レポート:「前田せつ子トークイベント」

「前田せつ子トークイベント」終了!
7月9日、特集上映「山口県出身監督作品特集 vol.2」に関連し、「杜人(もりびと)〜環境再生医 矢野智徳の挑戦」と「100 歳に向かって走れ」の 2作品を同時上映した後、監督の前田せつ子さんによるトークイベントを開催しました。ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。
撮影:谷康弘
「杜人(もりびと)〜環境再生医 矢野智徳の挑戦」は、造園家・矢野智徳さんに3年間密着したドキュメンタリーです。植物の“名医”と呼ばれる矢野さんは、水の流れや風の動きを読み、自然環境を改善します。
前田さんは元々映画監督ではなく、国立市の市議会議員でした。矢野さんと出会ったきっかけは、市が、傷んだ桜の街路樹を伐採すると決めたことです。反対する住民に呼ばれて駆け付けた矢野さんは、桜を一本一本揺らしてじっと見つめ、「土に穴を空けて根元に空気を送り込む」「木の高さを切り詰めて風通しを良くする」など治療法を挙げ、「この木々はまだ生きている、大丈夫」と断言。矢野さんの手で多くの桜が回復しました。樹木医の多くが行政の意向に沿う中、植物に寄り添って命を守る医師が居たことに、前田さんは目の覚めるような思いだったそうです。
植物に合わせて常に予定を変える矢野さんを追う日々は大変でしたが、スタッフの「思いは技術に先行する」という言葉を励みに、現場に向かい続けました。撮影開始から半年たったある日、「これは前田さんに撮ってもらいたい」と矢野さんの方から声をかけられ、認められたと感じ嬉しかったそうです。
西日本豪雨が起きた直後に、被災地で水はけ作業をする時は、「被災した方を撮って不謹慎ではないか」と葛藤しながらカメラを回していました。自宅が浸水した被災者の一人は、人の輪の中で作業することで、表情が明るく変わっていきました。遊んでいた子どもたちも、自分にできることを見つけ始めます。土地の再生とともに人々が結び付いていく様子を目の当たりにし、「この“結(ゆい)”を映画にしたいと決意した」と前田さんは語りました。
この日は「杜人」のほかに、前田さんの初監督短篇「100 歳に向かって走れ」も同時上映されました。前田さんの父と家族を、娘の視点で温かく見守り、時に字幕で小気味好い一言を添えるドキュメンタリーに、会場からは笑いが漏れました。満席の会場へ前田さんは記念にカメラを向け、観客は笑顔で手を振りました。特集上映「山口県出身監督作品特集 vol.2」は、7月22日まで上映中です。ぜひお越しください。
撮影:谷康弘
YCAMシネマではひきつづき、さまざまな特集上映やトークイベントを行います。
詳細はYCAMのウェブサイトや、YCAMシネマの上映スケジュールをご覧ください。みなさまのご来場を心よりお待ちしております。

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