ロンドン、現代美術オークション結果

2012年2月、ロンドンのクリスティーズとサザビーズで現代美術オークションが開催された。世界的な経済危機にも関わらず、どちらも売上は好調で、富裕層の購買力には影響していないことが改めて浮き彫りになった。
また、経済危機のリスクを分散させるため、金融商品の代わりとして美術に資金が集まっている。投資銀行がポートフォリオに、安定した価値を持つ商品として、美術品を組み込む動きが加速し、評価がすでに定まった高額の作品が更に高額になるという現象が起きている。コレクションを作るためというコレクターから、投資家や投資ファンドの割合がより高まってきているようである。

クリスティーズ – ポストウォー/コンテンポラリー・アート・オークション

クリスティーズ・ロンドンは、2012年2月9日から15日にかけて5つの現代美術オークションを行なった。全5オークションの売上は総額1億951万4400ポンド(約138億4317万円)に達し、クリスティーズ・ロンドンによる現代美術オークションセッションにおける史上最高額を記録した。そのうち、14日のイブニング・オークション[夜の部]だけでも65点中58点が総額8057万6100ポンド(約101億8522万円)で落札された。わずか一時間半以内のハイペースのオークションであったと報じられている。

イブニング・オークションで最も高額の2132万1250ポンド(約26億9511万円)で落札されたのはフランシス・ベーコン「Portrait of Henrietta Moraes」(1963)。友人でモデルのヘンリエッタ・モラエスの肖像画で、30年近くニューヨークの個人コレクションにあったものがこの度初めてオークションに出品された。テート・ギャラリーでの回顧展の翌年、ニューヨークのグッゲンハイム美術館でのアメリカ初の大規模個展と同年の作品であり、この年に制作されたベーコンの作品の多くは各国の美術館に収蔵されている。

次に高額で落札されたのはゲルハルト・リヒター「Abstraktes Bild」(1994)。500万~700万ポンド(約6億3202万~8億8483万円)の予想額を大きく上回る989万7250ポンド(約12億5106万円)で落札。スクイージーを用いて描いた緑・青・薄紫の抽象画で、裏面には「811-1」の数字が記入されている。1995年のアンソニー・ドフェイ・ギャラリー(ロンドン)での個展に出品された作品である。

その次は350万~500万ポンド(約4億4242万~6億3202万円)の予想額を超える530万5250ポンド(約6億7061万円)で落札されたニコラ・ド・スタール「Agrigente」(1953)。ド・スタールのオークション出品作品としては史上2番目の高額を記録した。抽象的な風景画のシリーズの中で最も大きな作品のひとつで、1953年8月にシチリアのアグリジェントからプロヴァンスに戻り制作したものである。ド・スタールとしては珍しく裏面に署名し、題名と日付も記入していることから特別な作品であることが見受けられる。

4番目に高額で落札されたクリストファー・ウール「Untitled」(1990)は、ウールの作品の最高落札額の世界記録を達成した。250万~350万ポンド(約3億1601万~4億4242万円)を上回る491万3250ポンド(約6億2106万円)で落札。大文字で「FO/OL」と書かれた作品である。

サザビーズ – コンテンポラリー・アート・オークション

サザビーズ・ロンドンは、2012年2月15日と16日に現代美術オークションを行なった。15日のイブニング・オークションには20ヶ国からの入札者が参加し、総額5068万8450ポンド(約64億727万円)を売り上げた。9割以上の作品が落札され、そのうち9点は100万ポンド(約1億2640万円)以上、21点は100万ドル(約8030万円)以上で落札された。

イブニング・オークションで特筆すべきはゲルハルト・リヒターの作品。クリスティーズの出品作品の落札額ほどではないが、全6点が総額1765万5500ポンド(約22億3174万円)で落札、そのうち4点が同オークションでの落札額のトップ10入りを果たした。リヒターは、昨年11月にサザビーズ・ニューヨークで「Abstraktes Bild」(1997)が2080万2500ドル(当時:約16億1000万円、現在:約16億7048万円)で落札されたことが記憶に新しい。

最も高額で落札されたリヒター「Abstraktes Bild」(1992)は、300万~400万ポンド(約3億7921万~5億562万円)の予想額に対し485万7250ポンド(約6億1398万円)で落札。初めてオークションに出品された作品であり、裏面に「768-4」の数字が記入されている。

次に高額で落札されたのはリヒター「Eis (Ice)」(1981)。200万~300万ポンド(約2億5276万~3億7921万円)の予想額を上回る429万7250ポンド(約5億4309万円)で落札。氷河と思しき風景画で、リヒターによる風景画のオークション最高落札額を記録した。

その次には、リヒターの作品とジャン=ミシェル・バスキアの作品が同額で落札。リヒターの赤い抽象画「Abstraktes Bild (Rot)」(1991)の予想額は250万~350万ポンド(約3億1601万~4億4242万円)、バスキア「Orange Sports Figure」(1982)の予想額は300万~400万ポンド(約3億7921万~5億562万円)。それぞれ407万3250ポンド(約5億1477万円)で落札された。バスキアの作品はオークション前の展示期間中に、UVライトを使わないと見えない透明のインクで署名されていることがサザビーズのスタッフにより発見された。

バスキアの作品は他に2点出品され、そのうち「Tuxedo」(1983)は25万~35万ポンド(約3159万~4423万円)の予想額を大きく上回る72万4450ポンド(約9156万円)で落札された。10のエディションで作られたカンヴァスにシルクスクリーンの作品である。

また、A.R.ペンク「Methode, Fertigzuwerden」(1965)が9万~12万ポンド(約1137万~1517万円)の予想額を大幅に上回る32万5250ポンド(約4110万円)で落札、アルベルト・オーレン「Untitled」(1989)が20万~30万ポンド(約2528万~3791万円)の予想額を超える44万5250ポンド(約5627万円)で落札され、いずれも同作家のオークション最高落札額を記録した。

全ての作品の詳細とオークション結果はクリスティーズとサザビーズの各ウェブサイトを参照。落札価格は買手手数料を含む。

Christie’s – Post-War and Contemporary Art Evening Auction
http://www.christies.com/LotFinder/searchresults.aspx?intSaleID=23632

Sotheby’s – Contemporary Art Evening Auction
http://www.sothebys.com/en/auctions/2012/contemporary-art-evening-auction-l12020/overview.html

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