アルスエレクトロニカ 文化庁メディア芸術祭ウィーン展

アルス・エレクトロニカ・フェスティバル
2009年9月3日(木)〜8日(火)
リンツ市内各所
http://www.aec.at/festival_about_en.php

文化庁メディア芸術祭 ウィーン展
2009年9月12日(土)〜20日(日)
ミュージアム・クォーター(ウィーン)
http://plaza.bunka.go.jp/vienna/index.html

文:フィリップ・コドニエ、福永博子

アルス・エレクトロニカ・フェスティバルはメディアアート界でもっとも重要なイベントであるが、意外なほど小さな工業都市、リンツで毎年行われている。開催30周年を迎えた今年、街中のさまざまな場所にある会場には5日間で72,500人の人々が集まった。


オープニングにはパフォーマンスが新しいアルス・エレクトロニカ・センタービルの前で行われた

2009年の芸術祭はこれまでになく大衆向けの内容となった。アート、テクノロジーの実験、電子音楽の演奏などを取りまぜ、古典的な美術展覧会というよりエンターテインメントイベントと言えるものだった。草原真知子(早稲田大学教授)が企画し、明和電機、クワクボリョウタ、八谷和彦、岩田洋夫らが参加した『デバイスアート』展にも同じ雰囲気が漂っていた。これは岩田が科学者とアーティストからなる研究グループとともに2004年に始めたプロジェクトの成果でもある。デバイスアートは「ハイアート」に対して単なる技術的装置とされる場合もあるが、日本のメディアアートの特徴であることは間違いない。あるものはユーモアがあったり、詩的であったりする。シンプル過ぎる、あるいはアートとは言い難いものもある。

例えばクワクボリョウタの「ニコダマ」はミニマルだが印象的だ。同時に瞬きするふたつの目玉を、物の表面に貼付けることで人格化し、ゴミ箱のようなものですら顔のように見える。


左:クワクボリョウタ「ニコダマ」 2009年
右:岩田洋夫「メディア・ヴィークル」2009年

バーチャルリアリティの先駆者、岩田洋夫の「メディア・ヴィークル」では、鑑賞者は現実世界から完全に遮断されるが、外界から映像と音が送り込まれるため、まさに「水槽の中の脳」とも言える体験を味わうことになる。

1997年から毎年東京で行われ、アルス・エレクトロニカでも小ブースを出展した『文化庁メディア芸術祭』は、同フェスティバルが閉幕した数日後にウィーン市内の別会場で開催された。テーマを「OTO(音)」とする展示は、ここでも日本のポップカルチャーと技術革新の見本市として理解されるべき内容だった。

会場は「音を奏でる」「音を読む」「音を観る」の3つのセクションに分けられていた。最初のセクションでは、音を発生させる装置を展示し、『デバイスアート』展にも参加した作家の作品が観られた。次の「音を読む」セクションでは、音楽の影響が見られる漫画として、海外でも人気の高い『NANA』などが並んだ。「音を観る」のセクションでは、映像と音楽が強く結びついているミュージックビデオが上映された。これは20世紀美術に存在した「共感覚(シネステージア)」のモダニスト的探求を一般向けにしたバージョンと見なすことができるだろう。


明和電機「魚立琴」1999年、「Seamoons」2004年
©Yoshimoto Kogyo Co., Ltd. / Maywa Denki

Copyrighted Image