中村裕太|ユアサエボシ 耽奇展覧

ユアサエボシ《密閉された瓶》2022年 / 中村裕太《ひよこの水差し》2022年
Photo: Keizo Kioku

 

この度ギャラリー小柳では、2023年1月28日(土)から3月31日(金)の会期にて、中村裕太とユアサエボシによる二人展「耽奇展覧」を開催いたします。

中村裕太は1983年東京生まれ、現在は京都を拠点に活動しています。日本近代の工芸文化に関心を寄せ、「民俗と建築にまつわる工芸」という視点から陶磁器やタイルなどの学術研究と作品制作を行なっています。綿密なリサーチをもとに蒐集された陶片や古書、絵葉書などの一次資料と、中村の手で作り出されたオブジェを組み合わせて構成する精緻なインスタレーションにより、独自の眼差しで見直された史実や文化の有様を映し出します。

ユアサエボシは1983年千葉県に生まれ、現在も千葉県を拠点に活動しています。澁澤龍彦の著作を通じて知ったシュルレアリスムの影響を受けたユアサは、自身を大正時代生まれの架空の画家「ユアサヱボシ」に擬態し、福沢一郎や山下菊二ら往時のシュルレアリスムに根ざした表現者たちの絵画の雰囲気をたたえる作品を制作しています。そのようにして描かれた絵画を架空のユアサヱボシの画業に当てはめていき、当時存在していたかもしれない画家の人生を偽装していくのです。

一見対照的なスタイルをとっているように見える中村とユアサですが、共に興味を抱くのは大正から戦前、戦後の文化と習俗。意気投合した同い年の二人の作家は展覧会のテーマを求めて古書店街をめぐり、骨董市を訪れます。そしてとある古書店で巡り合ったのが中村が探していた『耽奇漫録』(1824〜25年)の復刻本でした。江戸時代後期に曲亭馬琴など時の好事家たちが珍奇な古書画や古器物を持ち寄って論評しあった「耽奇会」。その図譜である『耽奇漫録』にいたく興味を惹かれた中村とユアサは、それぞれの「耽奇なるもの」を考察していきます。

中村にとって「耽奇なるもの」とは憧れの対象であるが故に、一歩下がって客観的に検証すべきもの。今まで中村は歴史のなかで見過ごされがちなものに敢えて注目し、言わば媒介者として歴史の新たな面を紐解いて作品を制作してきました。今回の展覧会では、中村がこれまでに調査してきた文献を素材として、様々な時代や文化の耽奇的なものを参照した陶器作品を発表します。古代インカの鳴壺から明治期の実用新案の千鳥瓶、ユクスキュル『生物から見た世界』(1934年)の挿絵までをも掛け合わせた中村裕太による新たな陶器作りをご覧ください。

一方、ユアサは「耽奇なるもの」に圧倒的な親近感を覚え、架空のユアサが描くシュルレアリスティックな作品群と同じ空気感を感じました。一昨年、ギャラリー小柳での「still life 静物」展で初めて静物画を発表したユアサは、今回の展示もすべて静物画で構成します。ユアサは、『耽奇漫録』に出会った後も骨董市通いを続け、耽奇なるオブジェを収集しました。主に架空のユアサが生きた時代の事物の図版をもとに制作をしてきたユアサですが、今回はそれらに加え、実物のオブジェと対峙して描いた作品を発表します。

今回の展覧会では、中村裕太とユアサエボシがそれぞれ感じた耽奇なるものを展覧いたします。歴史をテーマに軽やかに遊ぶ中村とユアサの「ものによる学び Object Lessons」の試みをお楽しみください。

会期中、様々なアーティストが寄せた「私の耽奇なるもの」を中村とユアサが東京国立近代美術館主任研究員の成相肇氏と鑑賞し合い、また中村とユアサが収集した耽奇なオブジェの「今様耽奇合戦」も開催、ギャラリー小柳のウェブサイトにてアーカイブ配信いたします。

展覧会の初日、1月28 日(土)は午後5時から7時まで、両作家在廊にてオープニング・レセプションを行いますので、ぜひお立ち寄りいただけますようお願いいたします。

 

ユアサエボシ(左)、中村裕太(右)、 神田古書店街にて

 

中村裕太|ユアサエボシ
耽奇展覧

2023年1月28日­(土)- 3月31日(金)
12:00–19:00
*日 / 月 / 祝日休廊
[オープニング・レセプション 1月28日(土)17:00~19:00 作家在廊]

会場:ギャラリー小柳

 

 

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