
2025年6月24日、シャルジャ美術財団は2027年1月に開幕予定のシャルジャ・ビエンナーレ17のキュレーターに、ベルリン芸術大学教授のアンジェラ・ハルチュニアン(Angela Harutyunyan)と、ルアンダを拠点とするインディペンデント・キュレーターで建築家のパウラ・ナシメント(Paula Nascimento)を任命した旨を発表した。
中東最大の国際展「シャルジャ・ビエンナーレ」は、2003年に創造的な実験や協働、社会的影響を生み出すプラットフォームとして設立された。以来、中東地域の文脈に根ざしながら、さまざまな文化の架け橋として、歴史を共有する地域間あるいは国際的な交流を育んできた。国際芸術祭「あいち2025」の芸術監督も務めるシャルジャ美術財団理事長兼ディレクターのフール・アル・カシミは、ハルチュニアンとナシメントに対し、両者が積み重ねてきた個々の実践に形作られた独自の視点を発揮し、両者のキュレーションのビジョンを通して、この時代の新たなリアリティを協働的に探求できる空間として、次のビエンナーレを実現してほしいと期待を寄せる。
ハルチュニアンは「同時代性の下で脈打つ不規則なリズムを可視化するビエンナーレという形式の可能性と限界に対して特別な関心を払ってきました。非資本主義的なモダニティにおける解放のプロジェクトの数々が、朽ち果てつつも死に至ることのないアフターライフにある状態を、美術作品はどのように圧縮し、どのような形に落とし込むことができるのかを考えたい」と抱負を語った。国際展を展覧会制作の形式と型を実験するための重要な舞台であると同時に、さまざまなコミュニティを招き、社会や身体の変容を育む場所と捉らえるナシメントは、「私はアーティストと共に考えることや、作品制作とインフラストラクチャーの結びつきを発展的に考えることに関心があります。また同様に、アートが有する、さまざまな空間や別の世界、関係の形態を想像し、提案する能力について探求しています」と自身の関心を紹介した。


アンジェラ・ハルチュニアン(1982年アルメニア、ギュムリ生まれ)は、ベルリン芸術大学の教授職に就き、現代美術と理論を教えている。Ashot Johannissyan人文科学研究所(エレバン、アルメニア)とベイルート・インスティテュート・オブ・アナリシス・アンド・リサーチの設立メンバー。2009年にマンチェスター大学で博士号を取得し、アメリカン大学カイロ校(2009-2010)やアメリカン大学ベイルート校(2011-2023)で教鞭を執ってきた。これまでに「This is the Time. This is the Record of the Time」(アムステルダム市立美術館、2014/アメリカン大学ベイルート校アートギャラリー、2015 ※ナット・ミュラーとの共同企画)をはじめ数多くの展覧会を企画。共同で創設した『ARTMargins』誌では、ポストソ連期の芸術文化、マルクス主義的美学、歴史的時間性、文化理論に関する記事を発表している。主な著作に『The political aesthetics of the Armenian avant-garde: The journey of the ‘painterly real’ 1987–1994』(マンチェスター大学出版局、2017)。
パウラ・ナシメント(1981年アンゴラ、ルアンダ生まれ)は、ルアンダを拠点に活動するインディペンデント・キュレーター兼建築家。視覚芸術、都市研究、地政学、美術教育が交差する領域に根差した実践に取り組み、アフリカやグローバル・サウスにおける歴史的事象の現代的解釈に焦点を当てながら、領域横断的な活動を展開している。リスボンのHangar Centre of Artistic Researchのキュラトリアル・アドバイザーやグルベンキアン美術館の収蔵委員会のメンバーを務める。これまでに第6回(2019)、第7回(2022)のルブンバシ・ビエンナーレ(コンゴ民主共和国)で、アソシエイト・キュレーターを務めたほか、第17回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展(2021)、アフリカ写真ビエンナーレ「ランコントル・ド・バマコ」(2017)、第21回ミラノ・トリエンナーレ(2016)、エクスペリメンタ・デザイン(リスボン、2015)を含む数多くのプロジェクトや共同キュレーションを手がける。また、初参加となった第13回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展(2012)のアンゴラ館代表となり、翌年の第55回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2013)のアンゴラ館には共同キュレーターとして参加し、金獅子賞を受賞している。
シャルジャ・ビエンナーレ:https://www.sharjahart.org/en/sharjah-biennial/
過去5回のテーマとキュレーター
2025年(第16回)「to carry」
ナターシャ・ギンワラ、アマル・ハラフ、ゼイネップ・オズ、アリア・スワスティカ、ミーガン・タマティ゠クネル
2023年(第15回)「Thinking Historically in the Present」
故オクウィ・エンヴェゾー(フール・アル・カシミが引継)
2019年(第14回)「Leaving the Echo Chamber」
ゾーイ・バット、オマール・コレイフ、クレア・タンコンズ
2017年(第13回)「Tamawuj」
クリスティン・トーメ
2015年(第12回)「The past, the present, the possible」
エゥンジ・ジュ