MOT アニュアル 2021 海、リビングルーム、頭蓋骨 @ 東京都現代美術館

 

MOT アニュアル 2021 海、リビングルーム、頭蓋骨
2021年7月17日(土)- 10月17日(日)
東京都現代美術館 企画展示室地下2F
https://www.mot-art-museum.jp/
開館時間:10:00-18:00 展示室入場は閉館30分前まで
休館日:月曜日(7/26、8/2、8/9、8/30、9/20は開館)、8/10、9/21
企画担当:崔敬華(東京都現代美術館学芸員)

 

東京都現代美術館は、1999年以来毎年実施してきた国内の現代美術の潮流のひとつを紹介する企画展「MOTアニュアル」。その17度目の開催となる本展は「海、リビングルーム、頭蓋骨」をタイトルに、小杉大介、潘逸舟、マヤ・ワタナベの作品を通じて、未だ収束を見ないパンデミックによって複数の社会問題が顕在化した世界で、国や地域を超えて共鳴するアーティストたちの同時代的な表現や問題意識を提示する。

小杉大介、潘逸舟、マヤ・ワタナベはいずれも映像を主なメディアとしながら、自らや他者の身体表現を取り入れた作品で、社会のシステムや規範と対峙する人々の葛藤や応答の身振りを描いてきた。ある風景の中の身体の現れや不在の意味を、その社会的背景や歴史的文脈を掘り下げながら批評的に考察する実践は、映像表現そのものの追求を通じて、私たちの生が根源的に関わる時間や空間に対する洞察を提示する。本展はそのような作品群を通して、現代を生きるひとりの主体としての私たちの主観性を形作るものは何かを問うと同時に、私たちは、映像であれ、社会であれ、自らであれ、何を見ているのかだけではなく、いかに見ているのかという問いを投げかける。

 


小杉大介《A False Weight》2019年

 

小杉大介(1984年東京都生まれ)は、社会を制御するシステムの中で揺れうごく主体の表出に関心を寄せ、映像を中心に、パフォーマンス、テキスト、サウンド、オブジェなど幅広いメディアを用いて制作を行なっている。制作に自身の家族やほかのアーティストとの協働を取り入れた映像作品は、フィクションとノン・フィクションを行き来しながら、個が経験する葛藤や不自由がもたらす身体的、精神的痛みの伝達(不)可能性を問いかける。2014年にオスロ国立芸術大学を卒業し、現在もオスロ在住。同地ではアーティスト・イニシアティブ「Louise Dany」を共同設立。2016年に第11回光州ビエンナーレに参加し、2019年には個展『Une fausse pesanteur』がジュ・ド・ポーム国立美術館(パリ)、CAPC ボルドー現代美術館、アンパロ美術館(プエブラ、メキシコ)を巡回。そのほか、数々の展覧会、映画祭で作品を発表している。本展では、普遍的な身体を規格とした建築の居住空間に、病により相入れなくなってゆく身体の葛藤を、父と子という関係性から見つめた《A False Weight》(2019)を出品するほか、精神的な痛みが身体にいかに刻まれるかを風景として辿りながら探る新作《All that goes before forget》を発表する。

 


潘逸舟《海の収穫》2021年

 

潘逸舟(1987年上海生まれ)は、映像、パフォーマンス、インスタレーション、写真などのメディアを用い、共同体や個が介在する同一性と他者性について考察してきた。幼い頃に上海から青森に移り、日本で生活してきた潘自身の経験や視点がその制作の根底に位置し、誰もが見たことがあるような風景に浸透した「日常」にパフォーマティブな行為で切り込む映像や日用品を用いたインスタレーションは、共同体の自明性を問い、私たちの行為や眼差しに内在するイデオロギーや規範を示唆する。2012年に東京芸術大学美術研究科先端芸術表現大学院を修了し、現在は東京在住。近年の主な展示に、『In the Wake – Japanese Photographers Respond to 3/11』(ボストン美術館、2015/ジャパンソサエティー、ニューヨーク、2016)、『Sights and Sounds: Highlights』(ユダヤ博物館、2016)、個展『The Drifting Thinker』(MoCA Pavilion、上海、​2017)。2020年には、弘前れんが倉庫美術館の「弘前エクスチェンジ」プロジェクトに参加し、日産アートアワード2020ではグランプリを受賞。本展では、これまでの映像作品と新作を合わせ、インスタレーションとして発表する。

 


マヤ・ワタナベ《Bullet》2021年 Produced by Multiverso with the support of Mondriaan Fonds and the Museum of Contemporary Art Tokyo

 

マヤ・ワタナベ(1983年リマ生まれ)は、その映像インスタレーションを通じて、人間やほかの生物の身体とその物質的変化を微視的かつ抽象的に捉え、生と死の一回性を洞察する。また、生を貫通する人間や自然の力を想起させる風景や光景を描きながら、人間の知覚や想像力、記憶の限界を示唆してきた。現在ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ博士課程に在籍し、アムステルダム在住。近年の主な展示、スクリーニングに、『Video SUR』(パレ・ド・トーキョー、パリ、2018)、個展『Liminal』(リマ、2019)、スクリーニング『Liminal』(国立21世紀美術館、ローマ、2019)、第13回ハバナ・ビエンナーレ(2019)、アジアン・アート・ビエンナーレ(国立台湾美術館、台中、2019)などがある。本展では、ワタナベが近年取り組む、現在も究明や裁判が続いている自国ペルーの内戦の記憶の問題を扱った、過去と現在の間で宙づりになった風景を捉えた《Sceneries》(2016)、身体に刻まれた抑圧の痕跡を照らし出す《Liminal》(2019)、そして、新作《Bullet》 (2021)を発表する。

 

関連プログラム
アーティスト・トーク 小杉大介&潘逸舟
ゲスト:小杉大介、潘逸舟
2021年7月18日(日)15:00-16:30(開場:14:30)
会場:東京都現代美術館 地下2階講堂
定員:75名(先着順)
参加方法:予約不要、要本展チケット
※開催内容は、都合により変更になる場合あり。

 

 


 

同時開催
MOTコレクション Journals 日々、記す/特別展示:マーク・マンダース「保管と展示」
2021年7月17日(土)- 10月17日(日)
東京都現代美術館 コレクション展示室1F / 3F
企画担当:鎮西芳美(東京都現代美術館学芸員)
水田有子(東京都現代美術館学芸員)

GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?
2021年7月17日(土)- 10月17日(日)
東京都現代美術館 企画展示室1F/3F
企画監修:南雄介(前愛知県美術館館長)

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