らせんの映像祭2021


 

2021年12月3日から12月5日までの3日間にわたって、神奈川・逗子を拠点とする逗子アートフィルムが主催する「らせんの映像祭2021」が、逗子文化プラザさざなみホール、市民交流センター フェスティバルパークで開催される。

逗子アートフィルムは、市民と市の協働事業としてはじまった逗子アートフェスティバルから生まれた活動。らせんの映像祭は、「真っ直ぐではなく、社会や他の芸術に影響を与えつつ、らせん状に拡がって」きた映像の歴史を踏まえ、「様々な芸術が混ざり合い、新たな創造に向かっていくような祝祭」として、2019年に「アートフィルム上映会」としてはじまり、レクチャーや上映、展示、ワークショップなどを通じて、世界の見方を変え、今までの価値観を揺さぶるような映像表現に出会い、話し合う場の形成を目指している。これまでには、現代美術の領域でもおなじみの山城知佳子や荒木悠(ダニエル・ジャコビーとの共同作品)、高田冬彦なども作品を発表している。

 


ハブヒロシ『音の映画 – Our Sounds』


吉開菜央、仲本拡史『ナイト・シュノーケリング』

 

3回目の開催となる「らせんの映像祭2021」のオープニングを飾るのは、音楽家、遊鼓奏者、アーティストのハブヒロシが、コロナ禍で失われつつあった豊かな生活を取り戻すために、岡山県高梁市の日本語教室に集まったメンバーとともにひとつの歌を共同でつくりあげる様子を記録した音だけのセルフドキュメンタリー映画「音の映画 – Our Sounds」。記録された営み、対話、風景、響きを目を閉じて耳を澄ましながら鑑賞する映像体験は、実験的な映像表現の可能性を探る本映画祭の特徴を顕著に示している。

最終日の12月5日には、本映画祭に2019年から連続して参加している映画作家、振付家、ダンサーの吉開菜央と、逗子アートフィルムの代表を務める映像作家、仲本拡史が、貴重な自然の残る三浦半島の海岸を舞台に、自然とカメラの関係を考えながら撮影を行なった共同作品「ナイト・シュノーケリング」(12月4日の上映プログラム①でも上映)と、吉開が日本最北の世界自然遺産、知床(北海道斜里町)で撮影した映画「Shari」を上映。上映前には、地域における環境、生物、暮らし文化の研究・調査を行ない、地域資産(資源・遺産)の提言、地域活性化計画策定などに参画する非営利事業団体「地球の楽校」代表理事を務める長谷川孝一をゲストに招き、「ナイト・シュノーケリング」の舞台となった三浦半島の魅力を語るレクチャーも行なう。

 


山下つぼみ「かの山」


磯部真也「13」

 

2日目の12月4日の上映プログラム①では、先述した吉開と仲本の『ナイト・シュノーケリング』を含む10本の映像作品を紹介する。短編映画や実験映画、アニメーション、ミュージックビデオ、エッセイフィルムなど、さまざまな映像作品を一挙に上映する本プログラム。フリーランスのテレビディレクターとしてドキュメンタリー番組のほか、子供番組、情報番組などを手がける山下つぼみは、自主制作の短編映画「かの山」を出品する。離婚を決めた夫婦が時間を共に過ごした街、逗子で最後にすごす1日を描いた同作は、2021年の第78回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ短編部門入選作品。磯部真也の「13」は、16mmフィルムによって、沈み行く太陽を同ポジション同アングルから5年にわたってインターバル撮影+多重露光した実験映画で、昨年のイメージフォーラム・フェスティバル2020で東アジアエクスペリメンタルコンペティションの大賞を受賞、2021年の第59回アナーバー映画祭でグランプリにあたる「Ken Burns for Best of the Festival」を受賞している。また、個人の声や記憶を収集し、普遍的な声へと再構成するスタイルで映像作品を制作する池添俊は、自身を育てた祖母の声、ともに暮らした家のフィールドレコーディングをミックスしたドキュメンタリー・フィクション「朝の夢」、2019年から連続で「らせんの映像祭」に参加している大西景太は、16世紀の音楽家マヌエル・カルドーゾ作曲の合唱曲「レクイエム」を視覚化したアニメーション作品『Requiem / composed by M.Cardoso』を出品する。

上映プログラム以外にも、12月4日、12月5日の2日間は10時から17時にかけて、『ひかるアート展』を開催。上平晃代の赤外線モーションセンサーを使ったインタラクティブなアニメーションインスタレーションや、重田佑介の逗子や葉山の海岸をドット絵で描いた風景アニメーション、本藤太郎と宮田涼介のユニット視聴覚派によるパフォーマンス《ghost note》、曽和聖大郎を中心とした映画実験プロジェクトKinotopeによるパフォーマンス「地図をよむ」など、上映という形式に限定されない多彩な映像体験が一堂に会する。

 

 

らせんの映像祭2021
2021年12月3日(金)- 12月5日(日)
https://artfilm.jp/
会場:逗子文化プラザ さざなみホール/市民交流センターフェスティバルパーク(神奈川県逗子市逗子4-2-10)
※一部のプログラムを除き、要予約(https://sff2021.peatix.com/

スケジュール:さざなみホール
2021年12月3日(金)
18:30|オープニング上映:ハブヒロシ「音の映画-Our Sounds」
19:30–20:00|上映後トーク(Zoom登壇:ハブヒロシ監督)

2021年12月4日(土)
10:00–17:00|展示・ワークショップ:らせんの映像祭 -ひかるアート展-
(展示:上平晃代、重田佑介、円香、佐藤径亮、よこえれいな|ワークショップ:池亜佐美(原案))
17:30–18:00|パフォーマンス①:視聴覚派「ghost note」(本藤太郎、宮田涼介)
18:15–20:00|上映プログラム①:エクスペリメンタル・ショート(上映前、監督登壇あり)
大西景太「Requiem / composed by M.Cardoso」(アニメーション)
asamicro「egg life1:怪物」(ダンス・フィルム)
幸洋子「June 4, 2020」(アニメーション)
吉開菜央、仲本拡史「ナイト・シュノーケリング」(ドキュメンタリー)
鈴木彩文「Celer – Melancholy Movement」(ミュージックビデオ・8ミリフィルムで制作)
坂本夏海「Knitting the Intangible Voices」(アニメーション)
村岡由梨「透明な私」(エッセイ・フィルム)
山下つぼみ「かの山」(短編映画)
池添俊「朝の夢」(ドキュメンタリー・フィクション)
磯部真也「13」(実験映画・16ミリフィルムで制作)

2021年12月5日(日)
10:00–17:00|展示・ワークショップ:らせんの映像祭 -ひかるアート展-
(展示:上平晃代、重田佑介、円香、佐藤径亮、よこえれいな|ワークショップ:池亜佐美(原案))
17:30–18:00|パフォーマンス②:Kinotope「地図を読む」(曽和聖大郎)
18:15–20:00|上映プログラム②:「ナイト・シュノーケリング」「Shari」
三浦半島トーク(講師:長谷川孝一、聞き手:吉開菜央、仲本拡史)
吉開菜央、仲本拡史「ナイトシュノーケリング」
吉開菜央「SHARI」

 

スケジュール:フェスティバルパーク
2021年12月4日(土)
11:00–18:00|Kinotope「環世界地図の歩き方」(曽和聖大郎)
2021年12月5日(日)
10:00–15:00|Kinotope「環世界地図の歩き方」(曽和聖大郎)

 


上平晃代「ジャングルのゆりかご」


重田佑介「A shore A.M. / P.M.」


Kinotope「地図をよむ」

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