株式会社リクルートホールディングスが運営するBUGではアーティストのたかくらかずきと共同で、キャラクターをテーマにしたグループ展「キャラクター・マトリクス」を開催します。たかくらは、BUG Art Awardの前進であるコンペティション「1_WALL」にて、2012年にファイナリストへ選出されました。また2023年から始まったBUG Art Awardでは審査員を務めるなど、かねてより弊社との関係が深いアーティストであり、これまでもBUGやBUG Art Awardの運営方針について応酬を交わしてきました。今回は展覧会を通じて、BUGが謳う「この世界に必要な違和感」や「無数のハプニング」と出会える場をつくりあげようと試みます。
本展では、青山夢、影山紗和子、九鬼知也、たかくらかずき、谷村メイチンロマーナ、平山匠の6名が、それぞれのオリジナルキャラクターをモチーフとした新作を発表します。会場には高台やスロープが設けられ、来場者は目線の高さを変えたり、動き回ったりすることで、さまざまな作品を発見することになるでしょう。6名の作品がシームレスに展示される空間を、散策するようにお楽しみください。
たかくらかずきコメント
国内の現代美術シーンにおいてキャラクター表現といえば「美少女アニメ風キャラクター」が主流ですが、今回はそこから外れてきた存在である「アニメ/オタクカルチャー以外のキャラクター表現」を取り扱います。
いままでキャラクター表現は、「物語」とともに語られてきました。00年代以降の言説では、キャラクターを物語と結びつけて消費することの崩壊について論じられましたが、これらはあくまで物語表現を主体とした視点から述べられています。そのようなポストモダニズムとオタクカルチャーの目線から物語とキャラクターについて語られるときに見落とされてきた全く別の視点が、キャラクター表現には隠れているのではないでしょうか。
本展では、その見落とされてきた歴史を拾い、紡いでいくことが目的です。たとえばゲームにおける「キャラクター」は、操作するためのキャラクターであるという点において、物語と切り離しても「プレイヤーの依代(神霊が依り憑く対象物)」として存在可能です。つまりそれらは人間の容姿である必要も、人間的なドラマも必要ありません。これらは、儀式的な展開(日常に怪獣が登場し、英雄が巨大化し怪獣を排除する)を繰り返す特撮作品をはじめ、文具/玩具などの商品化を前提としたキャラクターや、さらに遡ると妖怪や神仏などのバリエーションとも共通します。
今回参加する6名のアーティストは、主に平成以降のゲームや特撮、玩具やカートゥーンアニメなどのキャラクターの影響を受け、作品を制作しています。オタクカルチャーと00年代以降の日本現代美術の強固な相互補完関係から抜け落ちてきた、妖怪や精霊信仰、多神教的世界観とも共通する「キャラクターバリエーション」の世界を、並列的な生態系の曼荼羅「キャラクター・マトリクス」として再考します。