VOCA展実行委員会は、全国の美術館学芸員、研究者、ジャーナリストなどが推薦した23組(24名)の作品の中から、キュレーターの関岡絵梨花の推薦を受けた熊本県荒尾市在住の宮本華子の《在る家の日常》をグランプリとなるVOCA賞に決定した。
宮本華子は1987年熊本県生まれ。個人的な経験を出発点に、「家族」や「家」、「他者とのつながり」とのコミュニケーションをテーマに制作している。また、故郷の熊本県荒尾でレジデンススペース「motomoto」をひらき、海外アーティストの招聘も行なっている。2010年に女子美術大学絵画学科洋画専攻を卒業し、2012年に女子美術大学大学院修士課程を修了。2016年にベルリンに移住し、7年にわたって日本とドイツを往復しつつ、九州やベルリンを中心に展覧会を重ね、2023年に帰国。近年の主な展覧会に、「アーティスト・インデックス Scene 3」(熊本市現代美術館、2015)、個展「宮本華子 Was ich dir immer schon sagen wollte, aber nur dir nicht sagen kann. 私はあなただけに言えない。」(つなぎ美術館、熊本、2020)、「段々降りてゆく ——九州の地に根を張る7組の表現者」(熊本市現代美術館、2021)、個展「在る家」(大川市立清力美術館、福岡、2024)など。また、「VOCA展2020 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」ではVOCA佳作賞を受賞している。受賞作品の《在る家の日常》は、家をかたどるパネルの中に映像を組み込み、さまざまな日常や家族の様子を映し出す複合的な表現方法が高く評価された。
宮本華子《在る家の日常》
VOCA賞のほか、奨励賞には諫山元貴の《Objects#21》と小林万里子の《The Five Domains》、佳作賞には、鮫島ゆいの《Ritual Room (Pretend to be happy)》と𠮷田芙希子の《Go into the medaillon》が選出された。また、大原美術館が独自に選ぶ大原美術館賞には、髙木優希の《Room》が選ばれた。
VOCA展は1994年の設立以来、平面美術の領域で国際的にも通用するような将来性のある若い作家の支援を目的に毎年開催されている。全国の有識者に40歳以下の作家の推薦を依頼し、その作家が平面作品の新作を出品するという方式をとっており、推薦委員と作家が適切な関係を築けるよう、VOCA展における「ハラスメント防止のためのガイドライン」が2024年5月25日に策定された。
今回の選考委員は、植松由佳(国立国際美術館学芸課長)、丹羽晴美(東京都写真美術館事業企画課長学芸員)、拝戸雅彦(キュレーター)、服部浩之(キュレーター/東京藝術大学大学院准教授、国際芸術センター青森館長)が務めた。
各賞受賞作品を含む23組(24名)の作品は、2025年3月15日より、上野の森美術館で開かれる「VOCA展2025-新しい平面の作家たち-」に出品される。なお、各賞受賞者を含む出品作家と各作家の推薦人などの情報は公式ウェブサイトに掲載されている。
VOCA賞:http://www.ueno-mori.org/exhibitions/main/voca/
VOCA展2025-新しい平面の作家たち-
2025年3月15日(土)-3月30日(土)
上野の森美術館
http://www.ueno-mori.org/
出品作家(50音順)
諫山元貴、稲垣美侑、大野晶、大森記詩、奥誠之、黒坂祐、小林万里子、佐藤香、佐藤壮馬、鮫島ゆい、澤田華、スクリプカリウ落合安奈、髙木優希、長谷川彰宏、Barrack(古畑大気+近藤佳那子)、藤原葵、松本玲子、宮本華子、山形一生、山田彩加、湯浅要、𠮷田勝信、𠮷田芙希子