山城知佳子 リフレーミング @ 東京都写真美術館


山城知佳子《リフレーミング》2021年(新作)© Chikako Yamashiro Courtesy of Yumiko Chiba Associates

 

山城知佳子 リフレーミング
2021年8月17日(火)- 10月10日(日)
東京都写真美術館 地下1階展示室
https://topmuseum.jp/
開館時間:10:00-18:00
休館日:月(ただし、8/30、9/20は開館)、9/21
企画:岡村恵子(東京都現代美術館)

 

東京都写真美術館では、生まれ育った沖縄の歴史や地政学的状況と自身との関係に向き合うことを通じて、取り残されてきた声や肉体、魂を伝える作品を手がけてきた山城知佳子の個展『リフレーミング』を開催する。

映像・写真を主たるメディアとして、2000年代から精力的に活動してきた山城知佳子(1976年沖縄県生まれ)。その映像は、見る者の身体感覚に訴えかけるイメージの豊穣さと詩性、同時代を見つめる批評的な視点をあわせ持ち、沖縄という特定の地域の問題に留まらず、より広い文脈での読み込みや解釈の可能性に開かれている。それは同時に、ファウンドフッテージの再活用、ボイスパフォーマーの採用、マルチチャンネルのスクリーンの使用など、さまざまな手法を効果的に取り入れ、映像の潜在性と映像におけるパフォーマンスの可能性を掘り下げるものとなっている。山城は2002年に沖縄県立芸術大学大学院環境造形専攻を修了。近年は、2016年に沖縄と済州島を舞台に声/音を効果的に使った映像インスタレーション《土の人》を『あいちトリエンナーレ2016:虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅』で発表し、2018年には同作の劇場版で第64回オーバーハウゼン国際短編映画祭でゾンタ賞を受賞。同年、同作のロケ地のひとつであった済州島の済州道立美術館で開かれた『済州4・3事件70周年祈念 ポストトラウマ』でも同作を発表。2019年には国立新美術館の『話しているのは誰? 現代美術に潜む文学』で沖縄・名護市、安和の鉱山地帯を舞台にふたつの家族の物語を中心に描いた《チンビン・ウェスタン 家族の表象》を発表している。2021年は本展のほか、ダンディー・コンテンポラリー・アーツ(イギリス)での個展、第11回ソウル・メディアシティ・ビエンナーレなどが控えている。なお、東京都写真美術館では、『第2回恵比寿映像祭 歌をさがして』(2010)、『ニュースナップショット 日本の新進作家展 vol.9「かがやきの瞬間」』(2010)で山城作品を紹介し、《土の人》(オリジナル3面バージョン)、写真作品《黙認のからだ》シリーズ全点ほかを令和2年度に新規収蔵している。

 


山城知佳子《BORDER》2002年 © Chikako Yamashiro Courtesy of Yumiko Chiba Associates


山城知佳子《土の人》2016年 作家蔵 © Chikako Yamashiro Courtesy of Yumiko Chiba Associates

 

山城知佳子の公立美術館初個展となる本展は、初期作品《BORDER》(2002)から最新作《リフレーミング》までの主要作品を時系列ではなく、「起点―そこにある風景」、「私というメディア」、「擬人化された風景」、「土の連なり:穴という回路」といった相互に共鳴する主題やモチーフの連なりを展示室内を回遊しながらめぐる構成で紹介する。最新作《リフレーミング》は、カルスト地形で知られる名護市安和を舞台に、過去と現在、地上と地下、山と海、人と人でないものとを切り結び、現代の風景に重ねた寓話。前述した《土の人》で長年にわたり格闘してきた「記憶/声の継承」という主題に一区切りをつけた山城は、より俯瞰的な視点で沖縄の風景を見つめるとともに、沖縄の近現代史のなかで見過ごされてきた事象のなかにフィクションの可能性を見出し、新たなリサーチに取り組んできた。同作には、《創造の発端》(2015)にも出演したダンサーの川口隆夫や、振付家・ダンサーの砂連尾理、沖縄出身で映画俳優の尚玄、沖縄芝居の役者たちなど、さまざまな出演者が集い、その身体表現/ダンスも物語の核のひとつとなる。

会期中には、同館1階ホールでの上映や、山城本人や作品の出演者が登壇する対談などの関連プログラムを開催予定(詳細は決定次第、公式ウェブサイトに掲載)。また、展覧会に合わせて、山城によるテキストや本展企画者の岡村恵子による論考を収録したカタログ『山城知佳子 リフレーミング』(水声社)を出版する。

 


山城知佳子《リフレーミング》2021年(新作)© Chikako Yamashiro Courtesy of Yumiko Chiba Associates

 

私は海のなかにいた。私のなかで抱かれる魚たちが、カチカチカチと話している。
カメが空を飛ぶようにちかづいて、かたわらに寄り添っている。私たちはやわらかく、波間にそよぐ私のからだは全体で、そして大きな丘だった。私は私のたくさんの、たくさんの私たちが笑っていた。

あるとき私は時間をかけて移動していた。そうしたかった。胸の中が熱くなって、私は私をかき集めた。そうして海から顔を出した。とけてうねってからだじゅうを鳴らして、大きく大きく顔を出した、ドドドドド。かたわらに月がいるようになった。カメとは会えずにいたけれどさびしくない。私は大きな山になった。

カチンカランコロコロキン。私を追いかけてサンゴが浜に転がる。折れたサンゴはさまよった。サンゴは山になった私を追いかけてきた。カランカランゴロゴロドン。山はうるさくなった。私のまわりには折れたサンゴが集まってきていた。忘れている。私があなただったことあなたが私だったこと。私とあなたはまた海に戻りたい。
(山城知佳子《リフレーミング》制作ノートより)

 


山城知佳子《リフレーミング》2021年(新作)© Chikako Yamashiro Courtesy of Yumiko Chiba Associates


山城知佳子《リフレーミング》2021年(新作)© Chikako Yamashiro Courtesy of Yumiko Chiba Associates

 

 


 

同時開催
リバーシブルな未来 日本・オーストラリアの現代写真
2021年8月24日(火)- 10月31日(日)
東京都写真美術館 3階展示室

宮崎学 イマドキの野生動物
2021年8月24日(火)- 10月31日(日)
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