レポート:「金子邸とはなんだったのかvol.2 伊藤尚吾」

▼「金子邸とはなんだったのかvol.2 伊藤尚吾」終了!

8月26日(金)に、YCAMと市民が協働するアートプロジェクト「meet the artist 2022」の一環として、「金子邸とはなんだったのかvol.2 伊藤尚吾」を開催し、終了しました。ご来場いただいたみなさま、どうもありがとうございました。

撮影:谷康弘

本イベントは「meet the artist 2022」の舞台となる山口市の旧金子邸の解体にあたって、在来工法や電気設備、水道、建築法規などさまざまな分野の専門家が調査に訪れますが、1930年代に建てられたごく一般的な住宅である旧金子邸。この住宅からどのような知識や経験を引き出すことができるのか、そうした専門家を迎えて、彼らの視点から見た旧金子邸の特徴についてレクチャーをおこなうものです。vol.2となる今回は、作庭や造園工事、手入れなど、和風庭園から欧風ガーデニングまで幅広い庭造りを行う伊藤造園の伊藤尚吾をゲストに迎え開催しました。

まず最初に伊藤が最近手がけた庭をスライドを使って紹介していきました。湯田温泉のある店舗内にあるカウンターから見える庭はオーナーから「山口にはないような庭にしてくれ」とのオーダーがあったと言います。また、一般家庭の庭も紹介されましたが、こちらはオーナーから「遊べる庭がいい」とオーダーがあったと言います。伊藤は、「お客さんが喜んで使ってくれてなんぼ」と語り、昔の庭は見る庭、今の庭は使う庭にというふうに、時代の流れと共にお客さんの意向も変わってきたと語りました。そういう意味では、戦後すぐに建てられたこの金子邸は見るために造られた庭です。旧金子邸の庭は表と裏にありますが、まず表の庭は小さいながらも植木や立派な石があり、池には橋もかかっています。この日、参加していたオーナーは子どもの頃はこの立派な石の上に立ってみたり、登ったりして遊んでいたそうです。そして、この家に居住していたオーナーのお父さんは良く縁側に座って、庭を眺めたりくつろいでいたそうです。造られた当時から現在まで木の数以外はそんなに変えていないとも話しました。

伊藤は石を見た瞬間に、これはどこから運ばれた石なのか直ぐに解るそうです。金子邸の庭の石について、山口市にある方便山あたりのものや、小鯖のものであり、庭木については、伊吹は九州、槙は関東から来たものであると語り、「見ただけで解るものなのか」と参加者一同は驚きます。伊藤は、この仕事は気象から植物、虫、土壌、周囲の景観など多岐に渡ってリサーチし、知識を持っておくことが大事だと語りました。

他にも伊藤が手がけている常栄寺雪舟庭や自身の家の庭、現代の庭づくり、会社のこと、修行時代の京都の話など多岐に渡りましたが、伊藤自身の庭師としてのセオリーだけでなく、人生観もうかがえるレクチャーとなりました。

撮影:谷康弘

「meet the artist 2022」では、このほかにも多くのイベントを開催しますので、YCAMのウェブサイトなどを随時、チェックしてみてください。また、本プロジェクトでは随時、プロジェクトメンバーを募集しています。こちらはYCAMのウェブサイトのお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。

Copyrighted Image