韓国美術家賞2025

Kim YoungEun

 

2026年1月15日、韓国国立現代美術館(MMCA)は、SBS財団と共催する韓国国内有数の現代美術賞「韓国美術家賞(今年の作家賞)」を、キム・ヨンウンに授賞すると発表した。キム・ヨンウンと共に最終候補に残ったキム・ジピョン、アンメイク・ラボ、イム・ヨンジュの作品を紹介する展覧会「韓国美術家賞2025」は、韓国国立現代美術館 ソウル館にて、2月1日まで開催している。

キム・ヨンウン(1980年生まれ)は、「音や聴取は政治的に構築されたものである」と捉え、ある具体的な歴史とそこに埋め込まれた聴取の示唆的特徴に焦点を当てながら、音を中心とした学際的な実践を展開している。音響民族誌学を基盤とするキムの作品は、さまざまな場所や時間に蓄積された音に注意深く耳を傾け、日常の中で見過ごされがちな風景を新たな観点から再構築する。

弘益大学校、韓国芸術総合学校を経て渡欧したキムは、オランダのハーグ王立音楽院でソノロジーを学び、現在はカリフォルニア大学サンタクルーズ校でフィルム&デジタルメディアの博士課程に在籍している。これまでの主な個展に、第17回ソンウン美術賞受賞記念展「Frames of Sound」(SongEunアートスペース、ソウル、2022)や「Bones of Sound」(ビジター・ウェルカム・センター、ロサンゼルス、2019)など。また、第15回光州ビエンナーレ(2024)をはじめ、数多くのグループ展や映像祭に参加しており、2023年にはイメージフォーラム・フェスティバルの「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」にて、映像作品《明るい音A》(2022)を発表している。

 

Kim YoungEun, Listening Guests (2025) Single-channel video, 4K, color, multi-channel sound, 38 min. Courtesy of the artist. ©︎Kim YoungEun.
Kim YoungEun, To Future Listeners Ⅲ (2025) Single-channel video, HD, color, sound (stereo), 12 min. Courtesy of the artist. ©︎Kim YoungEun.

 

「韓国美術家賞2025」に出品した《Listening Guests》(2025)では、韓国に暮らす旧ソ連出身の朝鮮民族(高麗人)や、ロサンゼルスに暮らす韓国系移民コミュニティへの取材を通じて、ディアスポラの経験と歴史が形づくる聴取の在り方について、《Go Back to Your》(2025)では、韓国系アメリカ人女性の幼少期から現在に至るまでの聴取体験を辿りながら、移民女性がどのように聴取を内面化し、抵抗し、そして、最終的に回復と生存の手段として再構成していくのかについて探究した。また、《To Future Listeners Ⅲ》(2025)では、20世紀初頭にアメリカ合衆国で録音されたアイルランド系移民男性の歌声をアイルランド系移民女性の歌声にデジタル変換することで、主に男性の声と記憶により構成されてきた移民の歴史において見過ごされてきた女性の存在に光を当てている。

キムのプレゼンテーションに対して、審査員のクリッティヤー・カーウィーウォン(ジム・トンプソン・アートセンター アーティスティックディレクター)は「移民のような社会的なテーマと個の経験を結びつける方法がとても印象的」、アン・ソヨン(アトリエ・エルメス アーティスティックディレクター)は「キムはヴィジュアルアートの分野において音を扱った実践に取り組む極めて重要なアーティストであり、音に埋め込まれた社会政治的文脈を見事に捉らえている」と賞賛。ジョーダン・カーター(Dia財団キュレーター)は「コンセプチュアルな要素に富み、視覚的な要素を抑えつつも非常に力強い作品である」と評した。これら3名に加え、キム・ソンヒ(韓国国立現代美術館ディレクター)、キム・ジャンウン(インディペンデントキュレーター)、エミリー・ペシック(オランダ国立芸術アカデミー ディレクター)が本年度の最終審査員を担当した。

韓国美術家賞は、前身の「Artist of the Year(今年の作家賞)」を引き継ぐ形で、韓国現代美術に貢献し新しいヴィジョンや可能性を追求するアーティストを支援する目的で、韓国国立現代美術館とSBS財団が2012年に設立。2023年より、それまで韓国国籍保持者のみに限られていた選考対象を変更し、朝鮮半島にルーツを持つアーティストであれば国籍を問わず対象とする規定を採用している。また、韓国国立現代美術館とSBS財団は、2015年に同賞の歴代最終候補者の国外での制作活動を支援する基金を開設。近年もキム・アヨン、ホン・ヨンイン、パク・ヘス、クォン・ビョンジュンらが展覧会や上演に助成を受けている。

 

韓国美術家賞https://koreaartistprize.org/

韓国美術家賞2025
2025年8月29日(金)- 2026年2月22日(日)
韓国国立現代美術館 ソウル館
http://www.mmca.go.kr/
参加アーティスト:キム・ヨンウン、キム・ジピョン、アンメイク・ラボ、イム・ヨンジュ
キュレーター:ウ・ヒョンジョン(韓国国立現代美術館キュレーター)

 

 


過去5年の受賞者および最終候補(太字はグランプリ)
2024ヤン・ジョンウク、クォン・ハヨン、ユン・ジヨン、ジェーン・ジン・カイゼン
2023クォン・ビョンジュン、ガラ・ポラス・キム、イ・カンスン、チョン・ソジョン
2022|「韓国美術家賞」回顧展のため実施せず
2021チェ・チャンスク、キム・サンジン、バン・ジョンア、オ・ミン
2020イ・スルギ、キム・ミネ、チョン・ユンソク、チョン・ヒスン

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