パラランドスケープ “風景”をめぐる想像力の現在 @ 三重県立美術館


稲垣美侑「Window」油彩、キャンバス 2018 年 作家蔵

 

パラランドスケープ “風景”をめぐる想像力の現在
2019年1月4日(金)-3月24日(日)
三重県立美術館
http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/art-museum/
開館時間:9:30-17:00 入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、1/14、2/11は開館)、1/15、2/12
企画:貴家映子(三重県立美術館学芸員)

 

三重県立美術館では、眼の前にある生の風景と切実かつ親密によりそうための想像力を探求すべく、東海圏あるいは三重県にゆかりのある5名のアーティストがつくりだした5つの“風景”を体験する企画展『パラランドスケープ “風景”をめぐる想像力の現在』を開催する。

普段何気なく見ている風景も、見る者の背景にある文化や生活が異なれば、そこに読み取る情報も印象も異なってくる。芸術作品もまた、風景に対する感受性や想像力を育み、文化的アイデンティティの形成をもたらす要因のひとつに挙げられるだろう。本展では、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、複合現実(MR)といったXRやドローン撮影の普及などによって、私たちを取り巻く風景の体験が急激に多様化するなかで、生の身体を通して風景と向き合う経験を改めて考え直していく。

 


伊藤千帆「音のない風景」ラテックス、枝、木材 2016 年 photo: Ko Yamada

 

出品作家の伊藤千帆(1975年愛知県生まれ)は、時間とともに色や透過性を変えるラテックスと、木の枝や木材を組み合わせたサイトスペシフィック・インスタレーションで知られる。1998年に名古屋造形芸術大学を卒業し、名古屋のガレリア・フィナルテでの個展を中心に、ドイツやデンマークなど国内外で作品を発表している。本展では、天井高8メートル超の美術館のエントランスホールを利用した大規模なインスタレーションに取り組む。現在、東京藝術大学大学院の博士後期課程に在籍中の稲垣美侑(1989年神奈川県生まれ)は、家屋や空き地のたたずまい、町並みの小さな変化に、見る主体と世界との境界面を見つめ、そのゆらぎや相互浸透の有り様を、絵画制作を通して思考し、個人や存在のリアリティを問い直そうとしている。本展では、自身のルーツにつながる三重県鳥羽市の離島を訪ね歩いた体験に着想を得た展示を試みる。

 


尾野訓大「造山輪廻 3」写真 2016 年 作家蔵

 

尾野訓大(1982年愛知県生まれ)は、闇のなかの風景やモチーフを長時間露光で撮影し、光や時間の体積が生み出す光景を作品化している。2007年に名古屋芸術大学大学院を修了。2000年代中頃より、愛知県を中心に発表を重ねている。本展では、作品展示のほか、津市出身のアーティスト、片山一葉とともに新しい風景の見方、見え方を探す「春分の日の風景さんぽ」も行なう。徳重道朗(1971年愛知県生まれ)は、日用品や既製品を用いた「見立て」によって、虚構の風景や地形をつくりだすインスタレーションや、絵画が持つ三次元空間の虚構性を検討した平面作品で知られる。1999年に名古屋芸術大学大学院を修了し、同年、アーティストによる自主運営スペース「dot」の設立、運営に関わった。本展では、三重県南部の南伊勢町から紀北町にかけての沿岸地域における独自の文化や伝承、インフラ整備の歴史などから見る同地の風景の変遷をテーマにとするリサーチに基づいたインスタレーションを展開する。

 


徳重道朗「対岸の風景」2018 年 作家蔵 ※本展インスタレーション展示予定作品


藤原康博「Shed」油彩・キャンバス 2017 年 作家蔵 photo:Kenryu Tanaka Courtesy of Mori Yu Gallery

 

藤原康博(1968年三重県生まれ)は、自然の生み出す彼岸と此岸、あるいは、城、納屋といった構造物の内と外といった「境界」の存在と、人間の想像力との関係を作品制作を通じて探っている。2002年にロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインを修了。本展では、藤原にとって何気ない風景を異化するスイッチとも言える納屋のモチーフを中心としたインスタレーションを展開。また、会期中にはワークショップ「記憶の山をつむぐ」を実施する。5名の出品作家はいずれも公立の美術館での初の大規模展示となる。

なお、会期中には上述したイベントやワークショップのほか、アーティスト・トークや本展を企画した貴家映子による大人のための美術講座「“風景”のうつりかわり 印象派からインスタグラムまで」などを予定している。

 

関連イベント
アーティスト・トーク
伊藤千帆、稲垣美侑、尾野訓大
2019年1月6日(日)14:00-

徳重道朗、藤原康博
2019年2月10日(日)14:00-
会場:三重県立美術館 展示室
要観覧券、申込不要、参加希望者は当日展示室入口に集合

ワークショップ「記憶の山をつむぐ」
講師:藤原康博(本展出品作家)
2019年1月26日(土)14:00-16:00
会場:三重県立美術館
対象:小学生以上
定員:20名(要申込、応募者多数の場合は抽選)
参加無料
申込方法は公式ウェブサイト内下記URLを参照。
http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/art-museum/000220999.htm

ギャラリー・トーク
貴家映子(三重県立美術館学芸員、本展企画)
2019年2月3日(日)、2月23日(土)、3月16日(土)
14:00-(約40分程度)
会場:三重県立美術館 展示室
要観覧券、申込不要、参加希望者は当日展示室入口に集合

春分の日の風景さんぽ
講師:片山一葉(津市出身作家)、尾野訓大(本展出品作家)
2019年3月21日(木、祝)13:00-15:00
場所:三重県立美術館とその周辺
対象:小学校4年生以上(小学生は保護者同伴)
定員:12名(要申込、応募者多数の場合は抽選)
参加無料
申込方法は公式ウェブサイト内下記URLを参照。
http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/art-museum/000220999.htm

大人のための美術講座「“風景”のうつりかわり 印象派からインスタグラムまで」
貴家映子(三重県立美術館学芸員)
2019年3月10日(日)14:00-15:30
場所:三重県立美術館 講堂
定員:150名
聴講無料、申込不要、参加希望者は当日講堂に集合

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