2021年コレクション展Ⅱ

ジャン・アルプ《陽気なトルソ》1965 年 昭和57 年度財団法人伊藤文化財団寄贈

開催概要

会期:2021年7月17日(土)-12月26日(日)
前期 :7月17日(土)- 9月26日(日) ※9月27日(月)-10月8日(金)は展示替えのため休室
後期: 10月9日(土)-12月26日(日)

開館時間 :午前10時から午後6時(特別展開催中の夜間開館については当館Webサイトをご確認ください)
※ 入場は閉館の30分前まで

休館日:毎週月曜日 ※8月30日(月)-9月6日(月)はメンテナンス休館

会場:兵庫県立美術館 常設展示室

観覧料:一般500円/大学生400円/高校生以下無料/70歳以上250円/障がいのある方(一般)100円/障がいのある方(大学生)100円

主催:兵庫県立美術館

協賛:公益財団法人伊藤文化財団、サンシティタワー神戸( 株式会社ハーフ・センチュリー・モア)

後援:小企画 兵庫県社会福祉協議会、神戸市社会福祉協議会

開催趣旨

兵庫県立美術館のコレクション展では、1年をⅠ期、Ⅱ期に分け、当館ならではの名品を順次紹介するとともに、特定のテーマでコレクションに新たな光をあてる「特集」、館外の作品も交えて構成する「小企画」を開催しています。
2021年第Ⅱ期の特集では、そもそも各作品がなぜこの美術館にあるのか、収集活動の裏側に注目します。今年設立40周年を迎える伊藤文化財団からの寄贈作品や、昨年、美術館に来たばかりの新収蔵品を中心にご紹介します。
会期の前半には、毎年恒例の手で触れて作品を鑑賞できる小企画「美術の中のかたち」展も開催します。

小企画「美術の中のかたち―手で見る造形 東影智裕展―触知の森」【常設展示室4(前期)】

31回目となる「美術の中のかたち-手で見る造形」展では、兵庫県在住の作家 東影智裕( ひがしかげ・ともひろ)氏の作品を展示します。1978年高砂市に生まれた東影氏は、美術学校在学中には特に版画を学びましたが、卒業後は、主に立体作品を精力的に制作してきました。動物の頭部のような作品は、皮膚や毛穴や体毛などが極めて精巧に表現されています。一方、その精緻な描写は、時に蝕まれた皮膚やその内部の肉体の表現を伴い、動物たちの漆黒の瞳の表現と相まって、鑑賞者に深い洞察をもたらします。
東影氏は、自身の作品制作は自らの身体的、触覚的な経験の積み重ねであると言います。本展では、東影氏のこだわりや経験の結実である作品に直接に触れていただくことで、作家の造形思考や造形行為にまで想像を巡らせていただければ幸いです。なお、本展は令和2年度に開催予定でしたが、コロナウィルス流行の影響により、約1年間延期して開催します。

東影智裕《視界 camel d-007》 2013 年 作家蔵

 

特集「なぜここにいるの-伊藤文化財団寄贈作品・新収蔵品を中心に」【常設展示室1~3】

展示室に並ぶ作品たちは、なぜ、今ここにいるのでしょう?
兵庫県立美術館のコレクション展Ⅱ「特集」では、コレクションの成り立ちや作品の来歴など、収集活動の裏側に注目しつつ、今年設立40周年を迎える伊藤文化財団からの寄贈作品や、昨年度、美術館にやってきたばかりの新収蔵品を中心に展示します。

1 ここにいる人、いない人。
みんなが見たいと思う良い作品たちのいる場所、それが美術館です。とはいえ、単に良い作品というだけなら、世の中には山ほどあります。この美術館にいる人といない人との分かれ目は、どこにあるのでしょう。まずは当館の収集方針をご紹介します。

① 巨匠を間近に
当館の前身・兵庫県立近代美術館の開館は1970(昭和45)年。西洋美術の「本物」に触れられる場は、まだまだ限られていました。
そこで当館がとったのは、一点豪華主義の逆。彫刻や版画はひとつの型や版から複数の「本物」が出来る分、お値段が安い。印象派の有名な油絵一枚を買う代わりに版画や彫刻をたくさん買い、美術の流れがある程度わかるコレクションを目指したのです。

② ひょうごの美術館だから。
日本にある県立の近代美術館ですから、日本の近代美術、なかでも県ゆかりの作家という視点は欠かせません。
洋画の黎明期の先駆者(神中糸子)から、惜しくも若くして戦死した前衛画家(浅原清隆)、戦後、デザインと絵画をまたいで活躍した異才(今村七郎、横尾忠則)まで…。他所ではなかなかお目にかかれない、ひょうごならではの作品たちが、ここには集まっています。

