遠藤利克『空洞説―水の座』@ SCAI THE BATHHOUSE


「足下の水」2003年、インスタレーション、 於:越後松之山「森の学校」、新潟

遠藤利克『空洞説―水の座』
2015年7月3日(金)-8月1日(土)
SCAI THE BATHHOUSE
http://www.scaithebathhouse.com/
開廊時間:12:00-18:00
休廊日:日、月、祝

SCAI THE BATHHOUSEでは、木、水、火など、原初的な物質を用いた哲学的な思索に富む作品により、日本を代表するアーティストとして知られる遠藤利克の個展『空洞説―水の座』を開催する。

遠藤利克は1950年岐阜県生まれ。1972年に名古屋造形芸術短期大学を卒業。70年代より東京を中心に発表を重ね、87年にはドクメンタ8、88年には第43回ヴェネツィア・ビエンナーレに参加、89年から90年にかけて個展が北欧諸国を巡回する。90年には第44回ヴェネツィア・ビエンナーレの日本館に選出され、炭化させた木材を使用した巨大な彫刻「エピタフ」や「泉」を発表する。その後も、東高現代美術館の個展(1991)をはじめ、数多くの個展を開催、企画展、国際展に参加している。

SCAI THE BATHHOUSEでは、2005年に個展『空 洞 説』を開催。このとき遠藤が主題に掲げた「空洞説」の「空洞」とは、何もない空虚な状況ではなく、すべてを吸い込む引力と魔力のあるところ、また無限の幻想の根源を意味し、日常の境界線を越えた吸引と放出のちからを孕む場として捉えられ、近年の遠藤の制作活動における重要な概念として探究されている。

本展では、ギャラリーの床に穴が掘られ、水を満たした金属製の箱が埋め込まれ、それに対峙するように壁に柩のような空の箱を取り付けた新作インスタレーションを発表する。鑑賞者は、水によって強調された地中の空洞を感じながら、目の前の空の箱を見る。いわば空洞の上で、空洞をみつめるという状態に置かれることで、ただ見ることを越えた身体的な感触が立ち現れ、遠藤の提示する「空洞説」の世界へと引き込まれていくことになる。さらに、副題の「水の座」が示すように、足の下の水を湛えた空洞はそれによって水平性が強調され、目の前の壁面の水平性が強く意識される。この水平と垂直の関係は、今どこに自分が存在しているのかを考えさせる装置となり、鑑賞者は足の下と目の前が空洞であるがゆえに、感覚は天文学的なスケールにまで引き延ばされ、最終的には宇宙の中で自分が今どこに立っているのかという問いにまで行き着くことになるだろう。

なお、7月18日からはじまる東京都現代美術館の『MOTコレクション 戦後美術クローズアップ』では、遠藤の「泉」(1991)が14年ぶりに公開される。

MOTコレクション 戦後美術クローズアップ
2015年7月18日(土)-10月12日(月、祝)
東京都現代美術館
http://www.mot-art-museum.jp/

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