次回展『le fil rouge』アーティストのプロフィール

参加アーティスト:


Courtesy Cheim & Read, New York
Photo: Brian Buckley

ガーダ・アメール (Ghada Amer / 1963年エジプト、カイロ生まれ)

「女性の絵画制作の方法を探究」するため刺繍を取り入れ、その方法として、本来は男性の視線を満足させることを目的とするポルノ雑誌に登場する女性の写真を使用しています。絡まり合う糸でモチーフを曖昧にし、ポルノ雑誌の写真とほとんど分からないようにすることで、さまざまなステレオタイプやタブー、とりわけ女性の歓びに関するものに問いを投げかけています。(ミュンヘン、東京)


All images copyright Nick Morrish, British Airways

トレイシー・エミン (Tracey Emin / 1963年イギリス、ロンドン生まれ)

今回のエキシビションでは、ミュンヘンで新作を披露。歴史的に男性アーティストが線描で表現してきた女性のヌードから伝わる刺激的な印象を、これまでも制作してきた大きな刺繍からなる肉体で表現しています。刺繍という伝統的に女性のものであった技術を用いつつも、エミンは自身の表現手法に刺繍を取り入れたのは「針仕事がずっと好きだった」からだとして、フェミニストの伝統のなかに位置付けてはいません。(ミュンヘン)


Photo: Josh Wright

マイケル・レデッカー (Michael Raedecker / 1963年オランダ、アムステルダム生まれ)

絵画と裁縫、つまり「ハイアート(高級芸術)とロウアート(大衆芸術)」を組み合せ、前者がもたらす大幅な自由度と、後者が重視する機能性および正確な手順の2つを取り入れています。絵具を用いることで統一した色調を生み出しながら、モチーフや質感は、糸を刺繍したり糊付けすることで表現しています。(ミュンヘン、東京)


Courtesy Cheim & Read, New York
Photo: Brian Buckley

イザ・メルスハイマー (Isa Melsheimer / 1968年ドイツ、ノイス生まれ)

「建築」を作品の中心的テーマの1つとして活動しています。パリのエスパスで作家が制作した新作インスタレーションは、多くの建築家が魅了されてきた双曲放物面を糸で再現したものです。双曲放物面は、建築家のヤニス・クセナキスが、1958年のブリュッセル万国博覧会のために設計し建設されたフィリップス・パビリオンの基礎となっています。メルスハイマーは、糸を立体的な空間で壮大に用いることで、クセナキスを象徴する偉業に敬意を表するとともに、糸という素材の特質を称えています。(パリ)


Fred Sandback, Annemarie Verna Galerie, Zurich, 2000
Photo: Thomas Cugini, Zurich

フレッド・サンドバック (Fred Sandback / 1943年アメリカ、ブロンクスビル生まれ。2003年ニューヨーク没)

フレッド・サンドバックは、30年以上にわたり糸を表現手段として制作活動を続けました。エスパス ルイ・ヴィトン パリで披露される彼の作品が象徴するように、糸という最もミニマルな媒体を表現手段として用いることで、部屋を満たすほどのスケールの大きな作品を生み出すことが可能となりました。今回展示されるサンドバックの代表作品からは、糸に対する作家の妙技が見て取れ、また空間とボリュームという現象学的経験を詳細に伝えています。(パリ)


Courtesy of Atelier Chiharu Shiota
Photo by Sunhi Mang

塩田千春 (Chiharu Shiota / 1972年日本、大阪生まれ)

パリのエスパスにて、自身が追求する生と死というテーマを圧倒的なまでに表現した作品を披露。空間にぶら下がり、糸が絡まった電球が点滅を繰り返します。糸を使用する理由として、彼女は「手工芸とは何の関係もなく、単に『絵画で描かれる線と同じような微かな息吹や空間』を追求できるからだ」と述べています。(パリ)


Photo: Laurent Edeline

タティアナ・トゥルヴェ (Tatiana Trouvé / 1968年イタリア、コゼンツァ生まれ)

エスパス ルイ・ヴィトン 東京にて、250本の測鉛線が床すれすれに、どれも垂直なラインを描くことなく吊るされているインスタレーションを披露します。彼女が生み出す他の作品同様、不合理性と合理性、可能性と不可能性の間の境界線を曖昧にするインスタレーションとなっています。(東京)


©Christophe Vander Eecken

ハンス・オプ・デ・ベーク (Hans Op de Beeck / 1969年ベルギー、トゥルンハウト生まれ)

今回新たに制作した映像の中で初めてパペット(操り人形)を用い、今回のテーマである「赤い糸」を、アジアの神話に由来する解釈で表現しています。これまでの作品同様に、現代社会の複雑性や、生と死の意味という普遍的な問いを追求した作品です。(ミュンヘン、パリ、東京)

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