Beuys in Japan:ボイスがいた8日間
2009年10月31日(土)〜2010年1月24日(日)
水戸芸術館 現代美術ギャラリー
http://www.arttowermito.or.jp/art
文:三本松倫代(神奈川県立近代美術館 学芸員)

安齊重男「ヨーゼフ・ボイス [6月2日、東京芸術大学体育館]」1984年
日本でのヨーゼフ・ボイス(1921-86)紹介は70年代に『美術手帖』等で始まり、80年のかんらん舎での個展を嚆矢として作品展示がなされ、90年代には清里現代美術館等の常設美術館の誕生へ至っている。
国際交流基金による『行為と創造』展(82年)への招聘が健康上の理由で中止されたため、結果的に84年の来日が最初で最後となった。その際に記録された映像の未公開部分を発掘し、主要なトピックを長尺で公開していることは本展の功績だろう。また、国内所蔵の作品を集めた展示としては過去最大の規模であり、会場配布の出品リストに解説集を付す配慮もなされている。
「ボイス来日」と「日本のボイス(作品)」という、展覧会名にも並んだ上記ふたつの主題に加えて、ボイスがニッカウヰスキーのTVCMに出演し、西武美術館による招聘が巨大資本への迎合と批判されるバブル前夜/メセナ前夜の日本を検証すると同時に、シンポジウムやパフォーマンス等の関連企画による残響の現在化も目されており、造形作品、来日記録映像、関係者の証言、CM映像・年表等の資料類、そして関連企画という5つの内容が、各展示室に各々適った形式で配置されている。

『Beuys in Japan:ボイスがいた8日間』2009年 水戸芸術館現代美術ギャラリーでの展示風景
撮影:松蔭浩之 写真提供:水戸芸術館現代美術センター
この「多角的な検証」(フライヤーより)において、映像資料と作品は互いの参考として平行したまま並置されたことで、本展の眼目が「ボイスの作品や活動を、日本との関係を通して読み解く」(同上)のではなく、むしろ「ボイスを通して日本を読み解く」ことに収斂したように、筆者には見えた。歴史化されつつある彼の芸術行為を展覧会という形で検証する困難は国を問わないが、個々のコレクションが形成された経緯や、国外での日本人との交流を含む60年代から没後に至る関係史など、周到に行われたであろう調査の成果をより広範な受容史として示してもらえたならば、個人の生に作用することで社会彫刻へと至らしめんとするボイスの芸術と理念にとって、そして日本にとっての、そもそもの来日の必然性こそが検証されたのではなかっただろうか。
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フォトレポート:Beuys in Japan:ボイスがいた8日間
おすすめ展覧会:Beuys in Japan:ボイスがいた8日間
水戸芸術館 現代美術ギャラリー
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文:三本松倫代(神奈川県立近代美術館 学芸員)

安齊重男「ヨーゼフ・ボイス [6月2日、東京芸術大学体育館]」1984年
日本でのヨーゼフ・ボイス(1921-86)紹介は70年代に『美術手帖』等で始まり、80年のかんらん舎での個展を嚆矢として作品展示がなされ、90年代には清里現代美術館等の常設美術館の誕生へ至っている。
国際交流基金による『行為と創造』展(82年)への招聘が健康上の理由で中止されたため、結果的に84年の来日が最初で最後となった。その際に記録された映像の未公開部分を発掘し、主要なトピックを長尺で公開していることは本展の功績だろう。また、国内所蔵の作品を集めた展示としては過去最大の規模であり、会場配布の出品リストに解説集を付す配慮もなされている。
「ボイス来日」と「日本のボイス(作品)」という、展覧会名にも並んだ上記ふたつの主題に加えて、ボイスがニッカウヰスキーのTVCMに出演し、西武美術館による招聘が巨大資本への迎合と批判されるバブル前夜/メセナ前夜の日本を検証すると同時に、シンポジウムやパフォーマンス等の関連企画による残響の現在化も目されており、造形作品、来日記録映像、関係者の証言、CM映像・年表等の資料類、そして関連企画という5つの内容が、各展示室に各々適った形式で配置されている。

『Beuys in Japan:ボイスがいた8日間』2009年 水戸芸術館現代美術ギャラリーでの展示風景
撮影:松蔭浩之 写真提供:水戸芸術館現代美術センター
この「多角的な検証」(フライヤーより)において、映像資料と作品は互いの参考として平行したまま並置されたことで、本展の眼目が「ボイスの作品や活動を、日本との関係を通して読み解く」(同上)のではなく、むしろ「ボイスを通して日本を読み解く」ことに収斂したように、筆者には見えた。歴史化されつつある彼の芸術行為を展覧会という形で検証する困難は国を問わないが、個々のコレクションが形成された経緯や、国外での日本人との交流を含む60年代から没後に至る関係史など、周到に行われたであろう調査の成果をより広範な受容史として示してもらえたならば、個人の生に作用することで社会彫刻へと至らしめんとするボイスの芸術と理念にとって、そして日本にとっての、そもそもの来日の必然性こそが検証されたのではなかっただろうか。
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