第59回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館


Dumb Type《TRACE/REACT Ⅱ》2020年「ダムタイプ|アクション+リフレクション」展示風景 2020年、東京都現代美術館
写真:福永一夫

 

2020年3月12日、国際交流基金は国際展事業委員会の選考会議を経て、第59回ヴェネツィア・ビエンナーレの日本館展示の出品作家にダムタイプを選出したと発表した。プロジェクトメンバーは、高谷史郎、坂本龍一、古舘健、濱哲史、白木良、原摩利彦、高谷桜子らで構成される。出品作家の選考にあたり、選考委員会が直接に作家を選定する方法が初めて採用された。

ダムタイプは、1984年に京都市立芸術大学の学生が中心となって結成し、視覚芸術、演劇、ダンス、映像、音楽、デザイン、建築、コンピューター・プログラムなど異なる背景を持つ集団による共同制作の可能性を探る独自の活動を続けてきた。1995年に中心的存在だった古橋悌二がエイズによる感染症のために急逝するまでに発表された《pH》(1990-95)や《S/N》(1994-96)といったパフォーマンスは、ジェンダー、エイズ、セクシュアリティ、人種、情報化社会など、社会・政治的問題に向き合う優れた作品として世界各地で上演され、高い評価を得た。近年は京都市立芸術大学の芸術資源研究センターによる古橋の《LOVERS—永遠の恋人たち》(1994)の修復と保存、活動初期の資料のアーカイブ化や文脈研究も進んでいる。ダムタイプは古橋の死後も共同制作での創作活動を継続し、2018年にポンピドゥー・センター・メッス分館で個展、2019年から2020年にかけて、東京都現代美術館でも個展『ダムタイプ|アクション+リフレクション』が開催された。また、現在開催中のKYOTO STEAM-世界文化交流祭-2020内で新作パフォーマンス《2020》の上演を予定している。

 


Dumb Type《TRACE/REACT Ⅱ》2020年「ダムタイプ|アクション+リフレクション」展示風景 2020年、東京都現代美術館
写真:福永一夫

 

今回の選考では、選考委員会が指名したコミッショナーによる作家の選定や、近年採用されてきた指名コンペという従来の方法ではなく、国際交流基金から委嘱された6人の選考委員が、過去のコミッショナー/キュレーター経験者、歴代の国際展事業委員よりあらかじめノミネートされた複数の作家の推薦リストをもとに選考会議を開催し、議論と投票を重ねて候補作家を絞り込み、選定作家を基金に答申した。選考委員を務めた建畠晢(埼玉県立近代美術館館長・多摩美術大学学長)は、「十分な活動歴があり、海外でも高い評価を受けていると同時に、現在もきわめて先鋭な作品を発表し続けていること、日本館での強力なプレザンスのある展示が期待できることなど」をダムタイプの選定理由として挙げ、「デジタル技術と身体表現とを不可分に結び付けている点で、”ポストヒューマン”に向かう時代を象徴する存在と目されて」おり、「時代に対する批評的な視点を反映させ、これを「アクション」として表現する。最近注目されている「アートコレクテイヴ」の先駆け的な存在であり、メンバーを更新しながら、変化する情報とメデイア環境の中の人間性を探求し続けている。」と評した。建畠のほかには、中井康之(国立国際美術館副館長)、長谷川祐子(東京都現代美術館参事・東京藝術大学大学院教授)、松本透(長野県信濃美術館館長)、南雄介(愛知県美術館館長)、鷲田めるろ(キュレーター)が選考委員を務めた。(日本館出品作家選考について

 

第59回ヴェネツィア・ビエンナーレ 日本館
出品作家:ダムタイプ
プロジェクトメンバー:高谷史郎、坂本龍一、古舘健、濱哲史、白木良、原摩利彦、高谷桜子 ほか
主催/コミッショナー:国際交流基金

第59回ヴェネツィア・ビエンナーレ
2021年5月 – 11月
http://www.labiennale.org/
アーティスティック・ディレクター:チェチリア・アレマーニ

 


 

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