TOP コレクション メメント・モリと写真 死は何を照らし出すのか @ 東京都写真美術館


マリオ・ジャコメッリ〈やがて死がやってきてあなたをねらう〉より 1954-1968年頃 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵 Courtesy Archivio Mario Giacomelli © Rita e Simone Giacomelli

 

TOP コレクション
メメント・モリと写真 死は何を照らし出すのか
2022年6月17日(金)– 9月25日(日)
東京都写真美術館 2F展示室
https://topmuseum.jp/
開館時間:10:00–18:00(木曜・金曜は20:00まで)入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし月曜が祝休日の場合は開館、翌平日休館)
企画担当:浜崎加織(東京都写真美術館学芸員)
展覧会URL:https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4278.html

 

東京都写真美術館では、国立西洋美術館所蔵のハンス・ホルバイン(子)の『死の像』を起点に、19世紀から現代までの写真作品を通して、人々がどのように死と向き合いながらも、逞しく生きてきたかを探る展覧会『TOP コレクション メメント・モリと写真 死は何を照らし出すのか』を開催する。

ラテン語で「死を想え」という意味を持つ「メメント・モリ」は、人々の日常がいつも死と隣り合わせであることを示す警句である。この言葉は、ペストが大流行した14〜17世紀の中世キリスト教世界において、骸骨と人間が踊る様子を描いた『死の像』と呼ばれるイメージと結びつき、絵画や音楽など芸術作品の題材として広く伝播していく。その背景には、伝染病、戦争、飢餓といった困難の多い時代を生きた人々が、身近にある死への恐れとともに、人間もやがては死すべき運命であることを自覚することによって、生きることに積極的な意味を見いだそうとした様子がうかがえる。一方で、写真もまた、死を想起させるメディアとして、数多くの写真論の中で言及されてきた。企画担当の浜崎加織(東京都写真美術館学芸員)は、2020年の東京都庭園美術館在籍時に「生きている実感を取り戻すことができるのか」をテーマにした『生命の庭―8人の現代作家が見つけた小宇宙』を企画した経験を元に、本展では写真表現に通底する「メメント・モリ」を見出すことで、生きることの意味を捉えようと試みる。

 


ハンス・ホルバイン(子)『死の像』より(試し刷り)1523-26年頃 木版 国立西洋美術館蔵


W. ユージン・スミス《ニュー・メキシコ》1947年 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵

 

本展序章では、「死」のイメージとして名高い、ハンス・ホルバイン(子)の木版画シリーズ『死の像』を通して、メメント・モリの起源、約500年前にそれが流行した背景を紹介する。続く第1章では、ロラン・バルトやソーザン・ソンタグの著作を手がかりに、W. ユージン・スミスやロバート・キャパなど戦場で撮影された作品を中心に、「死」を想起させるメディアとしての写真を紹介する。第2章では、伝染病、戦争、飢餓といった抗い難い大きな困難に直面せずとも、死を身近に感じる人々の孤独、たとえば、新たな糧を求めて、生まれ育った土地から離れた人々が、心のよりどころを見失うことで感じる孤独とメメント・モリの関係を、ロバート・フランク、リー・フリードランダー、牛腸茂雄、ダイアン・アーバスらの作品を通じて探求する。第3章では、日々の生活の中で、目に見える世界にとらわれがちな私たちが、実は「死」というゴールを見つめることで、「生」を捉えなおし、心の安らぎを得ることができるのではないかと問いたて、「死を想う」契機となりうる写真が見る者の心にどう訴えるのかを、藤原新也、ウジェーヌ・アジェ、小島一郎や東松照明などの作品で掘り下げる。

 


荒木経惟〈センチメンタルな旅〉より 1971年 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵 ©Nobuyoshi Araki


藤原新也《死のとき、闇にさまようか光に満ちるか心がそれを選びとる》〈メメント・モリ〉より 1972年 発色現像方式印画 東京都写真美術館蔵 ©Shinya Fujiwara

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