第4回福岡アートアワード

宮本華子《在る家の日常》2024年

 

2026年3月28日より、福岡市が同市内で目覚ましい活動を遂げ、今後も飛躍が期待できるアーティストを対象とした「福岡アートアワード」の本年度の受賞作家および受賞作品を紹介する「第4回福岡アートアワード受賞作品展」が、福岡市美術館 2階コレクション展示室にて開催される。2月20日に発表された本年度の受賞者は、市長賞(大賞)に宮本華子、優秀賞に谷澤紗和子川辺ナホ平野薫の4組。審査員は昨年度に続き、美術史家・美術評論家の水沢勉、国立国際美術館 学芸課長の植松由佳、シンガポール国立美術館 シニア・キュレーター/キュレトリアル&コレクション部門部長の堀川理沙の3名が務めた。

市長賞を受賞した宮本華子(1987年熊本県生まれ)は、個人的な経験を出発点に「家族」や「家」、「他者とのつながり」をテーマに制作している。また、故郷の熊本県荒尾でレジデンススペース「motomoto」をひらき、海外アーティストの招聘も行なっている。2010年に女子美術大学絵画学科洋画専攻を卒業し、2012年に女子美術大学大学院修士課程を修了。2016年にベルリンに移住し、7年にわたって日本とドイツを往復しつつ、九州やベルリンを中心に展覧会を重ね、2023年に帰国。主な展覧会に、「VOCA展2025 現代美術の展望 —新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、東京、2025)、個展「在る家」(大川市立清力美術館、福岡、2024)、「段々降りてゆく ——九州の地に根を張る7組の表現者」(熊本市現代美術館、2021)、個展「宮本華子 Was ich dir immer schon sagen wollte, aber nur dir nicht sagen kann. 私はあなただけに言えない。」(つなぎ美術館、熊本、2020)、「アーティスト・インデックス Scene 3」(熊本市現代美術館、2015)など。受賞作品の《在る家の日常》(2024)は、家をかたどるパネルの中に映像を組み込み、さまざまな日常や家族の様子を映し出すインスタレーションで、「VOCA展2025」においてもグランプリとなるVOCA賞を受賞している。

 

谷澤紗和子《お喋りの効能》2025年

 

優秀賞を受賞した谷澤紗和子(1982年大阪府生まれ)は、美術制度の外に置かれてきた素材や技法を用い、想像力を解放する装置としての作品制作を試みている。近年はジェンダーの視点から切り紙に携わった先達の作品や足跡を追い、マジョリティ中心の社会においてかき消されてきた声に着目した作品を発表している。2007年に京都市立芸術大学大学院修士課程を修了。主な展覧会に、「プラカードのために」(国立国際美術館、大阪、2025-2026)、個展「お喋りの効能」(EUREKA、福岡、2025)、個展「ちいさいこえ」(FINCH ARTS、京都、2023)、「越境ー収蔵作品とゲストアーティストがひらく視座」(京都精華大学ギャラリーTerra-S、2022)、「高松コンテンポラリーアート・アニュアルvol.5 見えてる景色/見えない景色」(高松市美術館、香川、2016)など。受賞作品の《お喋りの効能》(2025)は、谷澤が敬愛する美術家・高村智恵子(1886-1938)と「お喋り」することから構想され、その情景を切り紙絵で表現した。作品には、高村へのオマージュ作品に加え、中国の美術家で初めて「民間美術工芸の巨匠」として国連教育科学文化機関(ユネスコ)に登録されたクー・シューラン[庫淑蘭](1920-2007)や、70代から植物標本を題材にした紙の作品を数多く手がけたメアリー・ディレイニー(1700-1788)の作品から引用した図案が取り込まれている。

 

川辺ナホ《樂園を探して-Et-in-Arcadia-Ego》2024年

 

川辺ナホ(1976年福岡県生まれ)は、映像、インスタレーション、立体、ドローイングといったジャンルを横断して、時にはそれらを組み合わせて作品制作を行なっている。1999年に武蔵野美術大学映像学科を卒業後、2006年にハンブルク美術大学芸術学科ディプロマコース修了。近年の主な展覧会に、国際芸術祭「あいち2025」(愛知芸術文化センター)、「ルール炭田の日本人:越境者たち」(ケルン日本文化会館、ドイツ、2024)、「Fuzzy Dark Spot. Videoart from Hamburg」(ファルケンベルク・コレクション/ダイヒトールハーレン・ハンブルク、ドイツ、2019)、個展「Blooming Black」(OCT Boxes Art Museum、広州、中国、2019)、「想像しなおし」(福岡市美術館、2014)、「Archive und Geschichte(n)」(ハンブルク美術館、ドイツ、2011)など。受賞作品の《樂園を探して(-Et in Arcadia Ego)》(2024)は、「炭」という素材を歴史的、社会文化的にリサーチし、自身の体験と重ね合わせながら現在の社会構造を捉え直すことを試みたインスタレーション作品で、福岡の人々の生活や産業、都市インフラと密接に関わった石炭から未来の素材として期待されるカーボンまでを射程に収めている。

 

平野薫《空の衣服(untitled-war-kimono-)》2025年

 

平野薫(1975年長崎県生まれ)は、古着の衣服や傘などを糸の一本一本にまで解き、結び直して再構成する行為を通じて、目の前にある素材を「事実」とし、素材にまつわる物語や経緯を「想像」として区別しながら、その間を行き来することを試みている。2003年に広島市立大学大学院芸術学研究科博士後期課程を修了。主な展覧会に、「開館10周年記念 コレクション+ 手のひらから宇宙まで」(アーツ前橋、群馬、2023)、個展「どこかで?ゲンビ 平野薫「傘」」(ヱビデンギャラリー、広島、2022)、個展「記憶と歴史」(ポーラ美術館、神奈川、2018)、「交わるいと」(広島市現代美術館、2017)、「服の記憶」(アーツ前橋、群馬、2014)など。受賞作品の《空の衣服(untitled -war kimono-)》(2025)は、空を飛ぶ零戦や海に浮かぶ戦艦などが描かれていた戦争柄の男性用着物から、一本ずつ糸を引き抜き、結び直して再構成したインスタレーション作品。

福岡アートアワードは福岡市が2022年度より推進するFukuoka Art Next事業の一環として、同年度に福岡市美術館が設立。第1回は鎌田友介(市長賞)、チョン・ユギョン、石原海、第2回はソー・ソウエン(市長賞)、イ・ヒョンジョン、山本聖子、第3回は牛島智子(市長賞)、オーギカナエ、SECOND PLANET、興梠優護が受賞し、各作家の受賞作品が福岡市美術館に収蔵されている。

 

第4回福岡アートアワード受賞作品展
2026年3月28日(土)–6月21日(日)
福岡市美術館 2階コレクション展示室 近現代美術室B
https://www.fukuoka-art-museum.jp/

第4回福岡アートアワード受賞作家ギャラリートーク
2026年3月28日(土)14:00–15:00
会場:福岡市美術館 2階コレクション展示室 近現代美術室B
※要コレクション展観覧料、事前予約不要

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