トーキョーアーツアンドスペースレジデンス2026 成果発表展「はだしであるく」
第1期|2026年6月27日(土)–8月2日(日)
第2期|2026年8月15日(土)–9月20日(日)
トーキョーアーツアンドスペース本郷
https://www.tokyoartsandspace.jp/
開館時間:11:00–19:00(入場は閉館30分前まで)
休館日:月(ただし、7/20は開館)、7/21
展覧会URL:https://www.tokyoartsandspace.jp/archive/exhibition/2026/20260627-7557.html
トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)では、2025年度に東京や世界各地の提携機関のレジデンスで滞在制作を行なった国内外の13組のアーティストによる成果発表展「はだしであるく」を、二部構成で開催する。
TOKASは2006年よりレジデンス・プログラム「クリエーター・イン・レジデンス」を実施し、さまざまな分野で活動する作家やクリエーターへ滞在制作の機会を提供してきた。本展は、価値基準や思考がしばしば帰属する集団によって規定される、という前提に立つ。身を守り歩きやすくする一方で世界とのあいだに距離を生むそうした集団への帰属を「靴」になぞらえ、展覧会名が示すように、それを脱いで素足で世界に触れ直す試みに光を当てる。出品作家たちは、属性や役割をいったん外して個へ立ち返り、異なる時代や場所に生きた誰かの思考と共鳴し、あるいは人間以外のものと対峙するために脆弱性を引き受けながら、社会的な前提から離れ、自らの実感を手がかりに世界との関係を結び直そうと試みている。
アナイス・カレニン《Ancestralidade: planta》2023年 撮影:竹久直樹
アレクシア・アヒレオス《The Fox Who Tricked the Superintelligence & Other Stories》2025年- 撮影:Loucas STAVROU
エドゥアルド・カスティーリョ・ビヌエサ《RAINMAKERS》2026年 映像より抜粋
ノガミカツキ《Post-Body Rehearsal》2025年 撮影:間庭裕基
第1期には7名が出品。うちTOKASレジデンシーに滞在した4名は、テーマ・プロジェクト「テクノロジーと人間のかたち」を共通の主題に掲げ、対話を重ねながら個別に制作へ取り組んだ。植民地時代以前から伝わる知識体系を研究し、人間と植物の関係を問い直してきたアナイス・カレニン(1993年ブラジル生まれ)は、江戸時代から近代化に至る技術史を調査し、新植民地主義的な論理を超えて信仰と知を再編成する立体作品を発表する。テクノロジーを取り巻く権力構造を歴史や地政学の観点から研究するアレクシア・アヒレオス(1985年スウェーデン生まれ)は、プレイヤー同士が協働して新たな「民話」を創造し、ビッグテック企業が語るユートピア的な「神話」に異議を唱える参加型カードゲームを、各地で生まれた物語とともに展示する。気候、テクノロジー、地政学が重なる領域に着目する建築家、リサーチャー、映像作家のエドゥアルド・カスティーリョ・ビヌエサ(1989年スペイン、グラナダ生まれ)は、日本が2050年までの気象制御を目指す「ムーンショット目標8」を軸にしたリサーチから、大気に対して観測と介入の境界があいまいになる現状に焦点を当てる映像インスタレーションを出品する。デジタル社会における身体と記憶によって形成される、オンラインとオフラインのアイデンティティを追究してきたノガミカツキ(1992年新潟県生まれ)は、AIに書かせた日記に応じて生活を変える試みやVRパフォーマンスのアーカイブとともに、滞在中から手がけてきた音楽作品を発表する。
二都市間交流事業プログラムで海外の提携機関に滞在した3名も出品する。映画と現代美術を横断し、取りこぼされやすい個人の話や記憶を普遍的な物語へ再構成してきた池添俊(1988年香川県生まれ)は、精神疾患のある人々と地域住民が共に暮らすヘール(ベルギー)の里親制度の取材を元に、「健常/病」の境界を問い直す映像インスタレーションを公開する。旅で出合う風景や人々を起点に「普遍性」を探究する井上拓哉(1993年岡山県生まれ)は、各々が思い描く「肌色」を混色してもらう参加型プロジェクトをケベックで行ない、他者との関係を織り込んで「私が見ていないもの」を問う絵画を展示する。「散歩」と称したリサーチを通じて技術を介した人間と自然の関係を考察してきた村上郁(東京都生まれ)は、バーゼルの製紙の歴史調査と雑草を用いた紙漉きの実践から、水の循環システムと映像を組み合わせた立体作品を発表する。
