「アーティストと制作チームによるトーク」を開催しました

4月3日(土)、ホー・ツーニェンの展覧会「ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声」の開幕に合わせ、ホーと制作チームによるトークイベントを開催しました。ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。

会場の様子
アーティストのホー・ツーニェン

参考ページ: 「ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声」関連イベント:アーティスト制作チームによるトーク

今回、世界初公開した新作のテーマである「京都学派」は、西田幾多郎を始めとした哲学者たちのグループで、第二次世界大戦直前の日本に大きな影響を与えました。本作では彼らの姿や、彼らが過ごした環境などを3D アニメーションや音声で再現することで、複雑に枝分かれしたそれぞれの思想を表現します。

スクリーンとVRという、異なる方法で同じシーンが展示されるため、客観的な視点と、登場人物に入り込んだ視点とで2通りの見方が味わえるのが本作の特徴のひとつです。VR体験の中で映像のシーンを切り替えるには、横になったり、立ち上がったりと、鑑賞者自らのアクションが必要です。

登壇者:吉崎和彦

トークイベントでは特に、作中に登場する学者たちによる座談会のシーンについて掘り下げられました。VRにおいて鑑賞者が体験するのは、座談会の速記者である大家益造の視点。書きとめるように手を動かすことでセンサーが反応し、学者たちの話が聞こえてきます。

「実際に身体を動かすと、見ているだけの時より作品世界に入り込める」。そう話す制作チームのひとりでYCAMインターラボの大脇は、このVRを通じて、西田幾多郎のいう「純粋経験」が実現する可能性を感じています。観る人/観られる作品とで立場を区別せず、作品そのものに飛び込み働きかける、新しい鑑賞スタイルが生まれているのも本作の特徴とも言えるでしょう。

登壇者:大脇理智

バーチャルな映像に、生身の人間の音声を合わせたのは、ホーの強いこだわりです。ホーにとって「声」とは、体から離れているのに存在感を持つ、幽霊のようなもの。仮想世界の枠組みを超えてやって来て、作品に生々しい立体感を与えます。音の方向や距離感は細かに調整されており、例えば座談会のシーンでは、手を止めると大家自身の経験を表す声が、頭の内側から響いてくる仕掛けが施されました。

モデレーター:アンドリュー・マークル

新型コロナウイルス感染症拡大防止に伴う入国制限のため、シンガポールを拠点とするホーは、遠隔での制作やイベントの参加となりました。入国制限が緩和され次第、YCAMに来館する予定です。その際は改めてトークイベントを開催いたしますので、ぜひご参加ください。展覧会は7月4日まで。皆さまのご来場を心よりお待ちしています。

登壇者:新井知行
登壇者:レオナルド・バルトロメウス
会場の様子

使用写真は全て、撮影:谷康弘

参考ページ:ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声

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