
ICC アニュアル 2026 遺す/残る/受けとめる
2026年6月20日(土)–11月8日(日)
NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
https://www.ntticc.or.jp/
開館時間:11:00–18:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:月(ただし、7/20、9/21、10/12は開館)、8/2(日|東京オペラシティビル法定点検日)、7/21、9/22、10/13 ※9/22(火・祝)は開館
展覧会担当:吉﨑和彦(ICC主任学芸員)、指吸保子(ICC学芸員)、鹿島田知也(ICC学芸員)、多田かおり(ICC学芸員)
展覧会URL:https://www.ntticc.or.jp/ja/exhibitions/2026/icc-annual-2026/
NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]では、現代のメディア環境における多様な表現をとりあげる「ICC アニュアル 2026」を開催。「遺す/残る/受けとめる」のテーマの下、ウー・チーユー、キム・ヨンウン、小林椋、SUGAI KEN、すずえり+比嘉了、葉山嶺、ローサ・メンクマン、森永泰弘の8組の作品を通して、歴史と技術、メディアの関係を考察。また、新進アーティストを対象とする「エマージェンシーズ!」では、宮下恵太(6月20日〜8月16日)と杉田碧(9月12日〜11月8日)を紹介する。
本展の前提となるのは、生成AIなどの技術の発展により、かつてない速度と規模で情報が生み出され、流通する現代のメディア環境。そこでは私たちが接する情報もアルゴリズムによって選ばれ、再編成されている。こうした情報環境の変化は、何が記録され、どのように共有されるのかという枠組みそのものにも影響を与えるのか。歴史や記憶もリアルタイムに更新される可能性があり、ときに政治的・経済的な力学の下で書き換えられることも見られる。
そこで本展では、歴史と技術、メディアの関係に着目し、それらが歴史や記憶の形成にどのように関わってきたのかを考えるとともに、「遺す/残す」という行為そのものにも焦点を当てる。出品作品を通して、記録メディアに内在する選別や排除の構造、デジタル環境におけるイメージの流通とそこで働く力学、さらには西洋近代以降の知覚の枠組みからこぼれ落ちてきたコミュニケーションのあり方など、さまざまな視点を提示し、また、歴史に直接言及していなくても、記憶の継承について新たな視点をもたらし、何が遺され、残されたものをどのように受けとめるのかという問いを通して、歴史と記憶のあり方をあらためて問い直していく。
ウー・チーユー[呉其育]《セルロイドの物語:無主地のデータ》2024年
キム・ヨンウン《未来の聴取者へ 3》2025年 © YoungEun Kim
参加アーティストは以下の通り。
台北を拠点に活動するウー・チーユー[呉其育](1986年台湾、新北生まれ)は、初期の映画フィルムに用いられたセルロイドの原料であり、日本統治期の台湾において重要な生産資源だった樟脳を起点とした〈セルロイドの物語〉シリーズを映像インスタレーションの形式で発表予定。映画の成立を支えた植民地の歴史を辿り、森林伐採や資源採取、そこに動員された労働に光を当てるとともに、現代のAIによるイメージ生成を支える構造への接続を試みる。
昨年の韓国美術家賞受賞者のキム・ヨンウン(1980年生まれ)は、音や聴取という行為を社会政治的・歴史的に形成された産物および実践として考察してきた。近年は、ある具体的な歴史的文脈の中で音と聴取がいかに構築され,技術的に発展してきたのかを探るとともに,その聴取が知の生産や脱植民地化の過程においてどのような可能性を持ちうるのかを問いかけている。本展に出品される〈未来の聴取者へ〉と題した三作品は、20世紀初頭に蝋管に録音された韓国の伝統音楽や、アメリカにおけるアイルランド移民の歌を手がかりに、ノイズ除去による断片化、蝋管への再録音、AIによる女性合唱への変換といった手法を通じて、録音が声を記録すると同時に排除してきた構造を浮かび上がらせる。
小林椋(1992年東京都生まれ)は、ものの「動き」を起点に、不和のようなものを発生させる装置を組み立てたり、そうした仕組みをほかの事物と類推させることで生まれる飛躍を観察しながら作品を制作してきた。本展では、稲垣足穂(1900–77)が好んで用いた、実用性を失った、飛行の不可能性を象徴するものとして「空中飛行器」という言葉に含まれる飛行機観と、リンク・トレーナーと呼ばれる初期のフライト・シミュレーターという、ふたつの「飛ばない飛行機」を起点として、「飛ぶこと」または「落ちること」の実践を考察する器具群を新作として発表する。
日本の夜を彷彿とさせる独特なスタイルを軸に,国内の様々な俚伝をギミカルに電化させるトラックメイカーのSUGAI KENは、ICCの無響室のために制作した新作《「 …ん!?」-虚響室-》を発表。模造した家鳴り音や、特殊な設定でバイノーラル録音した無響室での足音などを高精細なスピーカーで鳴らすことにより、音が展示室内であたかも発生しているかのような錯覚を誘発し、在るはずのない誰か(もしくは何か)の気配を出現させる。(※無響室でひとりずつ体験する作品のため予約制)
小林椋 新作のためのスケッチ
SUGAI KEN
すずえり+比嘉了《Resistance Array》2026年 撮影:西野正将 参考図版