池添俊 新作映像より抜粋 2026年
井上拓哉《Project “ABC”》2025年
村上郁《のの紙(雑草紙)》テストピース 2026年
第2期では6組が同じ空間を共有する。海外クリエーター招聘プログラムでTOKASレジデンシーに滞在し、個別のプロジェクトに取り組んだのは3名。音や音楽が歴史の中でどのように消費され、誤用されてきたかを探究するアーティスト、作曲家、研究者のガン・ドンフン(1992年韓国、済州島生まれ)は、近代化の過程で東アジアへ西洋音楽が流入して生じた音楽的ヒエラルキーをポストコロニアルな視点から捉え、300年前に西洋で生まれ現在も日韓でよく知られる童謡をモチーフとした作品を発表する。アートと科学をとおして人間と非人間的システムの相互作用を探求する、2018年設立の台湾を拠点とするアート・サイエンス・コレクティブ、Synphysicaは、東京で日本庭園や森林を調査し、管理された環境と生態学的な観点との緊張関係を出発点に、実際の草木を用いて人間と自然が対話する空間を立ち上げる。素材や地域の歴史、他者との交流を起点に、絵画や写真、彫刻などさまざまな手法で制作してきたディエゴ・ペレス(1975年メキシコシティ生まれ)は、墨田区周辺の散策で出合った街並みを自身の記憶と重ね合わせた陶芸作品とともに、日本庭園に着想し、じょうろ職人と協働して制作した水が循環する銅の彫刻を展示する。
二都市間交流事業プログラムで海外の提携機関に滞在した3名は次の通り。フェミニズム研究に基づき、ビデオゲームなどで他者の視点や身体感覚に迫ってきた宇佐美奈緒(1994年東京都生まれ)は、ベルリンでの戦争遺構のリサーチを元に、戦時下の焚書の場面を3Dコンピュータ・グラフィクスで追体験させるビデオゲーム作品を発表。振付家・小林萌とのパフォーマンスも発表する。空間や社会に内包される「振付」的な事象へ応答するようにパフォーマンス作品を発表してきたハラサオリ(1988年東京都生まれ)は、台北で地震と人の関係をリサーチし、軍事的緊張や情報戦といった「揺れ/揺さぶり」を手がかりに、映像や写真、パフォーマンスをとおして「危機を記憶し、備える身体」への想像力を広げる。人と土地との関係性やケアのあり方を探究してきた水野渚(愛知県生まれ)は、かつてのごみ処理場の埋立地で現在は豊かな生態系をもつヘルシンキのヴオサーリ丘陵で、土壌の専門家や清掃員への聞き取りとツアーワークショップを重ね、歩く中で出合った風景や音を起点に参加者と制作した音響詩から生まれた物語を通じて、人と土地との多様で包摂的な関わり方の可能性を提示する。
宇佐美奈緒《Silence and Oblivion》2025年 撮影:Leonard NEUBERGER
ガン・ドンフン《Binary Composition for Two Cellos》2024年 撮影:Ivan MURZIN
Synphysica《Virtual Root》2021年
関連イベント
アーティスト・トーク[第1期]
①2026年6月28日(日)16:00–18:00(日英逐次通訳)
出演:アナイス・カレニン、アレクシア・アヒレオス、井上拓哉、エドゥアルド・カスティーリョ・ビヌエサ、ノガミカツキ
②2026年7月4日(土)16:00–17:00
出演:池添 俊、村上 郁
会場:トーキョーアーツアンドスペース本郷
料金:無料
アーティスト・トーク[第2期]
①2026年8月16日(日)16:00–17:30
出演:宇佐美奈緒、ハラサオリ、水野 渚
②2026年8月22日(土)16:00–17:30(日英逐次通訳)
出演:ガン・ドンフン、Synphysica、ディエゴ・ペレス
会場:トーキョーアーツアンドスペース本郷
料金:無料
ハラサオリ《P wave》2021年 撮影:NAKAYAMA Yunosuke
ディエゴ・ペレス《Sumida fountain I》2025年 撮影:間庭裕基
水野渚 ツアーワークショップの様子 2025年 撮影:Mikko LUOSTARINEN