第61回ヴェネツィア・ビエンナーレのキュレーターに、コヨ・クオが就任


Koyo Kouoh © antoine tempé

 

2024年12月3日、ヴェネツィア・ビエンナーレ事務局は、2026年開催予定の第61回ヴェネツィア・ビエンナーレのキュレーターに、南アフリカ共和国ケープタウンのツァイツ・アフリカ現代美術館のエグゼクティブ・ディレクター兼チーフ・キュレーターを務めるコヨ・クオを任命したと発表した。

「The Milk of Dreams(夢のミルク)」というレオノーラ・キャリントンの言葉をテーマに掲げて、シュルレアリスム運動の再検討を現代的な関心とともに女性アーティストが大半を占める構成で試みたチェチリア・アレマーニ、「Foreigners Everywhere(外国人はどこにでもいる)」をテーマに、同ビエンナーレ史上初のラテンアメリカ出身者かつ南半球に活動拠点を置く者として、同じく同ビエンナーレ史上初のクィアを公言するキュレーターとして、根強い欧米中心のモダニズムの境界や記述を問い直したアドリアーノ・ペドロサに続く2026年の第61回展のキュレーションは、アフリカおよびアフリカン・ディアスポラの現代美術を専門とし、アートにおける脱植民地化の問題に長く取り組んできたコヨ・クオが手がけることとなった。

コヨ・クオ(1967年カメルーン、ドゥアラ生まれ)は、2019年よりアフリカおよびアフリカン・ディアスポラの現代美術を扱う最大規模の美術館として2017年に開館したツァイツ・アフリカ現代美術館(Zeitz MOCAA)のエグゼクティブ・ディレクター兼チーフ・キュレーターを務める。また、2008年にカメルーンのダカールにアートセンター「RAWマテリアル・カンパニー」を創設し、現在もアーティスティック・ディレクターを務める。これまでに、ロジャー・ビュルゲルとルート・ノアックがアーティスティック・ディレクターを務めたドクメンタ12(2007)、キャロライン・クリストフ=バカルギエフがアーティスティック・ディレクターを務めたドクメンタ13(2012)にキュラトリアルチームの一員として参加。「Body Talk: Feminism, Sexuality and the Body in the Works of Six African Women Artists」(ウィールズ現代美術センター、ブリュッセル、2015)、第37回EVAインターナショナル「Still (the) Barbarians」(リムリック、アイルランド、2016)、第57回カーネギー・インターナショナル(2018)の展覧会内展覧会として、カーネギー自然史博物館のコレクションを利用した「Dig Where You Stand」などを企画。そのほか、2013年から2017年まで、ロンドンの「1-54コンテンポラリー・アフリカン・アートフェア」の教育および美術プログラムのキュレーターを務め、2015年から2018年まで、ラシャ・サルティとともに主導したリサーチプロジェクト「Saving Bruce Lee: African and Arab Cinema in the Era of Soviet Cultural Diplomacy」をモスクワのガレージ現代美術館、ベルリンの世界文化の家で発表している。ツァイツ・アフリカ現代美術館では、「When We See Us: A Century of Black Figuration in Painting」(2022)や、オトボン・ンカンガ(2019)、センゼニ・マラセラ(2020-2021)、ジョハネス・フォケラ(2021)、トレイシー・ローズ(2022)、メアリー・エヴァンス(2023)の個展を企画し、アブドゥライ・コナテ(2020-2021)のサイトスペシフィックな作品の制作にも携わる。出版物も「Breathing Out of School: RAW Académie」(2021)、「Condition Report on Art History in Africa」(2020)、「Word!Word?Word! Issa Samb and The Undecipherable Form」(2013)、「Condition Report on Building Art Institutions in Africa」(2012)など多数。2020年にはスイスで最も権威ある芸術賞として知られる「メレット・オッペンハイム賞」を受賞している。現在は、ケープタウン、ダカール、バーゼルの3都市を拠点に活動。

11月24日に閉幕した第60回展は、会期中に70万枚以上の鑑賞チケットを売り上げ、プレビュー期間の入場者2万7966人を合わせ、前回の第59回展に次ぐビエンナーレ史上2番目の入場者数を記録した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行以前の2019年に開かれた第58回展と比べても18%の増加となった。

 


過去10回のディレクター一覧
第60回(2024)|アドリアーノ・ペドロサ
第59回(2022)|チェチリア・アレマーニ
第58回(2019)|ラルフ・ルゴフ
第57回(2017)|クリスティーヌ・マセル
第56回(2015)|オクウィ・エンヴェゾー
第55回(2013)|マッシミリアーノ・ジオーニ
第54回(2011)|ビーチェ・クリーガー
第53回(2009)|ダニエル・バーンバウム
第52回(2007)|ロバート・ストー
第51回(2005)|マリア・デ・コラル、ロサ・マルティネス

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