サムソン・ヤン『The World Falls Apart Into Facts』@ オオタファインアーツ


Samson Young, The World Falls Apart Into Facts (2019) Courtesy the artist and Edouard Malingue Gallery

 

サムソン・ヤン『The World Falls Apart Into Facts』
2021年4月13日(火)- 6月5日(土)
オオタファインアーツ
http://www.otafinearts.com/
開館時間:11:00-19:00
休館日:日、月、祝

 

オオタファインアーツでは、第57回ヴェネツィア・ビエンナーレの香港代表に選ばれるなど、音とその文化的政治性を探究する多彩な実践が国際的に知られる香港出身のアーティスト、サムソン・ヤンの個展『The World Falls Apart Into Facts』を開催する。

サムソン・ヤン(1979年香港生まれ)は、シドニー大学で音楽、哲学、ジェンダー・スタディーズを学び、音楽作曲の修士号を香港大学、博士号をプリンストン大学で取得。その音楽作曲を中心とした学際的な研究をいかし、音とその文化的政治性に対する探究を軸にアイデンティティや戦争、文学などのテーマを、作曲、ドローイング、インスタレーション、ラジオ、パフォーマンスなど多岐にわたる表現方法で扱っている。2017年には第57回ヴェネツィア・ビエンナーレに香港代表として参加し、『Songs for Disaster Relief』の展覧会タイトルの下、ネオリベラリズムの台頭や国際的なポピュラー音楽産業のグローバル化と軌を一にする「チャリティ・ソング」の普及を、歴史的な出来事や文化的な変革期として位置付け直そうとする一連の作品群を発表。近年もパフォーマ19(2019)、シドニー・ビエンナーレ(2018)、上海ビエンナーレ(2018)、ドクメンタ14(2017)などに参加、シカゴ大学附属スマート美術館(2019)、エジンバラのトルボット・ライス・ギャラリー(2019)、バンクーバー国際現代アジアアートセンター(2019)、クンストハレ・デュッセルドルフ(2016)などで個展を開催している。日本国内でも、2015年に広島市現代美術館のビデオアートプログラムや国立国際美術館の『トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために』(2018)で「MUTED SITUATION」シリーズを発表、TPAM2018ではサウンド・インスタレーションと長時間のパフォーマンスからなる《カノン》を発表している。昨年は京都の建仁寺塔頭両足院に滞在し、『クロース・リーディング』展を開催。森美術館のMAMコレクション012にて、《音を消した状態#22:音を消したチャイコフスキー交響曲第5番》(2018)を展示している。昨年はまた、香港のM+が創設したシグ賞(旧・中国現代美術賞)を受賞。2021年は両足院での滞在の成果をさらに展開した作品をミラノのOrdetでの個展で発表し、ドバイのジャミール・アートセンターでの個展、コチ=ムジリス・ビエンナーレへの参加が控えている。

 


Samson Young, The World Falls Apart Into Facts (2019) Courtesy the artist and Edouard Malingue Gallery

 

本展では、オペラ「トゥーラントッド」の中でも歌われる中国を代表する民謡「Molihua(茉莉花)」の系譜を、歴史と政治の両観点からたどった映像インスタレーション《The World Falls Apart Into Facts》(2019)を発表する。「Molihua」は清朝時代に大英帝国を通してヨーロッパにもたらされ、その地で広まるなかで変化したものが、その後、中国に逆輸入される。ヤンは本作において、その歴史と、雅楽の一種である唐楽の伝播の歴史を対比させている。ひとつの楽曲が複数の文化を横断するときに生ずる変化を検証、他方がその曲をどのように受け取ったのかを考察していくことで、本作は文化的な純度や正統性を問い直していく。

 


Samson Young, The World Falls Apart Into Facts (2019) Courtesy the artist and Edouard Malingue Gallery

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