OPEN SITE 8 @ トーキョーアーツアンドスペース本郷


 

OPEN SITE 8
Part 1|2023年11月25日(土)-12月24日(日)
Part 2|2024年1月13日(土)-2月11日(日)
トーキョーアーツアンドスペース本郷
https://tokyoartsandspace.jp
開館時間:11:00-19:00(パフォーマンス|dotプログラムは企画により異なる)
休館日:月、12/25–1/12
入場料:無料 ※パフォーマンスは有料
展覧会URL:https://www.tokyoartsandspace.jp/archive/exhibition/2023/20231125-7240.html

 

トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)では、あらゆる表現活動が集まるプラットフォームの構築を目指す公募プログラム「OPEN SITE」に選ばれた企画に、TOKASの推奨プログラムを加えた計10企画を実施する『OPEN SITE 8』を開催する。なお、パフォーマンス公演および一部のイベントは予約制のため、10月25日からチケットの予約受付が始まっている(詳細は公式ウェブサイトを参照)。

2016年に設立された「OPEN SITE」は、ジャンルや形式に拘らず、「時代性や社会性を反映しながら新しい表現を目指し、創造の場を作り上げていくことに意欲的な企画」、「高い構成力や独自性の認められる企画」を広く募集してきた。8回目となる本年度は、215企画の応募の中から展示部門4企画、パフォーマンス部門3企画、dot部門2企画が選考を通過した。岸本佳子(BUoY芸術監督)、小林晴夫(blanClassディレクター)、畠中実(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]主任学芸員)、近藤由紀(トーキョーアーツアンドスペース プログラムディレクター)の4名(審査員による講評は公式ウェブサイト内に掲載)。

 


佐藤瞭太郎《Unknown Friends》2023年


マーク・チュン《デッドエンド #1》2021年 Photo: South Ho(Arts Collective「影を残して、時は去る」)

 

前半の会期(Part 1|11/25〜12/24)を通して開催される展示部門の2企画は、佐藤瞭太郎の個展「変形する無機物」とArts Collectiveの企画展「影を残して、時は去る」。佐藤瞭太郎は、「アセット」と呼ばれる、インターネット上で取引されているデータを収集し、文学や映画的な方法論によってそれらを編集することで、今日の流通とその中で変形する存在を捉える作品を制作している。本展では不条理文学が変形する身体を思考したように、ありえた存在としての「アセット」を通じて現代における「変形譚」を立ち上げる。Arts Collectiveは香港を拠点に活動するキュレーターのアンドレ・チャンチョン・チンインが2018年に結成したキュレーションプラットフォーム。本展では、チャン・ティントン、マーク・チュン、コウ・シントン、パン・イーシュアン、ティン・ミンウェイといったアジアのアーティストによる「時間」を媒介とした空間や場所への観察を示す映像作品群を、アジア各地のさまざまな場所に焦点を当てながら紹介する。

変則的な日程となる3企画のうち、dot部門で選出されたエクアドル在住のアーティスト、岩間香純の「Solidaridad Feminista:エクアドルと日本からみるアート・アクティビズムの可能性」は、展示(11/25〜11/29)だけでなく、ワークショップ(11/30)、シンポジウム(12/2)からなる複合的な企画。ラテンアメリカと日本のフェミニズムを繋ぎ、アートを通じて双方の歴史、文化、哲学にもとづく多様な視点やノウハウを持ち寄り、新しい価値観や経験を共有し合いながら、アートをとおしてジェンダー暴力に抵抗する方法について対話する場の形成を目指す。続いて、パフォーマンス部門は、河井朗が主宰・演出する実演芸術を制作するカンパニールサンチカの「SO LONG GOODBYE」(12/8、12/9、12/10)。近年、年齢職業問わずインタビューを継続的に行ない、それをコラージュしたものをテキストとして扱った演劇作品に取り組んできたルサンチカは、同演劇作品のリクリエイションとして、ダンサーの斉藤綾子を招き、彼女の持つ肉体を頼りに「存在」に向き合うパフォーマンスを上演する。また、TOKAS推奨プログラムは、香港を拠点に活動する映像作家ツァイ・ツイシャンと香港アーツセンターifvaとの協働によるVRプロジェクト「Chroma 11-無舞之間-」を開催(12/14〜12/24)。映像、インスタレーション、ダンスパフォーマンスと仮想空間を融合し、ふたりのダンサー、ウォン・ティエンパオ(イックス)とケク・アーホク(アーロン)の愛の物語を描く。

