シンガポール・ビエンナーレ2011 開幕


Installation view of Candice Breitz Factum(2010), 7 dual channel and one three-channel video and sound installation, Duration Variable, photo by ART iT

 

2011年3月13日、第3回目となる『シンガポール・ビエンナーレ2011』が開幕した。第1回、第2回と続けてアーティスティック・ディレクターを務めた南篠史生を引き継いだのはシンガポール人アーティストでありキュレーターでもあるマシュー・ヌイ。また、彼を支えるふたりのキュレーターはブリスベンのクイーンズランド・アートギャラリーのキュレーター、ラッセル・ストーラーとマサチューセッツ州にあるピーボディ・エセックス博物館のキュレーター、トレヴァー・スミスである。

30カ国から63人のアーティストが参加し、シンガポール美術館、シンガポール国立博物館および新たな場所として旧カラン空港他で161作品が展示されており、そのうち29人5グループが新作を発表している。

今回は「オープンハウス」という副題がついており、これはテーマとしてではなく、アーティスト、鑑賞者双方に対しての招待状という位置づけとなっている。シンガポールではマレー正月のハリラヤ、ヒンドゥー教の祝日ディーパヴァリ(光の祭)および中国の旧正月である春節などに人々が自宅を開放して客を招き入れ、一緒に食事をしたり話をしたりする風習がある。こうした風習によって、より開かれたコミュニケーションや文化の交流が可能になっており、そうした交流を、社会的・政治的なヒエラルキー、あらゆる意味での境界を超えたコミュニケーションや交流から生まれる現代美術と重ね合わせている。国家やグループ、都市や個々人といった境界を超えて、アーティストによる日常的な制作の実践を通じてわれわれがどのように境界を超えていくか、交流を続けていくかを重層的かつ多角的な視点で見せることを試みる。

新作のうち、注目を集めるのは日本人アーティスト西野達の『マーライオン・ホテル』である。シンガポールの観光における目玉のひとつであるマーライオン像を囲み豪華なホテルを造り上げた。会期中の4月4日から5月5日までの32日間は、ホテルとして機能し、宿泊客を受け入れる(ただし、すでに予約で全日満室)。またマーサ・ロスラーが地元のグループと行ったガーデニングプロジェクトは会期終了後も地元の人々によって続けられる社会的な活動の実践である。
他の参加作家はミン・ウォン、マイケル・リン、マイク・ネルソン、キャンディス・ブレイツ、ユリアン・ゲーテ、ライアン・トゥリカーティン、サイモン・フジワラなど。日本からは西野の他、金氏徹平が参加している。

 

『シンガポールビエンナーレ2011 オープンハウス』
2011年3月13日-5月15日
会場:シンガポール美術館およびSAM 8Q (別館) 、シンガポール国立博物館、旧カラン空港、マリーナ・ベイ
会期中無休(10:00-19:00)
http://www.singaporebiennale.org/

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