EEEプロジェクト『ナイーム・モハイエメン《United Red Army》』@ 倉敷芸術科学大学


Naeem Mohaiemen United Red Army (2011)

 

EEEプロジェクト|スクリーニング
ナイーム・モハイエメン《United Red Army》
2019年12月20日(金)13:20-14:40
倉敷芸術科学大学22号館 22103号室(※予約申込不要)
EEEプロジェクト:http://www.kuragei.com/

 

学生と第一線で活躍するアーティストとのコラボレーション、キュレーション、公開講座などを企画してきたEEE(Education, Education and Education)プロジェクトが、ドクメンタやヴェネツィア・ビエンナーレをはじめとする数々の国際展に参加し、2018年にはターナー賞の最終候補にも選ばれたナイーム・モハイエメンの映像作品《United Red Army》(2011)のスクリーニングを開催する。

EEEプロジェクトは、難民や外国人技能実習制度、日本の植民地政策を再考する映像作品などを制作するアーティストの川上幸之介が、倉敷芸術科学大学芸術学部の自身の研究室で取り組んでいる活動。これまでに、ジョン・バルデッサリ、ライアン・ガンダー、イム・ミヌクなど国際的に活躍するアーティストとのコラボレーション、キュレーターや批評家、思想家などによる公開講座などを実施するほか、東京・浅草のキュレトリアル・スペース、アサクサに設立当初から展覧会企画に関わり、現在は東京大学を拠点とした教育プログラム「社会を指向する芸術のためのアートマネジメント育成事業(AMSEA)」や東京藝術大学との共同プロジェクトなども展開している。

ナイーム・モハイエメンは、急進的な左翼運動の失敗に関する歴史資料やアーカイブを調査し、そうした運動と故郷バングラデシュの歴史とが交差する出来事を扱い、その不完全な歴史に新たな注釈を加え、既存の歴史を問い直す映像作品を、2011年から2016年にかけて4本制作し、「The Young Man Was」シリーズとしてまとめている。EEEプロジェクトのスクリーニングでは、1977年に起きた日本赤軍によるダッカ日航機ハイジャック事件を扱った、同シリーズの最初の作品《United Red Army》(2011)を上映する。同事件は、日本航空472便をハイジャックした日本赤軍グループによる獄中メンバーの釈放要求を受け入れた日本政府の超法規的措置により幕を閉じたが、その出来事の最中で、毛沢東主義左派の兵士らが、ジアウル・ラフマン将軍の軍事政権に対するクーデターを企て、ダッカ空港を襲撃していた。この出来事は飛行機に乗り合わせた日本人観光客が偶然撮影しており、その写真が本作の中にも使われているが、モハイエメンは、「この舞台裏には、ハイジャックが行われている間にバングラデシュ空軍内で試みられた軍事クーデターの秘密の歴史がある。日本人はハイジャックの『平和的終結』しか知らないが、バングラデシュ側では甚大な二次被害が発生していた」と語っている。日本赤軍によるダッカ日航機ハイジャック事件と、毛沢東主義左派の兵士によるクーデターが交差する歴史の一幕を、モハイエメンは歴史資料やニュース映像、オーディオ・レコーディング、観光客が撮影した写真に、個人的な記憶をも織り交ぜ、複層的に語り、歴史に対する新たな見解を示している。

 


Naeem Mohaiemen United Red Army (2011)


Naeem Mohaiemen United Red Army (2011)

 

ナイーム・モハイエメン(1969年ロンドン生まれ)は、植民地主義と脱植民地化の影響や政治的ユートピアの記憶の抹消や修正、第二次世界大戦後の国境を越えた急進左派思想に関する研究を、映像やインスタレーション、あるいは論考の形で発表している。モハイエメンはリビアのトリポリとバングラデシュのダッカで育ち、89年にアメリカ合衆国に渡り、オーバリン大学で経済学を専攻。96年にニューヨークを拠点とするエディトリアル・コレクティブ「SAMAR(South Asian Magazine for Action and Reflection)」に加入し、2005年にアクティビストや法律家、映像作家、写真家などからなる「Visible Collective」の一員として、『Fatal Love: South Asian American Art Now』(クイーンズ美術館)に参加。以来、アーティストとしての活動を本格的に開始し、並行してコロンビア大学に通い、2015年に文化人類学の修士号、2019年に博士号を取得した。

2014年に後のドクメンタ14のアーティスティック・ディレクターとなるアダム・シムジックのキュレーションで、個展『Prisoners of Shothik Itihash』をクンストハレ・バーゼルで開催し、同名書籍を出版。2018年にはパレスチナのマフムード・ダルウィーシュ博物館で個展『Solidarity Must be Defended』を開催し、数年かけて同名書籍の共同編集を担うなど、制作活動と並行して執筆活動も展開している。ダッカ・アートサミット(2014)、第56回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2015)、ドクメンタ14(2017)、ラホール・ビエンナーレ(2018)など、数々の国際展に参加し、MoMA PS1(2017-18)やイスタンブールのSALTベイオール(2019)などで個展を開催。また、「South Asia Solidarity Initiative」、「Gulf Labor Coalition」、「BAD BARCODE – Against Amazonigication」などの活動も展開している。

 


Naeem Mohaiemen United Red Army (2011)


Naeem Mohaiemen United Red Army (2011)

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