道具や楽器のインタラクションと身体、通信のレイテンシー(遅延時間)と即興性などから立ち上がるずれに興味をもち、自作楽器や装置による展示や演奏を行なってきたすずえりは、高度なプログラミング技術により、インスタレーション、舞台演出、VJ、ライヴ・パフォーマンスなど幅広い制作活動を展開してきた比嘉了(1983年生まれ)とのユニットにて、現代において情報がミームとして伝播する様子とそれによる連帯のあり方に着目した作品《Resistance Array》を発表する。デモにおけるレーザーポインタの利用がSNSを通じて世界各地に広がった経緯を参照し、投稿されたテキストの内容と投稿同士の関連性を機械学習で分析し、ネットワーク化した結果を投影する。(支援:令和7年度文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業)
野生動物や環境問題と深く関わる特殊な環境で幼少期を過ごした葉山嶺は、人間中心的な世界の外にある自然や生物を中心に展開し、人間の見ることができない「自然の現実の層」を人間の想像力の中に浮かび上がらせる作品を制作してきた。本展出品作品の《LYMENA》は、CGのコウモリたちが生息する「立ち入ることのできない洞窟」と、その周囲に生じる瞑想的時間からなるインタラクティヴな映像作品。
ローサ・メンクマン(1983年オランダ、アーネム生まれ)は、アーティファクト(信号処理や画像処理の過程で生じるデータの誤りや歪み.人為的な作業によって意図せず生じるノイズ)を、ともすると不透明なブラックボックスと化してしまう標準化への洞察を与えるものと捉え、アナログおよびデジタル・メディア双方において生じるグリッチなどのノイズ・アーティファクトをテーマに活動する。本展では、画像処理技術において「何が遺され/失われるのか、それを決めるのは誰か」を問う、主に3つの映像作品からなる作品シリーズ〈Image Remains〉を発表する。
リスボン大学高等芸術学府CIEVA共同研究員としてリスボン在住の森永泰弘は、エスノグラフィーの手法を科学技術的に洗練させ、楽器や歌の初源、儀礼や祭祀を記録しながら通文化的に描く作品を制作してきた。出品作品となる立体音響技術を用いた没入型サウンド・インスタレーション《Auto-ethnography: HAMAKAI》は、アマゾン最後の狩猟民と言われるアワ民族の森での狩猟中に獲物となる動物の鳴き真似をするヴォーカル・コミュニケーションの一種「ハマカイ」をはじめ、その居住空間に併存する多様な音を捉え、さらに参与観察を行なう作家自身の視点の客観化を演劇的な手法によって試みた多元的な音表現。
会期最初の週末には、ウー・チーユー、キム・ヨンウン、ローサ・メンクマン、森永泰弘が来日し、アーティスト・トークを行なう。なお、同時期にはコレクション作品展示として、グレゴリー・バーサミアンの《ジャグラー》(1997)も展示する。
葉山嶺《LYMENA》2025年
ローサ・メンクマン〈Image Remains〉2026年
森永泰弘 フィールドワーク時の記録写真(2023年、ブラジル)参考図版
関連イベント
アーティスト・トーク ウー・チーユー ※オンライン中継あり
2026年6月20日(土)14:00–
参加アーティスト:ウー・チーユー
司会:吉﨑和彦(ICC主任学芸員)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]ギャラリーD
定員:100名(当日先着順)
参加費:無料(※展覧会鑑賞には入場料が必要)
※日英逐次通訳つき
https://www.ntticc.or.jp/ja/exhibitions/2026/open-salon-artists-talk-wu-chi-yu-jun-20-2026/
アーティスト・トーク 森永泰弘 ※オンライン中継あり
2026年6月20日(土)16:00–
参加アーティスト:森永泰弘
司会:多田かおり(ICC学芸員)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]ギャラリーD
定員:100名(当日先着順)
参加費:無料(※展覧会鑑賞には入場料が必要)
https://www.ntticc.or.jp/ja/exhibitions/2026/open-salon-artists-talk-morinaga-yasuhiro-jun-20-2026/
アーティスト・トーク キム・ヨンウン ※オンライン中継あり
2026年6月21日(日)14:00–
参加アーティスト:キム・ヨンウン
司会:吉﨑和彦(ICC主任学芸員)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]ギャラリーD
定員:100名(当日先着順)
参加費:無料(※展覧会鑑賞には入場料が必要)
※日英逐次通訳つき
https://www.ntticc.or.jp/ja/exhibitions/2026/open-salon-artists-talk-kim-youngeun-jun-21-2026/
アーティスト・トーク ローサ・メンクマン ※オンライン中継あり
2026年6月21日(日)16:00–
参加アーティスト:ローサ・メンクマン
司会:指吸保子(ICC学芸員)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]ギャラリーD
定員:100名(当日先着順)
参加費:無料(※展覧会鑑賞には入場料が必要)
※日英逐次通訳つき
https://www.ntticc.or.jp/ja/exhibitions/2026/open-salon-artists-talk-rosa-menkman-jun-21-2026/
