親密さに残された最後の距離
インタビュー/アンドリュー・マークル
IV

ART iT 序盤の会話で、制作可能であるためにはどこにいたとしても、「アートとともにあること(art “comes with” you)が常に必要だとおっしゃっていましたが、今回東京で制作をしてみてどうでしたか。ベルリンとは違っていましたか。
TD 東京では私のものになり得る素材を見つけることが大変でしたね。普段とは異なる物質性があり、街の通りもわかりません。だから、いろんなところへ連れて行ってくれたり、通訳してくれる人々に依存しますし、これはベルリンでの制作とまったく違います。ラッカーも異なりますし、石膏も異なり、それを乾燥させる時間も異なります。ベルリンでは些細な用事でも、ここではひとつのことを調べるのに丸一日費やすこともあるでしょう。毎日があっという間に過ぎていきます。
しかし、この街、建築、古い住宅がすっかり好きになりました。たとえ、異なる文化、文脈があっても、東京のいくつかの小さな料理店ではすっかり自分の空間のように感じることができました。これは私が展覧会で創ろうとしているもの、気軽に心地良く動くことができて、物質的、建築的運動を彫刻に組み込むことができる空間なのです。
ART iT 今回の展示にあった段ボールの作品を見たときに笑ってしまいました。なぜなら、その段ボールをある場所から見ると日本建築そっくりに見えるのです。
TD それはちょっとわからないのですが、日本建築は人間的な欲求に動かされているように感じます。きっとバウハウスは日本建築から影響されたに違いないと思います。東京では、どこでも建てられた空間のすべての要素の関係が、それ以上でもそれ以下でもない、ちょうど必要な広さの空間で、最大限に活かされているように感じました。独特な線の使い方も含め、こうした感性は、私と通じるものがあると感じています。
ART iT 段ボールの作品を制作したときには、そうしたことは考えていましたか。
TD: それとなくですが。
テア・ジョルジャッツェ インタビュー
親密さに残された最後の距離