻が激化する中、多大な犠牲者と暴虐を生み出し、ふたたび民主主義が脅かされ、試されている。この荒波に立ち向かい、全ての人々の魂に宿る光を、希望を奮い立たせ、消すことなく生きていくのだ。

2022年 米田知子

 


米田知子《丘陵ー「モスキート・クレスト」の頂をのぞむ、ブルネテの戦い、スペイン》2019年 copyright the artist, courtesy of ShugoArts

 

 


ART iT Interview Archive
米田知子「感光される時間の層」(2012年2月)

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