第53回ヴェネツィア・ビエンナーレ超要約短評

2009.6.7-11.22
ジャルディーニ、アルセナーレ(ヴェネツィア) 
http://biennalecorporate.ogilvy.it/en/art/index.html

文:小崎哲哉(編集部)

今回のテーマは「Making Worlds」。芸術監督のダニエル・バーンバウムは「ネルソン・グッドマンの『世界制作の方法』(邦訳はちくま学芸文庫)にインスパイアされた」と述べているが、期せずして訪れた経済危機の影響もあってか、「世界」に内省的に向き合う作品が多い。前回に比べてビエンナーレ本体の予算は141万ドル減少。十分な資金調達ができなかった国も多く、全体的に地道(地味?)な印象だ。

アーティスティックディレクターのダニエル・バーンバウム(左)と、ビエンナーレ財団代表のパオロ・バラッタ(6/4、テアトロ・ピッコロでの記者会見)

「金獅子賞 最優秀パビリオン賞」は、大御所ブルース・ナウマンの米国館が獲得。バーンバウム企画のテーマ展参加者を対象とする「金獅子賞 最優秀作家賞」はドイツのトビアス・レーバーガーに、「銀獅子賞 期待される若手作家賞」はスウェーデンのナタリー・ユールベリに授与された。業界人が最も話題にしたのは、ほかならぬジャルディーニで撮影したスティーヴ・マックィーンの同名映像作品「Giardini」だろう(英国館)。

米国館

 アジア=パシフィック(AP)勢では、パビリオンをテントで覆って完成度の高い写真・映像展示を行ったやなぎみわ(日本館)、匂いを用いたインスタレーションのヤン・ヘギュ(韓国館)、砂漠で撮影した映像のショーン・グラッドウェル(オーストラリア館)らが好評。シンガポール館のミン・ウォンは金獅子賞審査員による特別表彰のひとりに選ばれた。バーンバウムのテーマ展に参加したAP出身作家はオノ・ヨーコ(「生涯の功績への金獅子賞」受賞)、ポール・チャン、ゴンカル・ギャツォら少数だが、日本の「具体」が選ばれていて、同グループへの国際的関心が引き続き高いことを示している。

南嶌宏コミッショナーとやなぎみわ

 欧州パビリオンで話題となったのは、記憶をテーマとした映像&オブジェのフィオナ・タン(オランダ館)、移民の状況を影絵的なビデオで活写したクシシュトフ・ウディチコ(ポーランド館)、パビリオン外部の自然を内部と接続して現実とアートの関係を問うたロマン・オンダク(チェコ&スロヴァキア館)、架空のコレクターの家という設定で館内を飾り立てたエルムグリーン&ドラッグセット(デンマーク&北欧館)など。当の「コレクター」は同館の外にあるプールで死体となって水に浮かんでいるが、これももちろん作品だ。

フィオナ・タン

 同時期開催イベントでは、陳界仁(チェン・ジエレン)や余政達(ユー・ゼンター)らの近代化と記憶をめぐる映像・写真作品を集めた台湾館(自主参加)、前回に続いて性と死を主題とした巨大インスタレーションのヤン・ファーブルなどが注目に値する。ビエンナーレと時期を合わせて開館したフランソワ・ピノーの新美術館「プンタ・デラ・ドガーナ」も、とんでもなく豪華なコレクションで見逃せない。(Oz)

ヤン・ファーブル「The Brain」

特集:日本発、ヴェネツィアへ!
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ヴェネツィア・ビエンナーレ関連動画
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