第41回京都賞思想・芸術部門を、ローリー・アンダーソンが受賞

ローリー・アンダーソン ©Wolfgang Tillmans

 

2026年6月19日、公益財団法人稲盛財団は、科学や文明の発展、また人類の精神的深化・高揚に著しく貢献した人々を讃える国際賞「京都賞」の受賞者を発表した。思想・芸術部門音楽分野の受賞者に、電子メディアを駆使し、実験的でポップなサウンドと声、身体を融合した独自のマルチメディア・パフォーマンスの表現を確立したローリー・アンダーソンが選出された。

ローリー・アンダーソン(1947年アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ生まれ)は、1970年代、ニューヨークにおける現代美術や現代音楽のシーンとパンク/ニュー・ウェイヴの影響下で、自身のパフォーマンス・アートの表現を開花。80年代には、自らの声を無機質な音声に加工した極めてシンプルなループをバックに歌われる楽曲《オー・スーパーマン》(1981)、8時間近い大作のパフォーマンス作品《ユナイテッド・ステイツ1–4》(1983)などを発表。語る声、身体、電子メディアが一体となって提示されるアンダーソンのパフォーマンスは、メディアや科学技術への批評的表現、電子的に声のピッチを変えて男声に変調するなどの機材操作や中性的なコスチュームによって、既存のジェンダーのあり方を揺るがせる表現を含む。また、自ら考案した楽器や装置の多くは、パフォーマンスにおいて視覚性と聴覚性の関係を刷新する役割を果たしてきた。

2002年にアメリカ航空宇宙局(NASA)で最初のアーティスト・イン・レジデンスに選ばれると、そこからインスピレーションを得て、2004年のパフォーマンス作品《月の終焉》を制作、2019年にはニュー・メディア・クリエイターのホアン・シンチェン[黄心健]とともにヴァーチュアル・リアリティ作品《トゥー・ザ・ムーン》(※国際芸術祭 あいち 2022「STILL ALIVE」にも出品)を発表するなど、最新のメディア表現を用いて旺盛に活動してきた。また、2018年に弦楽四重奏団のクロノス・クァルテットとの共作でハリケーン・サンディでの経験を主題にしたアルバム『Landfall』を、2024年に女性飛行士アメリア・イアハートの最後の飛行を主題にしたアルバム『Amelia』を発表するなど、独特の物語性をもった音楽作品を通じて、世界中のさまざまな人々に大きな刺激を与え続けている。

2022年にプリ・アルスエレクトロニカ(ヴィジョナリー・パイオニア・オブ・メディア・アート部門)、2024年にはグラミー賞の特別功労賞生涯業績賞、アメリカ芸術文学アカデミーの音楽部門でゴールド・メダルを受賞。2026年にはアートバーゼルが主催するアートバーゼルアワード2026の領域横断クリエーター部門のメダリストにも選出され、現在開催中の第61回ヴェネツィア・ビエンナーレ「In Minor Keys」にも参加するなど、幅広い分野にてその功績が表彰されている。

 

ローリー・アンダーソン《Notebook》2026年 展示風景「第61回ヴェネツィア・ビエンナーレ「In Minor Keys」」ヴェネツィア、2026年 Photo: ART iT
ローリー・アンダーソン&黄心健《トゥー・ザ・ムーン》2019年 展示風景「国際芸術祭 あいち 2022「STILL ALIVE」」愛知芸術文化センター、愛知、2022年 Photo: ART iT

 

ローリー・アンダーソンのほか、先端技術部門のエレクトロニクス分野は、次世代太陽光発電技術「ペロブスカイト太陽電池」の創成の業績により桐蔭横浜大学大学院工学研究科特任教授、早稲田大学特命教授で化学者の宮坂力が受賞。基礎科学部門の生物科学(進化・行動・生態・環境)分野は、海洋生態系の炭素循環における「微生物ループ」の役割の解明の業績によりカリフォルニア大学サンディエゴ校スクリップス海洋研究所名誉教授で海洋微生物学者のファルーク・アザムが受賞した。各受賞者にはディプロマと京都賞メダル、賞金1億円が授与される。授賞式は、11月10日に国立京都国際会館で開催。翌11日には同会場で各受賞者による記念講演会が行なわれる。なお、2027年3月にはアメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴ、同年5月にはイギリス、オックスフォードにてシンポジウムや公開講演会なども予定されている。

 

京都賞https://www.kyotoprize.org/
稲盛財団https://www.inamori-f.or.jp/

Advertisement

Copyrighted Image