2026年5月27日、釜山ビエンナーレ組織委員会は、2026年8月29日に開幕を控える釜山ビエンナーレ2026に向けて公式ウェブサイトを開設。昨年7月にアマル・ハラフとエヴェリン・シモンズのアーティスティック・ディレクター就任発表以来、総合テーマや主要会場に続き、参加アーティストの情報も明らかになってきた。
ロンドンのCubittのプログラムディレクターで昨年はバンコクで「Ghost 2568: Wish We Were Here」のキュレーションを手がけたアマル・ハラフと、ブリュッセルを拠点にベルギーを代表するエレクトロニック・ミュージックのイベント「Horst Arts & Music」のプログラムを手がけてきたエヴェリン・シモンズは、「Dissident Chorus(不協和の合唱)」というテーマを掲げ、アーティストやコレクティブの実践を通じて、音、身体、水を媒介とした記憶、共感、治癒、抵抗、連帯といったキーワードを展開していく。
釜山ビエンナーレ2026では、2018年の開館以来ビエンナーレの主会場として定着している釜山現代美術館に加え、影島区の旧釜山南高等学校とSpace One Zが会場となる。旧釜山南高等学校は、1955年に創設し、生徒数の減少に伴う江西区への移転のため、2026年2月に最後の卒業生を見送ることとなった。約70年間の学校生活の記憶を留める旧校舎を展示会場として活用する初めての機会に、本ビエンナーレではさまざまな実践やプロジェクトを通じて、従来の教育のあり方を問い直し、教育学の新たなアプローチを検討していく。一方、釜山港湾の旧倉庫を改修した複合施設「Space One Z」は、流通、労働、物流の記憶だけでなく、そこに集まった人々の夜の記憶も留める。本ビエンナーレでは、そうしたさまざまな時代の層や物語、リズムを呼び起こす構成が期待されている。
旧釜山南高等学校
Space One Z
2026年4月末に、参加アーティストの1回目の発表があり、韓国を代表するイム・ミヌクや故スキ・ソギョン・カン(1977–2025)、そして、宗教、ファンダム、K-POPカルチャー、BDSMなどの交差性を掘り下げ、社会規範や権力構造を分析するような実践を積み重ねるデュウ・キムをはじめ、神話的想像力、SF的要素、フェミニズム美学を基盤に既存の秩序に抗う実践を積み重ね、2019年にはターナー賞を共同受賞しているタイ・シャニ、幼少期にマルティニークで育ちアフリカ系のルーツを持ち、カリブ海文化圏の歴史や感性を基に、海、移動、アイデンティティといった問題を没入型のインスタレーションを通じて表現、第60回ヴェネツィア・ビエンナーレのフランス館代表も務めたジュリアン・クルーゼ、言語や音を媒介に、不透明性や抵抗、反植民地的想像力の可能性を実践に取り込み、従来の人間中心的視点を問い直してきたジョタ・モンバサ、蓄音機のアーカイブを調査し、録音に内在する植民地主義的な力学を考察してきたコンゴ系でベルギー出身のンキシ、消去されたり沈黙を課せられてきた声にアプローチし、プロパガンダと音の政治学を探究してきたタイ出身のタナット・ティーラダコーンらの参加が明らかとなった。
Dew Kim, Kiss of Chaos (2020)
Tai Shani, DC Semiramis (2019). Installation view, Turner Prize 2019 at Turner Contemporary. Courtesy of the artist. Photo: David Levene
続いて、5月末に公式ウェブサイトの開設と同時に参加アーティストの2回目の発表も行なわれた。参加アーティストには、第61回ヴェネツィア・ビエンナーレ企画展「In Minor Keys」にも参加し、日本でも《重信房子、メイと足立正生のアナバシス そしてイメージのない27年間》などを国立美術館やヨコハマ・トリエンナーレ2014などで発表しているエリック・ボードレール、2023年に韓国美術家賞受賞者を受賞し、恵比寿映像祭2026でももサウンドが印象的な映像インスタレーションを発表したチョン・ソジョン。また、BENTEN 2024にて王城ビルにてインスタレーションを展開、シコ・スティヤントと上演作品も発表したチェン・ティエンジュオ、アーツ前橋での「リキッドスケープ 東南アジアの今を見る」にも出品し、ハン・ネフケンス財団の助成による新作の発表が東京都現代美術館でも期待されるナターシャ・トンテイ、国立国際美術館や恵比寿映像祭でも作品を発表し、2026年にはロンドンのガスワークスでも個展を開催した石原海。