上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー @ 京都国立近代美術館


 

上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー
2021年11月16日(火)- 2022年1月16日(日)
京都国立近代美術館
https://www.momak.go.jp/
開館時間:9:30–17:00(金土は20:00まで)入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、1/10は開館)、12/28–1/3
企画:池田祐子(京都国立近代美術館学芸課長・本展担当者)
特設ウェブサイト:https://lizzi.exhibit.jp/

 

京都国立近代美術館では、20世紀のウィーンと京都を拠点に、色彩豊かな魅力あふれるデザインを展開した上野リチ・リックスの仕事を網羅的に紹介する展覧会『上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー』を開催する。

上野リチ・リックス(本名:フェリーツェ・リックス)は、建築家ヨーゼフ・ホフマンらが設立したウィーン工房に参加し多彩な作品を手がけ、ウィーンで出会った日本人建築家・上野伊三郎と移り住んだ京都でもデザイナーとして活動、戦後は主に教育者として、後進の育成に勤めた。1893年のウィーンにユダヤ系の実業家ユリウス・リックスと妻ヴァレリーの4人姉妹の長女として生まれたリチは、裕福でリベラルな生活環境のなかで育ち、私設画塾などを経て、1912年にウィーン工芸学校に入学する。同校でテキスタイル、七宝、彫刻を学ぶと同時に、建築家ヨーゼフ・ホフマンのクラスに入り研鑽を積み、卒業後はホフマンがコロマン・モーザーらと1903年に設立したウィーン工房の一員となり、テキスタイル部門とファッション部門を中心に、さまざまなデザイン分野で精力的な制作活動を行なう。1924年、ホフマンの建築設計事務所に在籍する日本人建築家上野伊三郎に出会い、翌年結婚。1926年に伊三郎の郷里である京都に移り住み、建築事務所を開設する。来日後も定期的にウィーンを訪れ、1930年までに退職するまでウィーン工房の一員として活動。1935年からは京都市染織試験場図案部技術嘱託(〜1944年)、1936年からは群馬県工芸所嘱託(~1939年)を務め、主に日本占領下の外地へと輸出されるプリント布地や刺繍製品などのデザインを手がけた。戦後は1951年に京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)の工芸科図案専攻講師を務め、1960年に教授に就任。1963年に同大学を定年退職後もインターナショナルデザイン研究所(後にインターアクト美術学校と改名)を開設し、1967年に亡くなるまで生涯にわたって人材の育成に尽力した。

 


上野リチ・リックス《ウィーン工房テキスタイル・デザイン:夏の風》1922年、クーパー・ヒューイット スミソニアン・デザインミュージアム、ニューヨーク、Museum Purchase from Smithsonian Collections Acquisition and Decorative Arts Association Acquisition Funds. Cooper Hewitt, Smithsonian Design Museum, Smithsonian Institution. Photo credit: Matt Flynn © Cooper Hewitt, Smithsonian Design Museum


上野リチ・リックス《[花鳥図屏風]》1935年頃、京都国立近代美術館蔵


上野リチ・リックス《プリント服地デザイン[象と子ども]》1943年、京都国立近代美術館蔵

 

上野リチの世界初の大規模な回顧展となる本展では、国内最大規模の作品群の所蔵を誇る京都国立近代美術館をはじめ、国内外の機関からリチそして関連作家の作品を招来し、「リチのデザイン世界」の全貌をプロローグとエピローグを含む5部構成で時系列に紹介していく。リチのポートレートやスケッチブックなど、ウィーンと京都のふたつの街を生きた彼女の姿が感じられる資料を展覧会の導入としたプロローグにはじまり、第Ⅰ章では、リチが務めたウィーン工房の概要を紹介し、リチのテキスタイル・デザインを、恩師や同僚デザイナーたちの作品の数々とともに紹介する。第Ⅱ章では、ウィーンで伊三郎と出会い、京都に移り設立した建築事務所で働きつつ、ウィーン工房の一員としても京都とウィーンを行き来しながら活動していた、リチのデザインが確立した最も実り豊かな時期を扱う。続く第Ⅲ章では、戦時下で外国人として日本に暮らすリチが生み出したデザインから、戦後、デザイナーとして活動しつつも深く教育分野に携わったその活動を、建築家・村野藤吾の依頼で制作した、東京日比谷にある日生劇場の旧レストラン「アクトレス」の壁画の一部再構成を含む数多くの作品・資料によって紹介する。そして、エピローグでは、1967年に生涯を閉じたリチのデザインが、村野藤吾や教え子たちによって、都ホテルやプリンスホテルそしてカフェ・レストランで室内装飾に用いられたクロスやタイルなど、私たちの身近なところに生かされていたリチ・リスペクト・デザインを紹介する。

本展を担当する池田祐子は、京都国立近代美術館が2006年にインターアクト美術学校から寄贈されたリチと伊三郎の作品、資料を紹介する2009年の展覧会『上野伊三郎+リチ コレクション展 ウィーンから京都へ、建築から工芸へ』(目黒区美術館に巡回)に携わり、2015年には新たに寄贈されたリチ関連の作品群を紹介する『キュレトリアル・スタディズ09:上野リチのテキスタイル・デザイン~ウィーン工房から京都へ』を企画。2019年にも『世紀末ウィーンのグラフィック デザインそして生活の刷新に向けて』(目黒区美術館に巡回)を担当している。会期中には、講演会「上野リチの仕事:ウィーンからきたデザイン・ファンタジーと京都」を開催。会場での参加申込はすでに受付を終了しているが、講演会の様子は京都国立近代美術館の公式YouTubeチャンネルでも配信される。

 

関連イベント
講演会「上野リチの仕事:ウィーンからきたデザイン・ファンタジーと京都」
講師:池田祐子(京都国立近代美術館学芸課長・本展担当者)
2021年12月4日(土)14:00–15:30
会場:京都国立近代美術館 1階講堂+ウェブ配信
定員:50名(先着、事前申込制)すでに申込受付終了
無料
ウェブ配信URL:https://www.youtube.com/watch?v=XewxsRCZwCs

 


上野リチ・リックス《プリント地刺繍ハンドバッグ・デザイン》1935-44年、京都国立近代美術館蔵


上野リチ・リックス《マッチ箱カバー[淑女2]》1950年頃、京都国立近代美術館蔵


上野リチ・リックス《クラブみち代 内装デザイン(1)》1950年代、京都国立近代美術館蔵

 


同時期開催
キュレトリアル・スタディズ15:八木一夫の写真
2021年11月11日(木)- 2022年1月16日(日)
京都国立近代美術館 4F コレクション・ギャラリー内

巡回情報
上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー
2022年2月18日(金)- 5月15日(日)
三菱一号館美術館、東京
https://mimt.jp/

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