村上友晴 -ひかり、降りそそぐ @ 目黒区美術館


村上友晴「無題」1998・1999年 油彩/キャンバス 162.0 x 130.0cm

 

村上友晴 -ひかり、降りそそぐ
2018年10月13日(土)-12月6日(木)
目黒区美術館
http://mmat.jp/
開館時間:10:00-18:00 入館は閉館30分前まで
休館日:月

 

目黒区美術館では、ときに数年に及ぶ時間をかけて描き続ける静謐な黒の絵画をはじめ、独自の世界を貫くその姿勢から生まれた静謐な絵画で知られる村上友晴の個展を開催する。

村上友晴は1938年福島県田村郡三春町生まれ。幼少期を東京上野界隈で過ごした村上は「墨」の表現に興味を持ち、東京藝術大学日本画科に入学する。入学後は日本画顔料と油絵具を混ぜた絵具を素材に黒による絵画表現を追求する。とりわけ、東京藝術大学卒業後、64年に招待参加したグッゲンハイム国際賞展でアメリカ抽象表現主義に触れることで、日本画の技法を離れ、黒い油彩を用いた絵画世界の追求をはじめる。以来、黒い絵具を素材に、筆を使わずペインティングナイフで注意深く、密やかに絵具を置きながら画面を作り上げていく姿勢を現在まで一貫している。一方、90年代に入ると、白い紙のわずかな厚みの表面に鉛筆やニードルで痕跡を残していく表現も並行してはじめる。その表現は、黒い作品とは対照的であるものの、あたりの空気や光を吸収するほどの力を備えているところに共通点がうかがえる。

 


村上友晴「十字架の道」2001年 ドライポイント・ニードル/紙 22.0 x 15.3cm 14点組

 

60年代から作品の発表を続ける村上は、78年に雅陶堂ギャラリーで個展を開催。同画廊が84年に雅陶堂ギャラリー竹芝、89年に横田茂ギャラリーとなる間も現在にいたるまで個展を重ねている。そのほか、東京都美術館、東京国立近代美術館、千葉市美術館、茨城県立近代美術館などの企画展に出品。国外においても、第16回サンパウロ・ビエンナーレ(1981)、第52回カーネギー・インターナショナル(ピッツバーグ、1995)などに出品。近年は、2010年に自身初の本格的な回顧展『静けさのなかから』を開催(同展は前後期の二期制で、前期は桑山忠明の個展)。2011年には京都精華大学ギャラリーフロールで個展を開催。森村泰昌がアーティスティック・ディレクターを務めたヨコハマトリエンナーレ2014や、広島市現代美術館の被爆70周年 ヒロシマを見つめる三部作第1部の『ライフ=ワーク』にも出品している。

目黒区美術館で開かれた『色の博物誌・赤-神秘の謎解き』(1994)、『色の博物誌・白と黒-静かな光の余韻』(1998)にも出品しており、同館は村上の制作における要ともいえる作品を所蔵している。本展は、初期の版画集「PSALM I」(1979)、村上を代表する黒の絵画「無題」(1980・1981・1982)、「無題」(1985・1986・1987)、紙に赤と黒の石板による「東大寺修二会」(1990)、白い紙にドライポイントとニードルによる「十字架への道」(2001)などを中心に、新作を加えた構成となる。

 


村上友晴「無題」1980年 透明水彩/紙 62.5 x 50.7cm


村上友晴「PSALM I」1979年 ドライポイント/紙 30.5 x 24.5cm 8点組


村上友晴「無題」2018年 鉛筆・ニードル/紙 19.0 x 25.0cm

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