2010年記憶に残るもの 南條史生

第8回光州ビエンナーレ「10000 Lives」
2010年9月3日-11月7日


Carl Andre, War & Rumors of War, (2002), 90 Australian hardwood timbers, 90 x 29 x 29 cm each / 90 x 379 x 350 cm overall. Wall: Gu Dexin, 2009-05-02, (2009), 54 wooden panels, paint, red lacquer, dimensions variable
きわめて明快なテーマと、慎重でありながら幅の広い作品選択、各作品の質の高さが感じられ、国際展と言うよりは、美術館の中で開催される周到なテーマ展の趣を見せた。
関連記事: レビュー、フォトレポート part 1, part 2, part 3, part 4

内藤礼、西沢立衛による豊島美術館の開館


Image credit: Both: Noboru Morikawa, courtesy Benesse Art Site Naoshima.
極限まで追い詰めた繊細さと洗練、圧倒的な独自性、確固とした美学と環境との対話が、世界にないアートの聖地を作り出した。

森村泰昌展・なにものかへのレクイエム −戦場の頂上の芸術−、森村泰昌モリエンナーレ/まねぶ美術史
3月11日-5月9日


Front: 田中敦子, 「電気服」(オリジナル1956/再制作1986). Back: 森村泰昌, 「光と熱を描く人/田中敦子と金山明のために」, (2010)
森村の集大成とも言える展覧会で秀逸であった。
また高松市美術館で開催された「瀬戸内国際芸術祭2010連携 森村泰昌モリエンナーレ/まねぶ美術史」展も、彼の生い立ちを語るユニークな展覧会で、これら二つの展覧会があいまって、森村の芸術世界が十二分に紹介され、インパクトを持つ年となった。
関連記事: レビュー(東京会場)フォトレポート(愛知会場)森村泰昌とのインタビュー仲正昌樹「『私』を構成する映像」

東京アートミーティング  トランスフォーメーション
2010年10月29日-2011年1月30日
東京都現代美術館


Apichatpong Weerasethakul – Still from Tropical Malady (2004), courtesy Kick the Machine Films.
テーマ性を持ちながらも、現代美術の「今」を国際的な幅の広い作家選択で紹介し、インフォーマティブで、楽しく、また考えさせられる展示となった。

現代台湾幾何学抽象展
2010年11月13日-12月12日
誠品書店ギャラリー、台北


Image credit: Installation view of “Variations of Geometric Abstraction in Taiwan’s Contemporary Art,” photo Fumio Nanjo.
台北の誠品書店は、ますます発展し、最近では百貨店に発展した5階建てのビルに300平米規模のギャラリーを構えているが、ここで、幾何学抽象の作品を集めた展覧会を開催した。台湾の作家9名によるものだが、台湾に今これほど幾何学抽象があるのかと驚いた。明快な形と色彩。今や60年代の作風のように思われているが、ひょっとすると、アジアの一隅から、全く別の発想の幾何学抽象の波が起こるのだろうか、とさえ思わせる。ある意味でフォーマリスティックな美術も悪くはないと思わせられる展示だった。

カイロ・ビエンナーレ2010
2010年12月12日-2011年2月12日


Image credit: Amal Kenawy, photo Fumio Nanjo.
カイロで続けているビエンナーレ展。日本人が参加したことも多々あるのだが、これまで保守的な傾向が強く、国際的には評価されていなかった。
しかし2008年からエジプト政府内で人事の刷新があり、その結果ディレクターが若返り、内容的に向上し始めた。今回ディレクターは32歳のイハブ・エル・ラッバン(Ihab el-Labban)。作家の半分はアラブ系、その他の作家は基本的にヨーロッパ、アメリカが多い。私は審査員として参加したが、表現言語は急速に国際的な現代美術の表現言語となってきている。受賞したのは、キッチンを作り、映像を出し、食卓を飾り、ひとつのインターアクティブな空間を作り出したアマル・ケナウイ。社会と個人、パブリックとプライベートの対比をリレーショナル・エステェティックを用いて表現した。

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