ホー・ツーニェン「ヴォイス・オブ・ヴォイド−虚無の声」@ 山口情報芸術センター[YCAM]


作品に登場する高山岩男、西谷啓治、鈴木成高、高坂正顕の3Dモデル

 

ホー・ツーニェン「ヴォイス・オブ・ヴォイド−虚無の声」
2021年4月3日(土)- 7月4日(日)
山口情報芸術センター[YCAM]スタジオA
https://www.ycam.jp/
開館時間:10:00-19:00
休館日:火(ただし、5/4は開館)、4/22、5/6、5/12、5/13
企画担当:吉﨑和彦(山口情報芸術センター[YCAM]キュレーター)

 

山口情報芸術センター[YCAM]では、さまざまな歴史的、哲学的テクストや素材から映像作品、インスタレーション、演劇的パフォーマンスを発表してきたシンガポールを代表するアーティスト、ホー・ツーニェンの新作インスタレーション《ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声》を世界初公開する。

ホー・ツーニェンは、近年、その関心領域を東南アジアの歴史に深い関わりを持つ、第二次世界大戦期の日本にも拡げている。あいちトリエンナーレ2019では、豊田市にある旧旅館・喜楽亭を舞台に、その場がもつ歴史に対して、西田幾多郎(1870-1945)や田辺元(1885-1962)を中心に形成された「京都学派」による日本軍の政治陰謀への関与、神風特攻隊、映画監督の小津安二郎や漫画家の横山隆一といった文化従事者の潜在的なつながりを掘り下げた《旅館アポリア》(2019)を発表した。同作以降も京都学派への関心はつづき、新作《ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声》では、「京都学派四天王」と呼ばれた西谷啓治(1900-1990)、高坂正顕(1900-1969)、高山岩男(1905-1993)、鈴木成高(1907-1988)によって、真珠湾攻撃の直前の1941年11月末にひらかれた座談会「世界史的立場と日本」を中心に、彼らとそれを取り巻く人々が1930年代から40年代にかけて産み出したさまざまなテクストを読み解いていく。VRをはじめとするテクノロジーを用いた新しい芸術表現を模索してきたYCAMとのコラボレーションすることで実現した本作は、3Dアニメーションと日本のアニメの美学を組み合わせ、VRによって鑑賞者がアニメーションの登場人物へと同一化し、より没入感のある体験として歴史の再演を試みるものとなる。

 


photograph by Matthew Teo courtesy of Art Review Asia

 

ホー・ツーニェン[何子彦](1976年シンガポール生まれ)は、ポスト植民地主義時代の東南アジアにおける歴史、神話、政治を探究すべく、ときに過剰なほどに歴史的参照項を織り交ぜた、観客没入型の映像インスタレーションを発表している。その活動は映画や演劇といった隣接領域にまでおよび、制作、キュレーション、執筆活動など多面的な展開をみせている。シンガポール代表として参加した第54回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2011)をはじめ、第26回サンパウロ・ビエンナーレ(2004)、第3回福岡アジア美術トリエンナーレ(2005)、第1回シンガポール・ビエンナーレ(2006)、第41回カンヌ映画祭監督週間(2009)などの国際展や映像祭で作品を発表し、ビルバオ・グッゲンハイム美術館(2015)、香港のアジア・アート・アーカイブ(2017)、上海の明当代美術館(2018)、クンストフェライン・ハンブルク(2018)などで個展を開催している。

日本国内では、上述した第3回福岡アジア美術トリエンナーレ(2005)をはじめ、『Move on Asia 2006 「衝突とネットワーク」』(ソウルのLOOPから巡回し、2006年にトーキョーワンダーサイト渋谷で開催)、堂島リバービエンナーレ2009、ヨコハマ国際映画祭2009、森美術館のMAMプロジェクト(2012)、『Media/Art Kitchen – Reality Distortion Field』(東京都写真美術館、2014)、『他人の時間』(東京都現代美術館、国立国際美術館、シンガポール美術館、クイーンズランド州立美術館、2015-2016)、『サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から』(森美術館、国立新美術館、2017)、あいちトリエンナーレ2019、『呼吸する地図たち/響きあうアジア2019』(東京芸術劇場ギャラリー1、2019)に参加し、TPAM 国際舞台芸術ミーティング in横浜では、2018年に「一頭あるいは数頭のトラ」、2019年に「神秘のライテク」、そして、2020年はワーク・イン・プログレスとして制作途中の《ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声》を発表している。

 


作品に登場するメカの3Dデザイン素材

 

関連イベント
ホー・ツーニェン新作展プレトーク「山口時代の西田幾多郎の原文を読む・考える」
ゲスト:佐野之人(哲学研究者)
2021年2月13日(土)14:00-15:30

アーティストと制作チームによるトーク
登壇者:ホー・ツーニェン
2021年4月3日(土)14:00-15:30
会場:山口情報芸術センター ホワイエ
定員:60名(要申込)、無料
詳細および参加申込はこちらから

サンカクトーク
登壇者:ホー・ツーニェン
2021年4月17日(土)、5月22日(土)、6月12日(土)、6月26日(土)各回:14:00-15:30
会場:山口情報芸術センター ホワイエ
参加無料
詳細および参加申込はこちらから
※作品と自分、他者の「三者」を行き来しながら対話するイベント

担当スタッフによるトーク
2021年4月10日(土)、5月1日(土)、6月5日(土)各回:14:00-14:40
会場:山口情報芸術センター ホワイエ
参加無料
詳細および参加申込はこちらから
※担当のキュレーターやエデュケーターが、作品のコンセプトや背景について解説するイベント

座禅体験会
講師:深野宗泉
2021年5月16日(日)、5月30日(日)、6月20日(日)14:00〜15:30
会場:洞春寺(山口県山口市水の上町5−27)
※詳細および申込はこちらから

 


ホー・ツーニェン《易経四十九卦》2020年、Courtesy of the artist and Edouard Malingue Gallery

 

ホー・ツーニェン映像作品選
2021年6月26日(土)18:00-
2021年6月27日(日)12:30-
会場:山口情報芸術センター[YCAM]スタジオC
※無料
上映作品;
《ウタマ −歴史に現れたる名はすべて我なり/Utama – Every Name in History is I》(2003年/26分)
《名のない人/The Nameless》(2015年/21分15秒)
《名をもつ人/The Name》(2015年/16分41秒×2)※日本初公開
《易経四十九卦/The 49th Hexagram》(2020年/30分30秒)※日本初公開

 

ART iT Interview Archive
ホー・ツーニェン「空虚の彼方へ」(2020年11月)

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