③ 時代を共に生きる
1986(昭和61)年度、「山村コレクション」が当館所蔵品に加わります。県下の企業家・山村德太郎(1926~1986)が、自分と同時代を生きる作家たちの作品を集めた前衛美術の一大コレクションです。
このコレクションの収蔵をきっかけに当館の収集方針には、私たちと時代を共に生きる作家たちによる「現代美術」という新たな柱が加わりました。

吉村益信《豚・pig lib;》1971( 昭和46) 年 山村コレクション 昭和61 年度購入

2 伊藤文化財団40 年の寄贈作品
作品がどのように美術館にやってくるのか、集め方に注目すると、「買う(購入)」「いただく(寄贈)」「預かる(寄託)」の3 つに分かれます。うち「いただく」の特別な例が、伊藤文化財団の寄贈作品です。館にふさわしい作品を持ち主から財団が購入し寄贈するという方法で、1981(昭和56)年の財団設立以来(2012/ 平成24 年に公益財団法人に移行)、40 年の間に951 点もの作品が当館にやってきました。
※伊藤文化財団の寄贈作品は、この章以外にも展示しています。

① 長きご縁があってこそ
芦屋にアトリエを構えた洋画の巨匠・小出楢重や、同じく芦屋を拠点に前衛美術グループ具体美術協会を率いた吉原治良など、当館コレクションに欠かせない重要な作家やグループのいくつかは、40 年にわたる息の長いご支援のもと、重点的な収集が実現しています。

② 歴史を語る名品
伊藤文化財団からは、日本の近代美術史を語る上で欠かせない数々の名品も寄贈を受けています。
天使のような翼を持つ和洋折衷の本多錦吉郎《羽衣天女》は、日本に洋画の技術が移入されて間もない明治期ならではの作品です。長らく所在不明でしたが、1990(平成2)年、当館の「日本美術の19 世紀」展で、ほぼ一世紀ぶりに公開されました。

本多錦吉郎《羽衣天女》1890(明治23)年 平成11 年度財団法人伊藤文化財団寄贈

3 作品たちの数奇な人生
美術館に入る前、作品たちは、どこでどのような人生を歩んでいたのでしょう。北村四海の《橘媛》は、神戸・御影に1935(昭和10)年に建てられた邸宅の敷地内にありました。設置までの詳しい経緯は不明ながら、おそらく戦前からあったと思われます。戦時中の金属供出と阪神・淡路大震災を生き延び、当館にやってきたのです。

北村四海《橘媛》1915(大正4)年(原型発表) 平成21 年度野村殖産株式会社寄贈

小企画・特集以外の展示

「日和崎尊夫を中心に~ビュランの世界、詩画集の世界~」【常設展示室4(後期)】

日和崎尊夫は、明治時代に興隆をみて以来下火になっていた木口木版画を現代に再興させた最大の功労者です。本展示では、ご寄贈により新しく収蔵した日和崎尊夫作品を中心に、弟子にあたる柄澤齋の木口木版画、木原康行と東貞美のエングレーヴィングを展示します。

 

「近現代の彫刻」【常設展示室5】

ロダン以降、現代までの多様な彫刻作品を紹介します。

 

「近代の日本画・洋画」【常設展示室6】

日本画は特集にあわせ、昨年度の新収蔵品と伊藤文化財団寄贈作品を中心に、橋本関雪、村上華岳、水越松南、岡本神草の作品を紹介します(前期、後期ですべての作品を展示替えします)。

洋画は当館コレクションを代表する名品を中心に、明治から戦前までの作例を展示します。

【小磯良平記念室】【金山平三記念室】
小磯良平記念室では、画家が得意とした気品あふれる女性像を中心に展示します。ヨーロッパ滞在を経て自身の画風を確立した小磯は、生涯にわたって「身体をどう表現するか」という課題に取り組みました。その結果生み出された作品には、正確なデッサン力と西洋絵画を真摯に学んだ小磯の姿勢が反映されています。
金山平三記念室では、画家の旅した地の風景とそこで生活を営む人々を描写した作品を集めました。風景画の名手として知られる金山ですが、その風景の中に溶け込む生き生きとした人物表現も、金山作品の大きな見どころの一つです。特集にあわせて、寄贈による新収蔵品も展示します。

関連イベント

(1)学芸員による解説会
9月18日(土)、10月16日(土)、11月20日(土)
各日16:00~(約45分)
レクチャールームにて、定員40名、聴講無料、当日先着順
(2)こどものイベント
オンラインで実施予定
詳しくは当館webサイトをご覧ください。

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