 


野村在《Soul Reclaim Device (“A portrait of my departed sister”)》2018年


すずえり《鳥には国境はない》2023年

 

後半の会期(Part 2|1/13〜2/11)を通して開催される展示部門は、野村在の個展「Can’t Remember I Forgot You - 忘れたことすら、覚えていない」とすずえりの個展「移動について」の2企画。神戸とニューヨークを拠点に活動する野村在は、地震や家族の死を契機に、肉体を含む物質の消滅を探索することを制作の動機とし、多様なメディアを用いて存在の本質を暴露することを試みている。本展では、写真に刻まれた記憶を彫刻的に立ち上げながら、失われた記憶を実体として表出させ、記憶と記録の境界線を曖昧にするとともに、現代における存在、記憶、死の在り方を問う。即興演奏家としても活動するすずえり(鈴木英倫子)は、道具や楽器のインタラクションと身体性とのずれ、通信技術のレイテンシーが生む物語性への興味から、楽器や自作装置を組み合わせた、回りくどく落ち着きのない感じの演奏や展示を行なう。2022年後半から2023年前半にかけて行われた5ヶ国への滞在と、それに伴うリサーチをもとに、本展では、ニューヨーク湾の検疫島や、台湾道教における日本人神廟を巡る幽霊譚、各国の渡り鳥の軌跡をベースに、古典的な通信技術を転用しながら不可視の存在を呼び起こす。

後半の会期のパフォーマンス部門は、ロンドンを拠点に活動するYANAI Shinoの「I Hear Your Breath」(1/16、1/19、1/20、1/21)。歴史的な事象に関連する道を探し、その道筋をランニングしながらフィールド・レコーディングした音源を使って、さまざまな時間と記憶を重ねていく即興パフォーマンスに加え、地図上でスコアを作り、地図とテリトリーの関係をパフォーマンスを通して考える。パフォーマンス部門のもうひとつの企画は、京都府を拠点に活動する花形槙の「A Garden of Prosthesis」(2/2、2/3、2/4)。花形は人間を中心とした世界を反転させ、他物のためにある人間の肉体についての可能性を考えるパフォーマンスを発表。人工物、自然物、肉体が等価に存在し、《庭師》たちによってそれぞれが互いに《接木》され、侵犯し合う《庭》を創出する。そして、後半の会期のdot部門に選出されたのは、木村玲奈が発起人となり、振付家・ダンサー・WEBエンシジニア・観察者・美術家・舞台制作者がともに活動する6stepsの「6stepsを置いてみる-TOKAS本郷編-」(2/7〜2/11)。本展では、6steps(6段の階段/振付/舞台装置)と、6stepsを踊るための振付書/指示書により、来場者が自由にそれを上り下りしながらダンスを探すことができる空間を設る。

 

関連イベント(※各企画の関連イベントは公式ウェブサイトを参照)
OPEN SITE 8 [Part 1] オープニング・トーク ※日英逐次通訳
2023年11月25日(土)16:00-17:30
ゲスト:岸本佳子(BUoY芸術監督)、小林晴夫(blanClassディレクター)
出演:佐藤瞭太郎、Arts Collective(アンドレ・チャン、チョン・チンイン)、岩間香純
会場:トーキョーアーツアンドスペース本郷
参加料:無料

OPEN SITE 8 [Part 2] オープニング・トーク ※日英逐次通訳
2024年1月13日(土)16:00-17:30
ゲスト:畠中実(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC] 主任学芸員)、近藤由紀(トーキョーアーツアンドスペース プログラムディレクター)
出演:野村在、すずえり
会場:トーキョーアーツアンドスペース本郷
参加料:無料

 


ディアナ・ガルデネイラ《No me toques (NMTKS)》2023年
(岩間香純 「Solidaridad Feminista:エクアドルと日本からみるアート・アクティビズムの可能性」)


ツァン・ツイシャン《Chroma 11-無舞之間-》2022年│VR内の体験イメージ


YANAI Shino『Well Temperament』2021年 Photo: 川田淳、青山真也

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