レポート:「中園町ミートアップvol.6:伊藤洋」

6月20日(月)に、YCAMと市民が協働するアートプロジェクト「meet the artist 2022」の一環として、ゲストと参加者がディスカッションをおこなうイベント「中園町ミートアップvol.6:伊藤洋」を開催し、終了しました。
「BAR印度洋」伊藤洋さん
撮影:谷康弘
今回のゲストは山口県防府市にあるバー兼ライブハウス「BAR印度洋」を経営する「印度さん」こと伊藤洋さんです。本イベントではBAR印度洋のこれまでを、同所でのライブ経験の豊富な世界的ドラマー・一楽儀光さんをサポーターに迎えて振り返りました。
もともと印度さんは別の場所で居酒屋を経営しながら、自身のバンド活動をしていました。そのライブ会場に借りていたスペースを前オーナーから譲り受けることになり、1996年に今の場所に「BAR印度洋」は誕生します。以来、以前から面識のあった一楽さんの紹介で新進気鋭のアーティストが世界中から集まるようになりました。印度さんは、音楽の型を壊すような彼らの演奏に衝撃を受け「次はどんな面白い人が来るのか」とワクワクしていたそうです。
一楽儀光さん
撮影:谷康弘
印度洋の存在は日本の音楽シーンに2つの大きな影響を与えています。1つは印度洋が山口にあることで、来日した海外アーティストや、全国ツアーをするバンドが、東京・大阪などの大都市のみに留まらず山口にまで来てくれ、最新の音楽ムーブメントが地方まで行き渡ることです。また、大都市に多い広々としたライブハウスと比べ、印度洋は客席とステージの距離感が近く、出演者と観に来たアーティストが交流を深めやすいのも特徴です。もう1つは、印度洋は演奏の許容範囲が広く、新しい音楽が育まれる土壌になっていることです。従来のライブハウスでは敬遠されかねない、実験的な曲や過激なパフォーマンスも、印度さんは楽しみます。「自分はあくまでバーテンダーであって、音楽の専門家ではないから、細かなことは言わない。心置きなく、鳴らしたい音を自由に出してみてほしい」とほほ笑みます。「作品を分かってくれる場所が1つの国に1ヶ所あるだけで、アーティストは大きくなれるもの」と一楽さんは語りました。印度洋で観たライブに影響を受けて音楽を志したミュージシャンも少なくありません。
印度洋でイベントを開いたことがある人は、他のライブハウスと比べて「音楽をする人への愛がある場所」だと熱弁します。あまり観客を呼べなかった時に伊藤さんから「楽しませてもらったから今日はそれで十分。こちらへの支払いはできるだけで良い」と声をかけられ、今後も印度洋でイベントを続けようと決意したそうです。良心的な印度洋の経営状況は甘くなく、伊藤さんが私生活をストイックにせざるを得ない時もあります。それでも「印度洋が好き。どうしてもここで生きていたいという”意地”が自分を支えている」と明かしました。コロナ禍では閉業も考えましたが、多くのファンからクラウドファンディングが集まり存続できました。音楽を愛する人同士が支え合う場所になっています。
撮影:谷康弘
「meet the artist 2022」では、6月25日(土)開催の「中園町ミートアップvol.7:平野浩靖」をはじめ、さまざまなイベントを準備中です。詳細は随時YCAMのウェブサイトでお知らせします。ぜひチェックしてみてください。プロジェクトメンバーも募集中です。お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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