「商品が主役の劇場」というコンセプトで展開されるメゾンエルメスのウィンドウディスプレイ。
「救世主エルメスの伝説」というタイトルのウィンドウで、2010年の幕開けを飾ってくださった藤原康博さんに今回の制作にまつわるお話を伺ってみました。
Q. ウィンドウをプランする中で最も意識されたこと、悩まれたことなどがありましたら教えてください。
A. ウィンドウの趣旨について理解を深めるため、エルメスの歴史についてリサーチすることを促されました。その歴史はとても興味深く、発案に至る多くのヒントが隠されていました。それらを踏まえてプランニングする上で意識したことは「更地の状態で始める」でした。自身の作品制作時の思考を一旦断ち切ることが重要だと考えたからです。与えられたモノの中から何を引き出すことが出来るのか、それをとても意識しました。
Q. 今回、大きな馬がビーズで覆われています。このようなビーズを用いた作品を制作されていますが、 その意図を教えてください。
A. 作品を制作する上で取り扱う対象の形は基本的に認識しやすいものを選択しています。例えば、家、小人、山、教会等一目でわかるシンプルな形体です。それらありふれた形体の表面を異物で覆い尽くすことによって新たなイメージを産み出すことを狙っています。
Q. ご自身のアート作品制作と、ウィンドウの制作において、もっとも違いが大きいと感じられたことは何ですか? また、ウィンドウ制作でおもしろいと感じられたことは?
A. 当たり前のことですが、やはり商品とテーマがあることです。自身の作品制作もウィンドウ制作もリサーチは必要なのですが出発点が大きく違うなと感じました。ただ、とても自由度が高かったので、いわゆるウィンドウの制作とは大きく違うなとも思いました。良いと思った点は、多くの人に開かれた場所に展示できることです。たまたま通りかかった人の眼に飛び込む可能性があるというのはとてもエキサイティングな環境だと思います。
Q. ウィンドウでは、ご自身のプランの中に、エルメスの商品が組み込まれていくわけですが、 制作上のコラボレーションともいえるこのプロセスの中で感じられたことは?
A. とても強く感じたことは、商品と作品の双方がコラボレーションすることで想像以上の効果が生まれるということです。自身の作品制作の中で行われる模索する行為とは違う、全ての条件を整えた上で目標のポイントめがけてランディングするような新鮮な感覚でした。
Q. 完成したウィンドウをご覧になって感じられたことを教えてください。
A. セッティング当日、バラバラだったピースが1つになった瞬間ディスプレイ全体に新しい生命が宿ったように感じたのを覚えています。何度も確認を繰り返して仕上がりを想像していましたが、実際の展示を終えてみるとその想像を遥かに越えた結果が眼前に広がりました。あらためて商品と場所の力を痛感する瞬間だったと思います。
救世主エルメスの伝説 – 藤原康博↓↓