ハーヴィン・アンダーソン『They have a mind of their own』@ RAT HOLE GALLERY


Hurvin Anderson Speech Bubble (2019) Courtesy the artist and Thomas Dane Gallery

 

ハーヴィン・アンダーソン『They have a mind of their own』
2019年2月22日(金)-5月18日(土)
RAT HOLE GALLERY
http://www.ratholegallery.com/
開廊時間:11:00-19:00
休廊日:日、月

 

ラットホールギャラリーでは、美術史を幅広く参照しながら、自身のルーツであるジャマイカにまつわる記憶、場所、時間をテーマに制作するペインター、ハーヴィン・アンダーソンの日本初個展『They have a mind of their own』を開催する。

ハーヴィン・アンダーソン(1965年バーミンガム生まれ)は、ジャマイカ出身の両親の下、移民2世として育った背景を持ち、幅広い美術史、カリブ海出身の移民の育んできた文化を参照した色彩豊かな絵画作品を発表している。アンダーソンの絵画には、しばしばイギリス、ジャマイカの両文化にまつわるモチーフが登場する。たとえば、にわか仕立ての理髪店や公園は、1970、80年代にバーミンガムのアフロカリビアン・コミュニティで育った彼自身の記憶に基づいている。また、トリニダード島での滞在制作を経て、カリブ海特有の装飾が施されたフェンスや防犯鉄格子、そして、熱帯地域特有の植生が繰り返し描かれるようになった。ウィンブルドン美術大学、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートを経て、現在はロンドン在住。2000年代前半より、トーマス・デーン・ギャラリーを中心に個展を重ね、2009年にテート・ブリテンの新進作家の新作を個展形式で紹介する『ART NOW』に出品。同年、ニューヨークのハーレム・スタジオ美術館で個展『Peter’s Series 2007-2009』を開催。2015年にセントルイス現代美術館で個展『Backdrop』を開催。2016年には、カムデン・アーツ・センターの企画展『Making & Unmaking』への参加のほか、オンタリオ州立アートギャラリーでの個展『Backdrop』、ノッティンガムのニュー・アート・エクスチェンジでの個展『Dub Versions』を開催。両個展が評価され、2017年にはターナー賞にノミネートされ、イングランド北東部ハルのフェレンス・アートギャラリーの展覧会に、ほかのノミネート作家とともに出品した。

 


Hurvin Anderson Study for Ascension I (2017) Courtesy the artist and Thomas Dane Gallery


Hurvin Anderson Study for Ascension II (2017) Courtesy the artist and Thomas Dane Gallery

 

本展では、ジャマイカの海岸線に点在するホテル群と、それらを取り囲むように草木が生い茂る風景をもとに描いた新作を中心に発表する。ユートピアを主題とする作品群には、観光客の欲求を満たす「楽園」計画、建設中の施工段階、計画が失敗に終わり「夢の跡」と化した状況のいずれとも読み取れるような風景が描かれている。鉄格子をモチーフとする「Grille」シリーズは、ビデオカメラのレンズを通したイメージを用いることで、通常であれば静止し揺るぎない鉄格子に動的な息吹が吹き込まれ、従来の作品とは異なる様相を呈する。また、牧歌的な熱帯の風景を描いた「Speech Bubble」には、ジャマイカの強い陽射しを避けるようにして、ハマベブドウの木陰に身を寄せる人物の姿が描かれ、物語や対話の始まりを促す役割を担っているようにも見える。絵画制作を通じて、アンダーソンはカリブ海文化の内奥にあるもの、神話的なもの、あるいはディアスポラの多くが胸に抱く「故郷」への憧憬を見つめている。

 


Hurvin Anderson Camera Shake (2019) Courtesy the artist and Thomas Dane Gallery


Hurvin Anderson Untitled (2019) Courtesy the artist and Thomas Dane Gallery

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