三島喜美代―未来への記憶 @ 練馬区立美術館


三島喜美代《20世紀の記憶》(部分)1984-2013年 耐火レンガに印刷 個人蔵
写真撮影:小川重雄 写真提供:美術資料センター株式会社

 

三島喜美代―未来への記憶
2024年5月19日(日)-7月7日(日)
練馬区立美術館
https://www.neribun.or.jp/
開館時間:10:00–18:00 入館は閉館30分前まで
休館日:月
展覧会URL:https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=202401281706414617

 

練馬区立美術館では、新聞やチラシなどの印刷物を陶に転写して焼成した立体作品をはじめ、大量消費社会や情報化社会への批評的な眼差しと、日々の暮らしの中から生まれる遊び心を備えた作品を発表してきた三島喜美代の個展「三島喜美代―未来への記憶」を開催する。

三島喜美代(1932年大阪生まれ)は、絵画を出発点に現代美術家としての活動をはじめ、60年代には新聞や雑誌などの印刷物をコラージュした作品やシルクスクリーンを用いた平面作品を発表していく。70年代に入ると表現媒体を一転、シルクスクリーンで印刷物を陶に転写して焼成する立体作品「割れる印刷物」を手掛ける。日々発行され、膨大な情報をあふれさせる印刷物と、硬く安定しているかに見えながら、割れやすく脆い陶という素材を組み合わせることで、氾濫する情報に埋没する恐怖感や不安感を表現した作品で注目を集める。その後、大量の新聞や雑誌がすぐに消費されてゴミとなるように、情報からゴミへと三島の問題意識も次第に移り、空き缶や段ボールなど身近なゴミを題材に陶で再現した作品、産業廃棄物を高温で処理した溶融スラグを素材とする作品を発表していく。近年は自ら集めた鉄くずや廃材を取り込んだ作品制作にも取り組んでいる。1960年代より国内外で作品を発表してきた三島だが、2005年には「前衛の女性 1950-1975」(栃木県立美術館)にも出品。2014年にはART FACTORY城南島にて1984年から取り組んできた《20世紀の記憶》の完成作を発表。ここ10年は国内外での評価も急速に高まり、2020年には京都国立近代美術館のコレクション展にて特集展示が組まれたほか、第10回アジア・パシフィック・トリエンナーレ(クイーンズランド州立美術館、ブリスベン、2021)、「The Flames: The Age of Ceramics」(パリ市立近代美術館、2021-2022)、「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力—世界の女性アーティスト16人」(森美術館、東京、2021-2022)などに出品。昨年は過去最大規模、国内の美術館では初となる個展「遊ぶ 見つめる 創りだす」を岐阜県現代陶芸美術館で開催した。

 


三島喜美代《Work-64-I》1964年 新聞、雑誌、油彩、板、額 京都国立近代美術館


三島喜美代《ヴィーナスの変貌V》1967年 アクリル絵具、コラージュ、シルクスクリーン、合板 個人蔵

 

本展は、初期の油彩画から、新聞、雑誌などをコラージュした絵画、陶にシルクスクリーンで印刷物を転写した立体作品、大型インスタレーション、産業廃棄物を素材に取り込んだ近作まで、約90点の作品を通して、70年にわたるキャリアを振り返る。注目の一点は、三島の代表作にして最大規模のインスタレーション作品《20世紀の記憶》(1984-2013)。20世紀の100年間から抜き出した新聞記事を転写した中古の耐火レンガ1万個を床に敷き詰めた本作は、その圧倒的なスケールを通じて、戦災とも情報洪水の果てともとれる廃墟のような光景を作り出す。1984年に制作を開始し、制作過程での部分展示を経て、2014年にART FACTORY城南島において完成作を披露。本展では、常設展示が続けられてきた同地を初めて離れて、フルスケールによる展観を試みる。

陶製の立体作品で知られる三島の制作活動の出発点であった絵画にも着目。1950年代の油彩画、1960年代以降の新聞や雑誌などをコラージュした作品、シルクスクリーンの技法を取り入れた作品など、活動初期に取り組んだ平面作品を一堂に会し、立体作品とも基底において繋がる技法、表現を概観する貴重な機会となる。

 


三島喜美代《Paper Bag(シリーズ)》1973-1980年 陶、転写 兵庫陶芸美術館


三島喜美代《バナナボックス》2007年 陶、転写、彩色 岐阜県現代陶芸美術館


三島喜美代《Work 17-POT》2017年 陶、転写、彩色 個人蔵

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