2_安藤正子メールインタビュー [原美術館]

東京・原美術館より
(メールインタビュー第1回はこちら。)

世界に似た絵


「竜の背中」 2007年 パネル張りカンヴァスに油彩
ⓒMasako Ando Courtesy of Tomio Koyama Gallery

坪内:
画面の声は本当にうるさいんでしょうね。焦燥感が伝わってきます。
ところで、作品の主題はどのように生まれるのでしょうか?作品の種がたくさんあって、ぼうぼうの茂みになっていると仰ってましたが、そもそもどんなことに関心をもっていらっしゃるのですか。

安藤:
あらゆること。
それぞれに対するいろんな気持ち。
それらが心に散らばってる。

皆そうでしょう?

今朝あったこと、思い出した言葉。
読んだ新聞の記事。
牛乳の白さ、箸の直線、家族の表情やふとした会話、冷蔵庫に貼った写真や手紙。

人間のすること。
シンクロとか見てると笑ってしまう。
なんで人間ってこんな変なこと考えるんだろ。
ペットの亡骸をフリーズドライにするサービスが順調な伸び、とか。
人の孤独、フリーズドライっていう言葉の明るい響き。
椅子の足に毛糸で編んだ靴下。手入れされた犬や畑のすがた。
夢、詩や小説、歌。
または戦争、虐待。

自然のすること。
動植物のすばらしいかたち、美しさ、恵み。
災害。大災害。

などなど。
いろんな出来事と気持ちが混じり合って、いろんなモチーフのかたちを借り、
すっきりしたすがたでひとつにまとまる快感!
美しく奇妙で無情でユーモラス。
具体的でありながら抽象的。
世界に似た絵。
そういうものを作りたい、と骨を折り心を砕いています。

すっくと立ちたい。

坪内:
まるで安藤さんの言葉ひとつひとつから絵画のモチーフが立ち上ってくるようですね。ひとつひとつの作品が、その時その時に安藤さんが感じていた「世界」そのものということになるのだと思いますが、その「世界」を描くことと、すでにご説明いただいた、あのめくるめく制作方法とは不可分なのかしら。結果的に絵肌がつるつるになることで、「世界」が七宝のガラス釉の中や高輝度の液晶の中にそのまま閉じ込められているように感じられるのですが、ご自身ではどのように感じていらっしゃいますか?

安藤:
うーん。
自分としてはつるつるに仕上げよう!とかは意図していなくて、でも滑らかな画面の方が描きやすいというか、感覚に沿うので、、、。
それはドローイングでも同じで、マットサンダースという、少し黄みがかったようなピンクがかったような紙を使ってるのですが、ほんとは少し風合いのある方が表なのですが、裏の方が平滑なのでそちらを表にして使っていたり。
絵って油断するとすぐに、湿っぽい、内向きな、いやーな感じになるんですね。
画面がざらざらしてると、味とかすぐでちゃう。
モチーフや人の表情、またはその組み合わせでも、簡単にそうなります。
で、それから逃れたい。すっくと立ちたい。
いま坪内さんに聞かれて答えてるうちに発見したことですが、
描いてる内容も画面の質感も、もとをたどれば私の中の感覚の、同じところからきている!
みたいです。
ムネ、モモ、せせり、などとあったら、両方ムネ肉!みたいに。
でもそれもあたりまえのことかもしれません。


(安藤が当館に送ってくれた日常のスナップから)

(続く)

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