mixrice (Cho Ji Eun, Yang Chul Mo)
韓国国立現代美術館は、韓国現代美術における最も重要な賞のひとつとして知られる韓国美術家賞をチョ・ジウンとヤン・チョルモのアーティストコレクティブ「mixrice」に授与すると発表した。
mixrice(ミックスライス)は、チョ・ジウンとヤン・チョルモのふたりによるアーティストコレクティブ。韓国社会の影として存在する外国人移住労働者との協働を通じて、(不法滞在の)移住労働者の人権や不当な扱いの問題に対する軽薄な反省ではなく、現代社会における多様な「移住」の条件、または「移住」の痕跡や足跡、その道のりや結果、多層的な方法による記憶の探求に焦点を当てた、さまざまな活動を展開している。2006年より、南楊州市の京畿道磨石地区の移住労働者やハンセン病患者の共同体とともに、同地域の記憶を残す活動や文化的活動を継続している。そのほか、急速な都市化とともに移植されていく植物の「移住」プロセスや、強制的に「移住」させられた人々の物語などのリサーチも継続している。これまでに、アジア・パシフィック・トリエンナーレ7(2012)や第6回光州ビエンナーレ(2006)をはじめ、韓国国内外の数多くの展覧会に参加している。日本国内では、アジア・ビデオアート・コンファランス2003(ポーラ ミュージアム アネックス、主催:ビデオアートセンター東京)、『民衆の鼓動−韓国美術のリアリズム1945-2005』(新潟県立万代島美術館、2007)に出品。あいちトリエンナーレ2016のコラムプロジェクト「コレクティブ・アジア−オキュパイ/生存権/ユーモア」のイベントに参加している。今回の審査対象となった展覧会では、再開発のために移植を余儀なくされた植物の調査に基づく、写真や映像、インスタレーションを通じて、現代社会における移民という現象がもたらしてきたさまざまな問題を提示している。
5度目の開催となった韓国美術家賞2016では、mixriceのほか、キム・ウル、バク・スンウ、ハム・ギョンアが最終候補に選ばれている。審査委員は、バルトメウ・マリ・リバス(韓国国立現代美術館ディレクター)、キャロライン・クリストフ=バカルギエフ(カステロ・デ・リヴォリ現代美術館チーフ・キュレーター)、蔵屋美香(東京国立近代美術館美術課長)、ユン・チェガブ(HOW美術館ディレクター)の4名が務めた。
韓国美術家賞は、2012年に前身の「Artist of the Year」を引き継ぐ形で、韓国国立現代美術館とSBS文化基金によって創設された。韓国現代美術に多大なる貢献をもたらし、制作活動を通じて将来的なヴィジョンを創り出す才能を持ったアーティストの発掘、支援を目的としている。推薦委員に選ばれた候補者4名には、同美術館で開催する展覧会に出品する新作制作費4000万ウォン(約374万円)がSBS文化基金より支給され、会期中に受賞者が発表される。受賞者には賞金1000万ウォン(約93万円)と自身の制作に関するドキュメンタリー映像の制作依頼の権利が与えられる。歴代の受賞者には、ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ、コン・ソンフン、ノ・スンテク、オー・インファンがいる。(受賞年順)
なお、韓国国立現代美術館とSBSファウンデーションは、歴代の韓国美術家賞受賞者および最終候補のアーティストの海外での活動を継続的に支援するために海外活動基金を設立。SBSファウンデーションは、4年以内に国外で発表する作品の制作費に対して、上限2000万ウォン(約187万円)の支援を行なう。昨年末の審査の末、イム・ミヌク、ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ、イ・スギョン、ハム・ヤンア、チョ・ヘジョンが支援を受けることが決定している。
韓国美術家賞:http://koreaartistprize.org/
韓国美術家賞2016
2016年8月31日(水)-2017年1月15日(日)
韓国国立現代美術館 ソウル館
http://www.mmca.go.kr/
出品作家:キム・ウル、バク・スンウ、ハム・ギョンア、mixrice
歴代受賞者
2015|オー・インファン
2014|ノ・スンテク
2013|コン・ソンフン
2012|ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