多田美波、光壁《黎明》1970年 帝国ホテル 東京 撮影:作本邦治
多田美波―光、凛と ゆれる
2026年8月29日(土)–12月6日(日)
東京都現代美術館 企画展示室B2F
https://www.mot-art-museum.jp/
開館時間:10:00–18:00(11月の金曜は20:00まで)入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、9/21、10/12、11/23は開館)、9/24、10/13、11/24
展覧会担当:小高日香理(東京都現代美術館学芸員)、田村万里子(東京都現代美術館学芸員)
展覧会URL:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/Tada-Minami/
東京都現代美術館では、戦後日本の造形表現において空間や環境との関係性を志向し、高度経済成長期を背景に普及した工業素材や加工技術を、芸術表現に積極的に取り入れた先駆的存在として知られる多田美波の仕事を総覧する、没後初となる大規模回顧展「多田美波―光、凛と ゆれる」を開催する。
多田美波(1924–2014)は、制作の手跡を感じさせない無機質な表面に、光の反射や透過、屈折、揺らぎといった有機的な要素を取り込み、移ろいゆく周囲の環境や鑑賞者の動きと呼応して表情を変える造形を生み出した。光を単なる効果ではなく造形の中心として据え、美術、プロダクトデザイン、インテリア、建築を横断しながら空間そのものに働きかける実践によって、同時代の潮流のなかでも独自の立ち位置を築いていった。
1924年に台湾の高雄に生まれ、幼少期に京城に移り住んだ多田は、高校在学中に朝鮮美術展覧会へ出品し入賞。1941年に入学した女子美術専門学校(現・女子美術大学)西洋画科を1944年に卒業した。1956年には第41回二科展、1957年には第9回読売アンデパンダン展に油彩画を出品。同年、東京・炭労会館のためにレリーフ《炭鉱》を制作し、立体表現に移っていく。1962年、多田美波研究所を設立し、生涯でおよそ200点の彫刻作品と、500点に及ぶ建築関連作品を手がけた。空に向かってすらりと伸びていくようなステンレスの彫刻や、自然の景観に心地よく馴染むガラスやアクリルの彫刻、あるいは色とりどりの光を内包する「光壁」など、素材・スケールともに多岐にわたる作品群は、美術館という枠にとどまらず、公園、駅、市庁舎、ホテル、劇場など、都市のさまざまな場所に設置されて、長年にわたり人々の生活空間の一部を形作っている。
代表的な彫刻作品に、半円球のアクリルにアルミニウムを蒸着メッキし鏡面のように仕上げた《周波数37306505》(1965、東京都現代美術館蔵)やステンレスの屋外彫刻《キアロスクーロ》(1979、東京国立近代美術館蔵)。建築空間における仕事としては皇居新宮殿の光造形(1968)や約7,600個ものガラスブロックから作られた帝国ホテル 東京に設置された光壁《黎明》(1970)、紫雲をイメージしたリーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクションの照明《瑞雲》(1973)などがあげられる。主な個展に「多田美波展」(三重県立美術館、1991)、「特別展 多田美波 ―光の迷宮―」(渋谷区立松濤美術館、1991)、「開館40周年記念 多田美波展 ―光を集める人―」(彫刻の森美術館、2009)など。主な受賞歴に「第8回日本国際美術展優秀賞」(1965)、「第1回ヘンリー・ムーア大賞」(1979)、「第6回吉田五十八賞」(1981)、「紫綬褒章」(1988)の受章、および「勲四等宝冠章」(1994)の叙勲。
多田美波《炭鉱》1957年 鉄 炭労会館(1990年夕張市 石炭博物館に移設) 撮影:多田美波研究所
多田美波《周波数373055MC》1963年 アルミニウム 多田美波研究所蔵 撮影:野堀成美
昨年から今年にかけて国内の美術館3館を巡回し話題となった「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」においても、その立体表現で独自の立ち位置を示し、同展で学術協力した美術史家の中嶋泉の『増補改訂 アンチ・アクション——日本戦後絵画と女性の画家』(筑摩書房、2025)でも、増補分の1章として取り上げられた多田美波。本展では、多田美波研究所の全面的な協力のもと、立体表現への移行を予兆する絵画作品をはじめ、初期のブロンズ彫刻、アクリルやステンレスによって周囲の環境を映し込む代表的な作品、プリズムのような鮮やかさを放つ陶板の彫刻、照明の仕事に加え、写真やスケッチなどの資料をあわせて展示。さらに、現存しない作品や建築と不可分な照明作品を一部再制作・再構成するなど、約70年にわたるその仕事をあらためて俯瞰する貴重な機会となる。
図録の刊行とともに、研究者や専門家によるトークイベントを実施し、近年あらためて評価が高まりつつある作家について、その創作背景や美術史的意義の多角的な検証が期待される。
多田美波、光造形 1968年 ガラス、金属 皇居・新宮殿、東京 撮影:野堀成美
多田美波、光造形《瑞雲》1973年 クリスタルガラス、ボールチェーン リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション 撮影:作本邦治
多田美波《座標》2009年 ステンレス 多田美波研究所蔵 撮影:末正真礼生
多田美波《瑞光》2013年 陶板 オリーブベイホテル、長崎 撮影:多田美波研究所
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