バウハウスへの応答 @ 京都国立近代美術館


ライオネル・ファイニンガー「バウハウス宣言」表紙、1919年、大阪新美術館建設準備室

 

バウハウスへの応答
2018年8月4日(土)-10月8日(月・祝)
京都国立近代美術館
http://www.momak.go.jp/
開館時間:9:30-17:00(金、土は21:00まで)入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、9/17、9/24、10/8は開館)、9/18、9/25

 

京都国立近代美術館では、創設100周年を来年に控える総合芸術学校バウハウスの教育理念とカリキュラムが、歴史・文化背景の異なる日本とインドでどのように受容され展開したのかに注目した企画展『バウハウスへの応答』を開催する。なお、本展は創設100周年記念事業「Bauhaus 100」の主要プログラムのひとつである国際プロジェクト「bauhaus imajinista」に含まれる、日本で唯一の展覧会となる。

第一次世界大戦敗戦直後の1919年、バウハウスはドイツ東部のヴァイマールに開校する。創設者のヴァルター・グロピウスは、絵画・彫刻からデザインさらには建築にいたる造形活動を、手仕事の実践を重視しつつ、包括的に教えるという目的の下、美術・デザイン教育の刷新だけでなく、社会そのものの刷新を目指した「バウハウス宣言」を表明する。ナチス政権下で閉校を余儀なくされる1933年までのわずか10年あまりの活動にもかかわらず、バウハウスの教育理念やそれを実現に導く教育プログラムは、さまざまな媒体を通して、ドイツ国内のみならず、世界各地へと拡がっていった。

本展では、「バウハウス宣言」の世界的な受容と展開を、特に日本とインドでの事例に焦点を当てて紹介し、美術教育における理念と実践そしてその社会との繋がりの重要性や、グローバル化と地域のコンテクストの関わりやその交流など、今日の私たちを取り巻くさまざまな問題を考えるきっかけを提供する。

本展導入部では、主にバウハウスの教育プログラム、特にその中心をなす工房教育と予備教育について紹介。授業の時間割表や、工房の記録写真、『バウハウス叢書(Bauhaus Bücher)』に著された教育内容のほか、ヨハネス・イッテン、モホイ=ナジ・ラースロー、ヨーゼフ・アルバース、パウル・クレー、ヴァシリー・カンディンスキーの授業で制作された数多くの学生の作品を紹介する。なかでも、水谷武彦の「素材研究-三つの部分からなる彫刻(アルバースの予備課程)」は日本でのバウハウスの受容と展開について考える上で不可欠な作品といえる。

 


作者不詳「バランスの習作(モホイ=ナジの予備課程)」1924-25年(再製作:1995年)ミサワバウハウスコレクション

 

2番目のセクションでは、1920年代初めに日本人として初めてバウハウスを訪問した仲田定之助や、その後実際にバウハウスで学んだ水谷、山脇巌・道子夫妻、大野玉枝とともに、上述した人々に影響を受けつつ、生活構成研究所(後に新建築工芸学院へと発展)を主宰した川喜田煉七郎の活動を紹介する。また、同セクションでは、スウェーデン・マルメを拠点に活動するルカ・フライが展覧会委嘱作品として、川喜田の生活構成研究所を起点に、日本におけるバウハウスの教育と哲学に対する理解とアプローチについて考察し、制作したインスタレーションも公開する。

そして、最後のセクションではインドにおけるバウハウスの受容と展開を、インドの国民的詩人ラビンドラナート・タゴールが1919年にインド東部の西ベンガル州シャンティニケタンに設立した美術学校カラ・ババナを中心に紹介する。カラ・ババナは、バウハウスの教育を参照項のひとつに、産業化と一線を画し、地域に根ざした田園的近代化の創造を目指して、独自の実験的教育が目指した。このセクションでは、コルカタでの展覧会に関する資料に加え、カラ・ババナのために画家のナンダラル・ボースが作成した教材や学生の作品、スリニケタンにある同校の工房で制作された工芸作品などを紹介する。また、ロンドンを拠点とするオトリス・グループが展覧会委嘱作品として、タゴールの目指した教育のあり方と現在を主題に制作した映像作品も公開する。

本展会期中には、神戸大学教授でbauhaus imaginistaのキュラトリアル・アドバイザーの梅宮弘光とbauhaus imaginistaのキュラトリアル・リサーチャーのヘレナ・チャプコヴァーによるレクチャー&ディスカッション「バウハウスと日本」や、ベンガル地方で工作を通して大地と人間生活の関係を探求する国際建築学校In-Field Studioを主宰する佐藤研吾の講演会「シャンティニケタンから建築とデザインを考え、学び、作る」を開催。また、ゲーテ・インスティトゥート東京でも8月5日にシンポジウム「文化圏を越えた交流-20世紀のインド・日本・ドイツにおける美術・デザイン教育をめぐって」を開催する(8月4日の夕刻より、オトリス・グループの映像作品の公開スクリーニング)。

 


「和歌山市に於ける構成教育講習会」(『建築工芸アイシーオール』1933年3月号より)


クリシュナ・レッディ「無題」1944年、個人蔵(クリシュナ・レッディ、NY)

 

関連企画
レクチャー&ディスカッション「バウハウスと日本」
講師:梅宮弘光(神戸大学教授)
ヘレナ・チャプコヴァー(Curatorial Researcher: Corresponding With/ bauhaus imaginista)
モデレーター:本橋仁(京都国立近代美術館特定研究員)
2018年8月12日(日)14:00-16:00
会場:京都国立近代美術館1階講堂
定員:100名(先着順)、無料
※当日11:00より1階受付にて整理券配布

講演会「シャンティニケタンから建築とデザインを考え、学び、作る」
講師:佐藤研吾(In-Field Studio / 歓藍社)
2018年9月22日(土)17:00-18:30
会場:京都国立近代美術館1階講堂
定員:100名(先着順)、無料
※当日16:00より1階受付にて整理券配布

関連シンポジウム
bauhaus imaginista: Corresponding With
「文化圏を越えた交流-20世紀のインド・日本・ドイツにおける美術・デザイン教育をめぐって」

2018年8月5日(日)9:00-17:30
会場:ゲーテ・インスティトゥート東京・ホール
事前申込制(info-tokyo@goethe.de
プログラム詳細は下記URLを参照。
https://www.goethe.de/ins/jp/ja/sta/tok/ver.cfm?fuseaction=events.detail&event_id=21319102

 


山脇巌「バウハウス・デッサウ」1931年、武蔵野美術大学 美術館・図書館 ©山脇巌・道子資料室

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