そして、国際芸術祭「あいち2025」でも、その独自の芸術言語による大型の絵画や立体作品を発表した、スーダンの芸術運動ハルツーム派を代表するアーティストのカマラ・イブラヒム・イシャグ、ラホールを拠点に制作活動のみならず、教育や女性の権利運動にも従事したパキスタンを代表するアーティストのララ・ルーク(1948–2017)。さらには、『ゲド戦記』や『闇の左手』をはじめ、数々の優れたファンタジーとサイエンス・フィクションを手がけ、現代美術への影響も大きい物故作家のアーシュラ・K・ル゠グウィン(1929–2018)などの名前が並んだ。
2026年は釜山ビエンナーレ2026だけでなく、ホー・ツーニェンがアーティスティック・ディレクターを務める第16回光州ビエンナーレも9月5日に開幕を予定。同じく9月に開催されるフリーズ・ソウルと併せて、国際的な注目が秋の韓国に集まる。
釜山ビエンナーレ2026
「Dissident Chorus」
2026年8月29日(土)-11月1日(日)
https://busanbiennale2026.com/en
アーティスティック・ディレクター:アマル・ハラフ、エヴェリン・シモンズ
展示会場:釜山現代美術館、旧釜山南高等学校(影島区)、Space One Z(影島区)
Jota Mombaça, GHOST 7 (#1 – #7): FRENCH HISTORICAL MALADIE (2023) Exhibition view, FRAC des Pays de la Loire, Carquefou, France.
Nkisi, Nzita Dia Nza (2022) Courtesy of the Artist.
参加アーティスト(2026年5月27日現在)
スキ・ソギョン・カン|Suki Seokyeong Kang
キム・ソンウン|Sungeun Kim
デュウ・キム|Dew Kim
リュ・ソンシル|Sungsil Ryu
ハウス・オブ・コリアン・プロテスト・ソングス|The House of Korean Protest Songs
パク・ヒョンソン|Hyunsung Park
ペク・ヒョンジュ|Heaven Baek
イ・ドンクン|Lee Dong-Keun
イム・ミヌク|Minouk Lim
チョン・ソジョン|Sojung Jun
チョ・ウンジ|Eunji Cho
5D(サミー・リー、マーク・ロウ、サラ・シン)|5D (Sammy Lee, Mark Lowe, Sarah Shin)
アリアスカル・アバルカス|Aliaskar Abarkas
アリソン・グエン|Alison Nguyen
ベンジー・ラー|Bhenji Ra
ブラヒム・タール|Brahim Tall
エリック・ボードレール|Eric Baudelaire
ファティマ・カリーム・カーン|Fatima Kaleem Khan
ゲリー・モラト・ロレド|Guely Morato Loredo
ジャンツァンホロル・エルデネバヤル|Jantsankhorol Erdenebayar
ジョール・ソンクヤ|Joar Songcuya
ジョシュア・セラフィン|Joshua Serafin
ジョタ・モンバサ|Jota Mombaça
ジュリアン・エイブラハム・“トガー”|Julian Abraham “Togar”
ジュリアン・クルーゼ|Julien Creuzet
カマラ・イブラヒム・イシャグ|Kamala Ibrahim Ishag
ララ・ルーク|Lala Rukh
ララ・オゲル|Lara Ögel
ルイス・ロケ|Luiz Roque
ミラ・マン|Mira Mann
モエ・サット|Moe Satt
ナターシャ・トンテイ|Natasha Tontey
ンキシ|Nkisi
R・I・P・ジャーメイン|R.I.P. Germain
リ・シュアン[李爽]|Shuang Li
タイ・シャニ|Tai Shani
タナット・ティーラダコーン|Tanat Teeradakorn
チェン・ティエンジュオ|Tianzhuo Chen
トム・ハレット|Tom Hallet
ウルトラ−レッド|Ultra-red
石原海|Umi Ishihara
アーシュラ・K・ル゠グウィン|Ursula K. Le Guin
ヤザン・ハリリ|Yazan Khalili
ザフラ・マルカニ|Zahra Malkani
