田部光子展「希望を捨てるわけにはいかない」@ 福岡市美術館


 

田部光子展「希望を捨てるわけにはいかない」
2022年1月5日(水)- 3月21日(月)
福岡市美術館 2階近現代美術室A・B
https://www.fukuoka-art-museum.jp/
開館時間:9:30–17:30 入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、1/10は開館)、1/11
企画:正路佐知子(福岡市美術館学芸員)

 

福岡市美術館では、福岡の前衛美術集団「九州派」の主要メンバーとして活動、福岡の美術界だけでなく、女性たちをも牽引してきたアーティスト、田部光子の個展『田部光子展 「希望を捨てるわけにはいかない」』を開催する。

田部光子(1933年生まれ)は、日本統治下の台湾に生まれ、1946年に福岡に引き揚げ、岩田屋百貨店に勤務しながら独学で絵画作品の制作をはじめる。50年代には県展などの公募展で入選を重ね、1957年に結成された九州派に参加し、九州派の代名詞ともいえるアスファルト・ピッチを使った《繁殖する1》(1958)、《繁殖する2》(1958)、《魚族の怒り》(1959)などを発表する。さらに、その制作は、同時代の国内外の社会情勢に敏感に反応し制作した《プラカード》(1961)やフェミニズム ・アートの先駆的な事例として近年注目を集める《人工胎盤》(1961)といったコラージュやオブジェにも展開していく。九州派がグループとしての活動を終えた後も、1974年に「九州女流画家展」を立ち上げるなど、福岡の女性のアーティストたちの発表、交流の場を築いていった。その後も国内外で発表を重ね、2003年の『九州力』(熊本市現代美術館)に参加後、同館の依頼で《人工胎盤》を再制作し、同館に収蔵。『前衛の女性 1950–1975』(栃木県立美術館、2005)においても改めて高い評価を獲得する。そして、2013年には福岡市美術館で、所蔵品を中心に最初期の作品から2000年代の作品まで37点を出品したコレクション展示『田部光子展 人生が芸術である』が開かれている。

 


田部光子《たった一つの実在を求めて》1963年、福岡市美術館蔵

 

田部の座右の銘である「希望を捨てるわけにはいかない」を冠した本展では、上述した代表作はもちろん、「九州女流画家展」などこれまでほとんど紹介されることのなかった1970-80年代を含む、「九州派」時代から現在までの田部光子の活動、ひとりの表現者が社会のさまざまな障壁に立ち向かい、不平等に抗い、人々の背中を押し、なにより楽しみながら美術によって世の中を変革しようと走りつづける軌跡を、作品と資料によって明らかにする。

会期中には、田部光子の活動の背景をより深く理解するために、『戦争と女性画家 もうひとつの近代「美術」』(ブリュッケ、2013年)の著者で美術史家の吉良智子(日本女子大学学術研究員)、『アンチアクション―日本戦後絵画と女性画家』(ブリュッケ、2019年)の著者で美術史家の中嶋泉(大阪大学大学院准教授)による講演会を開催。また、本展企画担当で2013年のコレクション展示も担当している正路佐知子(福岡市美術館学芸員)によるつきなみ講座特別編「美術家・田部光子の挑戦」も開催する。

 


田部光子《魚族の怒り》1959年、福岡市美術館蔵


田部光子《プラカード》1961年、東京都現代美術館蔵


田部光子《人工胎盤》1961年(2004年再制作)、熊本市現代美術館蔵

 

関連プログラム
記念講演会①「ジェンダーの視点からみる近代の女性アーティストたち」
講師:吉良智子(日本女子大学学術研究員)
2022年2月5日(土)14:00–15:30(開場:13:30)
会場:福岡市美術館ミュージアムホール
定員:180名(先着順)※無料

記念講演会②「戦後美術と女性作家」
講師:中嶋泉(大阪大学大学院准教授)
2022年2月12日(土)14:00–15:30(開場:13:30)
会場:福岡市美術館ミュージアムホール
定員:180名(先着順)※無料

つきなみ講座特別編「美術家・田部光子の挑戦」
講師:正路佐知子(福岡市美術館学芸員、本展企画担当)
2022年2月26日(土)14:00–15:30(開場:13:30)
会場:福岡市美術館ミュージアムホール
定員:180名(先着順)※無料

 


田部光子《Hana》1990年、作家蔵


田部光子《Sign Language》1996/2010年、福岡市美術館蔵

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