第2回福岡アートアワード


ソー・ソウエン《お臍と呼吸》2022年

 

2024年3月19日、福岡市美術館が昨年度新設した「福岡アートアワード」の本年度の受賞作家および受賞作品が発表となった。大賞となる市長賞にはソー・ソウエン、優秀賞にはイ・ヒョンジョンと山本聖子が選出された。各受賞作品が展示される「第2回福岡アートアワード受賞作品展」は、3月28日から6月2日まで福岡市美術館2階コレクション展示室で開催。開幕前に同会場にて授賞式も開かれる。

第2回の市長賞を受賞したソー・ソウエン(1995年福岡県生まれ)は、自身のアイデンティティの成り立ちを身体との関わりにおいて追求。絵画制作だけでなく、近年では映像作品やパフォーマンスなど、表現の領域を広げている。近年の主な展覧会に、個展「Your Body is the Shoreline」(√K Contemporary、東京、2023)、個展「ソ―・ソウエン『絶えず壊れてきたし、壊れ続けている(壊れてはいない)』」(rin art association、群馬、2023)、グループ展「FATHOM—塩田千春、金沢寿美、ソー・ソウエン」(京都精華大学ギャラリーTerra-S、2023)など。2022年には福岡アジア美術館アーティストイン・レジデンスに招聘されている。受賞作品は複数のモニタを使用した映像インスタレーション《お臍と呼吸》(2022)。

優秀賞を受賞したイ・ヒョンジョン(1973年ソウル生まれ)は、キムチの熟成過程を作家自身の人生になぞらえたり、あるいは心臓や性器などを連想させる形象として捉えた自画像とも言える代表的な絵画シリーズや、個人史を扱った複合的なインスタレーション、パフォーマンスなど幅広い表現を発表している。近年の主な展示に個展「이씨! 표류기」(チョン・ムンギュ美術館、2023)、「UTOPIA?!PEACE」(クンストラウム・ポツダム、2023)、「キムチ」(オルタナティブ・アートスペースIPO、ソウル、2019)など。受賞作品は、代表的な絵画シリーズ《キムチ 2022-1》(2022)。同じく優秀賞を受賞した山本聖子(1981年京都府生まれ)は、自身が育った均質的なニュータウンの様相に対する違和感や、それがもたらす身体への影響の焦燥感を起点に制作活動に取り組み、映像、インスタレーション、彫刻を含むさまざまな表現形式で作品を発表している。近年の主な展覧会に「VOCA展2021 現代美術の展望-新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、東京、2021)、「黒の先に落ちた赤ー『おやすみ。いい天気だね。』」(駁二大義區・漾藝廊、高雄、2020)など。2023年には福岡アジア美術館アーティストイン・レジデンスに招聘されている。受賞作品は同レジデンスの成果展で発表した映像インスタレーション《白色の嘘、滲む赤》(2023)。

 


イ・ヒョンジョン《キムチ2022-1》2022年


山本聖子《白色の嘘、滲む赤2》2023年

 

福岡アートアワードは、福岡市が昨年度(2022年度)より推進するFukuoka Art Next事業の一環として、同年、福岡市美術館が設立。同市内で目覚ましい活動を遂げ、今後も飛躍が期待できるアーティストを対象に作品の買い上げをもって贈賞する。第1回の昨年度は82名の応募の中から、市長賞に鎌田友介、優秀賞をチョン・ユギョン、石原海が選ばれ、各作家の受賞作品が福岡市美術館のコレクションに加わった(受賞作家のコメントや選考委員の講評をまとめたリーフレット)。

第2回は過去1年間に福岡市内で公開・発表を伴う活動を行なったアーティストを対象に、2023年9月15日から10月31日に公募を実施。12月20日の第1次選考では応募資料を元に80名から第2次選考に進む12名を選出。1月26日の第2次選考で、各作家から提供された追加資料とともに買い上げの可能作品についての審査が行なわれ、3名の受賞作家が決定した。選考委員は昨年同様、水沢勉(神奈川県立近代美術館館長)、植松由佳(国立国際美術館学芸課長)、堀川理沙(ナショナル・ギャラリー・シンガポール キュレートリアル&コレクションズ ディレクター)の3名が務めた。

 

第2回福岡アートアワード受賞作品展
2024年3月28日(木)- 6月2日(日)
福岡市美術館 2階コレクション展示室 近現代美術室B
※授賞式は3月28日(木)9:30-10:00に同会場で開催

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